「理性やバランス保ち争い回避を」防衛に矛盾抱える日本は「非常に危険な状態」 日本で育ったロシア人タレントの小原ブラスさん【被爆78年の悲願】
47NEWS / 2023年8月8日 11時0分
5歳の時に来日したロシア人タレントの小原ブラスさん(31)は昨年2月にロシアがウクライナに侵攻した直後から、テレビの情報番組やユーチューブで発信を続けてきた。
ロシアのプーチン大統領が今やっていることには全て反対、ウクライナ侵攻はすぐにやめるべきだ。この世界から争いをなくすために重要なのは、きれいごとではなく、微妙なバランスや理性を保つことだと訴える。(共同通信=益子真之介)
▽毎日死者が出ているのに、風化しようとしている
平和って何だろうかと考えると、いつもどこかで紛争や食料危機があり、世界中が平和だったことは一度もなかった。その中で、これまでにないほど近くに戦争を感じられたというのが今回のウクライナ侵攻だと思う。
自分たちにとっての平和を振りかざすと、戦争に行き着く気がする。平和を追い求めるのではなく、バランスや理性を保ち、争いを起こさないことが何より大切だと思う。
日本でも、ウクライナ情勢が当初は大きく報じられたが、長期化すると当たり前になっていく。毎日死者が出ているのに、みんなが実感を持っていないように感じることがある。終わってもいないことが風化しようとしている状況が悲しいから、僕は発信している。
発信する目的は、どちらかの方向に何かを引っ張りたいとか、自分の意見に共感してほしいという気持ちではない。自分の力で何かを調べて考えたり、どういう意見があるのかを見たりするきっかけにしてもらいたい。
日本でも何か起きれば最初は少ない被害でみんな騒ぐけれど、だんだん騒がなくなり当たり前のように人が死ぬ、地獄のような社会が来るかもしれない。平和ではない社会がある日、突然来るように言う人もいるが、徐々に徐々にむしばまれていくと感じる。
8月2日、ウクライナ南部イズマイルで、ロシア軍の無人機攻撃で破壊された建物(ロイター=共同)
▽近づくリアルな危機感、日本は非常に危険な状態
ウクライナで起きていることを、第2次世界大戦を経験した世代はどう考えているのだろう。過去を知る人が減り、忘れられていくとこんなことが起きるのだと思う。自分も含め人間は愚かだ。
僕が日本に来た頃や20年前、10年前…。その頃と比べるとリアルな戦争、リアルな危機感が近づいている。日本には戦争はしないという憲法がある一方で、防衛を米国に依存する矛盾がある。これまではそれでやってこられたが、平和でない時代に差しかかっている今、どうするのかをみんなで考えていかんとあかんと思います。きれいごとが通用しない世の中で、日本をどう守るか、日本はどうありたいのか。政治にまとまりがなく、防衛費増額を決めながら、具体的な方針を示していない。日本は非常に危険な状態にあると思います。
あってはならないことだが、ウクライナの戦場を見て各国は使える武器、いらない武器を選別している。日本ではそういう報道もほとんどない。このままでは各国がいらないとした武器を日本は買わされるのではないか。増やしている防衛費が本当に日本の防衛のためになるのか、不安だ。政治に対する国民の「監視の目」がゆるい。
小原ブラスさん(株式会社Almost Japanese提供)
▽核兵器は絶対に使わず、均衡を保ちながら減らすのが理想
5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で各国が足並みをそろえたのはすごく良かった。ただ、核兵器を容認したし、今後の戦争についてどうするのかを話し合った。原爆で亡くなった方たちがもしもそれを見ていたらどんな気持ちだったのか。広島ですべきではなかった。
子どもの頃、広島や長崎に何度も行った。核兵器は絶対に使ったらあかん、絶対的な悪だという考えをずっと持っている。全部なくなったらいい。
ただ、実際は核兵器が抑止力とされていて、日本も米国の「核の傘」に守られている。核兵器がなかったらなかったで、隣国からの侵攻におびえ、先制攻撃に踏み切る形で、もっと世界の至る所で戦争が起きているとも思う。それでも核兵器は絶対に使わず、均衡を保ちながら減らすのが理想だ。
メディアを通じてウクライナ侵攻を見ることで、双方の立場の人が、怒りや憎しみを抱く。僕もそうだった。でもそれは自分で体験したものではない。プロパガンダが含まれているかもしれない。恨みが利用されて戦争が起きることもあるだろう。交流サイト(SNS)が全盛の時代だからこそ、理性を保っておきたい。それが平和のためになるのかなと思います。
× ×
こばら・ぶらす 1992年ロシア・ハバロフスク生まれ。5歳の時に母親と来日し、兵庫県姫路市で育つ。
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