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グーグルマップを惑わす複雑な線路

47NEWS / 2023年6月16日 11時10分

左手に王子駅を通過する湘南新宿ラインの電車。その右側に東北線の複線、京浜東北線の線路とホームが並ぶ。左奥の緑は飛鳥山公園

 【汐留鉄道倶楽部】グーグルマップやヤフーマップの航空写真で、車両基地や貨物ターミナルを眺めるのは楽しい。こうした施設では単線や複線の本線から複雑な枝分かれを繰り返して10本を超える線路が並ぶこともあり、列車が走るコースを目で追ってしまう。

 先日、東京・上野に近い田端にあるJRの貨物操車場跡の信号場と東北貨物線を行き来するルートをたどっていて、おもしろいものを見つけた。線路が橋から地上へワープしていたのだ。といっても実際の線路がワープするはずはなく、航空写真に道路や鉄道、ビル名などを書き足した説明書きというか補助線のようなラインがジャンプしていた。

 グーグルマップの“異変”は京浜東北線の王子駅とその周辺にあった。実際には同じ線路であるはずの東北線、上野東京ライン、高崎線が別物になっていたのはご愛敬として、大宮方面から来た上野東京ラインが王子駅のホームを貫通し、さらに京浜東北線へ抜けて、隣接する廃線跡の橋から、下を走る東北線の線路に飛び降りて合流した!?


上中里駅の近くで新幹線の高架をくぐって山手貨物線と合流し、王子駅方面へ進む貨物列車

 並走する他の線路も航空写真に照らし合わせると、ミステリアスな世界が広がっていた。人の手で引けばありえないラインだろう。おそらくAIが迷いに迷った末、苦肉の策で創作したのかな。ミスをとやかく言うつもりはない。ここの線路は世界のグーグルマップを惑わすほど複雑なのだ。

 そんな複雑さにロマンを感じ、どうなっているのか見に行った。王子駅は桜で有名な飛鳥山公園に隣接し、都会なのに静かで緑豊かだ。飛鳥山公園と京浜東北線の間に上野東京ライン(東北線)と湘南新宿ライン(東北貨物線)があり、駅を挟んだ反対側には貨物専用だった北王子支線廃線跡と新幹線の高架がある。


田端の信号場で休む電気機関車。左奥に新幹線が小さく見える

 これらの線路は王子駅を上野方面(南方)へ抜けてから立体交差で並びを変え、上野東京ラインだけが左方に分かれて尾久駅へ向かっていく。王子駅の南口改札から数分歩くと、上野東京ラインだけの踏切に出くわした。残りの新幹線、東北貨物線、京浜東北線は仲良く並走したままだ。

 そのまま踏切を渡ってしばらく歩くと、建物の向こうから列車の通過音が聞こえた。この辺りで湘南新宿ラインは東北貨物線から山手貨物線へ枝分かれして、王子駅の隣にある上中里駅の脇を通過し、池袋、新宿方面へ向かう。一方、東北貨物線は上中里駅の手前で新幹線をくぐって田端の信号場へ進む。枝分かれの様子は、上中里駅のホームから遠目にうかがうことができる。


電気機関車の停車位置とは道路を挟んで反対側にたたずむディーゼル機関車

 上中里駅前を通り過ぎ、上野方面へ歩き続けた。いつの間にか線路群の幅が100メートルはあるだろうか、太い川のように幅広くなった。道路から見ると、手前に引き込み線が並び、その向こうに東北貨物線の本線、はるか奥に新幹線の車両基地があった。さすが貨物操車場の跡地だけあって圧巻の広さだ。

 ついに道路沿いから住宅が消え、建物は鉄道や工事関係の事務所ばかりになった。これぞ鉄道の街だ。ちょっと進んだところで、作業用の鉄道車両と電気機関車が休む一角にたどり着いた。しかも、尾久の車両センターにつながる単線の踏切があり、その線路の先にはディーゼル機関車が停車していた。まさに貨物操車場を思わせる景色だ。

 この日はなかなか鉄ちゃんに出会わなかったが、ゴールの踏切付近で電気機関車を猛烈に連写する撮り鉄さんと、遠くの新幹線に手を振る親子連れの姿を見て、「鉄道の聖地」を感じた。

 ☆共同通信・寺尾敦史 このコラムを書き上げた2023年5月末現在、マップの空飛ぶ線路を見ることができました。そのうち修正されるだろうと期待しています。

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