元三冠王ブーマー・ウェルズさん、古巣オリックスにエール パワフルな打撃のレジェンド、ライバル落合博満さんと競い合った日々
47NEWS / 2023年8月25日 11時0分
1984年に三冠王に輝くなど、プロ野球阪急(現オリックス)などで活躍したブーマー・ウェルズさん(69)が11年ぶりに来日し、パ・リーグ3連覇を目指す古巣オリックスに「とても良くやっている。リラックスして、このままやってほしい」とエールを送った。身長200センチの巨体から繰り出されるパワフルな打撃が、今なお往時を知るファンの脳裏に焼き付いているレジェンド。時折冗談を交えながらキャリアを振り返り、日本野球への思いを語ってくれた。(共同通信=木村督士、児矢野雄介)
▽駆け出しの捕手だった中嶋監督との思い出
8月3日に京セラドーム大阪でのオリックス―楽天で始球式を務め、久々に日本のファンに元気な姿を披露した。オリックスへのメッセージを求められると、笑顔で拳を挙げて「イエー!サメ!」。「サメ」とは現役時代にともにプレーした中嶋聡監督の愛称だ。風貌がサメに似ているというのが理由だそうで、「上田さん(当時の上田利治監督)も彼をサメと呼んでいた」と懐かしそうに思い出を語った。
中嶋監督が駆け出しの若手捕手だったころ、ピンチで配球に困った時に一塁を守っていたブーマーさんが投げるべき球をジェスチャーで教えてあげたこともあったという。昨季は球団を26年ぶりの日本一に導くなど、立派な監督に育った後輩に「今まで通りにやって、勝ち続けてほしい」と目を細めた。
▽「Why?」じゃなく「ハイ」
自身は1983年から10年間日本でプレーし、通算277本塁打を放った。力強い一発だけでなく、通算3割1分7厘の高打率を残し首位打者も2度獲得している。
選手としての能力の高さに加えて、文化や考え方の違いに柔軟に適応したことが、異国で活躍できた要因だった。日本のコーチの言うことに違和感を抱いても、むやみにぶつかることはしなかった。「『Why(ホワイ=なぜ)?』って言うかわりに、『ハイ』って言うことを覚えたんだ。『Why?Why?』じゃなく『ハイ、ハイ』ってね。一度適応して受け入れると、野球もさらにやりやすくなる」と外国人選手として成功する秘訣を語った。
▽落合さんとのハイレベルな争い
現役時代のブーマーさん=1988年、東京ドーム
来日1年目を終えて米国に戻ると、シーズンオフの間に日本野球への適応を意識して練習を重ねた。その甲斐あって、2年目の84年には打率3割5分5厘、37本塁打、130打点で3部門を制しリーグ優勝に貢献。「外国人選手で史上初の三冠王。とても大きなことだよ」と誇りにしている。
当時パ・リーグで競い合ったのが、ロッテで82、85、86年の3度三冠王に輝いた落合博満さんだ。対戦するときは、球場に着くとグラウンドに出て落合さんの打撃練習に注目したという。「何か盗めるものはないかと見ていた。彼の打つ時の柔らかい手の使い方が好きだった」と、ライバルの技術の高さを認めていた。
ブーマーさんのライバルだったロッテ時代の落合さん=1985年
落合さんが3度目の三冠王に輝いた86年は、ブーマーさんも打率3割5分、42本塁打、103打点とどちらが三冠王でもおかしくない好成績だった。「落合さんが唯一、追い付かれるのではないかと恐れたのが自分だと思う。常に自分に注目していた」と語るように、高いレベルでしのぎを削った。「互いに尊敬していた。いいライバル関係だった」と実感を込めながら振り返った。
▽当時もレベルが高かった日本球界
日本球界のレベルの高さにも言及した。95年に野茂英雄さんが米大リーグ、ドジャースへ移籍して以降、多くの日本人選手が海を渡って活躍している。今季も2桁勝利と2桁本塁打を達成し、いまや大リーグの顔となった大谷翔平選手(エンゼルス)には、「間違いなくMVP(最優秀選手)」と惜しみない賛辞を贈る。
一方で、日本人選手が米国でプレーするようになる前から日本のプロ野球が高い水準にあったことも強調した。黄金時代の西武で主軸を務めていた秋山幸二さんと清原和博さんや、オリックスでチームメートだった門田博光さん、日本を代表する投手だった元巨人の江川卓さんらの名を挙げ「十分米国でやれた」と述懐した。
インタビューに答えるブーマーさん=8月、東京
その日本で長く活躍したことには、強い自負がある。豪快な打撃のイメージが強いが、「自分はただ打つだけじゃない。走塁も守備もよかった」と打撃以外にもこだわりがあった。指名打者での出場はわずかで、ほとんどの試合で一塁を守った。小さい頃に父から「毎日打つことはできない。打てなくても、別の方法でチームの勝利に貢献できる方法を考えなさい」と言われたという。その教えを大切に守り続けた。
1995年に阪神・淡路大震災で被災した神戸市を訪れるなど、引退後も日本とのつながりを大切にしてきた。今回は日本プロ野球外国人OB選手会のイベントなどで来日。「ここに戻ってくることができてうれしい。ずっと大好きだ」と言う思い出の地で、行く先々で歓迎を受け久々の交流を楽しんだ。
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