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予想外に“復活”した列車2選

47NEWS / 2023年9月8日 11時10分

両毛線を快走する185系の特急「あしかが大藤まつり号」は「臨時特急」幕が誇らしげに見える=栃木県栃木市

 【汐留鉄道倶楽部】2023年春のダイヤ改正をきっかけに“復活”した列車がある。ダイヤ改正といえば、新幹線の延伸や大都市の新線開業などの明るい話題と、ローカル線の廃止やベテラン車両の引退のような残念なニュースが定番であり、復活劇は珍しい。

 鉄道ファンを歓喜させたのは、国鉄185系による特急列車だ。185系は国鉄が最後に製造した特急形電車で、主に東海道、東北、高崎、上越線の特急列車で活躍した。最後まで残った定期特急は、東京と静岡の観光地、伊豆を結ぶ「踊り子」だったが、2021年3月のダイヤ改正をもって撤退した。

 これによって185系の定期運用は終わり、その後は主に団体列車、たまに臨時の快速列車として、不定期に運行されてきた。「もしかして多客期に臨時の『踊り子』として走る日が来るのではないか」というファンの願望は実現することはなかったし、別の特急として運行されることもなかった。

 それから約2年が経過した。2023年3月25日、大宮から宇都宮までノンストップの特急「とちぎ1号」が東北線を走った。特別なヘッドマークを付けた観光キャンペーンの臨時列車とはいえ、正真正銘の185系の特急だ。指定券の売れ行きは上々だったらしいし、あいにくの雨にもかかわらず、東北線の駅や沿線には多くの撮り鉄が詰めかけたという。

 うれしいことに「とちぎ1号」は185系特急復活の序章にすぎなかった。栃木県足利市の「あしかがフラワーパーク」の藤の花が見頃となる4月下旬から5月上旬にかけて、東海道線の大船と両毛線の桐生を往復する特急「あしかが大藤まつり号」が185系で運行されたのだ。それまで快速や別形式での特急だった列車に、うれしい番狂わせが起きた。


東海道線の海沿いを走る185系の特急「185(いっぱーご)」の姿は、まるで特急「踊り子」のようだ=神奈川県小田原市

 筆者は「これぞ真打ち登場」と思い、栃木県内の両毛線沿線に繰り出した。大人気の撮影地は混雑すると予想し、ちょっと地味な場所を訪れた。案の定、後から到着した人が「あっちは激混みで入れなかった」と話し、あきらめてこっちに来たと打ち明けた。こちらは通過直前になっても人がまばらでのんびりできた。晴れたり曇ったりの過ごしやすい天気。畑と山々の緑に囲まれて、電車の待ち時間すら気持ちよかった。

 やがて「ガタン、ゴトン」というジョイント音がリズミカルに近づき、力強いモーター音をうならせて「あしかが大藤まつり号」が通過した。絵入りのヘッドマークではないものの、愛称幕には「臨時特急」の文字が堂々と浮かんでいた。待ちに待った特急らしい姿に身震いした。

 後日、上越特急「谷川岳もぐら」と「谷川岳ループ」、伊豆特急「185(いっぱーご)」も「臨時特急」幕で走った。それぞれ、かつての185系特急「谷川」や「踊り子」を思わせるコースを走っているため、本当の「真打ち」はこれらの列車だったといえる。


東武東上線の小川町から武蔵嵐山へ向かって走る8000型の普通列車森林公園行き。シャッター速度100分の1秒で撮れば、LEDの行き先標示板を捉えられるが車体はぶれてしまう=埼玉県嵐山町

 次に挙げるのは、2015年に営業運転を終えた区間の一部で復活を遂げた東武8000型だ。8000型は1963年から1983年まで712両が製造され、数の多さから「私鉄の103系」と呼ばれている。まさに東武の通勤電車の“顔”だったが、次々と後進に道を譲り、東上線では主要区間の池袋-小川町からは撤退して、小川町-寄居だけで走っていた。

 ところが2023年春のダイヤ改正により、池袋方面-小川町を走る10両編成の列車のうち、昼間の多くが途中駅の森林公園までへと運転区間を縮めた。代わりに森林公園-小川町では、4両編成の8000型がワンマンで走るようになった。予想外のできごとだった。

 乗客にとっては「悲しい合理化」かもしれないが、路線を維持するための苦肉の策なのだろう。副産物として、昼間の8000型はほとんどが森林公園-小川町-寄居を走り抜けるため、利用区間によっては乗り換えの手間が省けて便利になった。また、この区間は10両編成だとスカスカで寂しかったが、4両編成ならまんべんなく乗客がいて活気を感じられる。そう思えばプラスの面だって見えてくる。

 乗り鉄にとっては、森林公園-小川町は小川町以北にない高速走行を楽しめる。撮り鉄の視点では、緑に囲まれた直線区間があり、季節感のある写真を狙えるし、すっきりとした編成写真も撮影できる。8000型は一般色のほか、過去の車体色を復活させたリバイバルカラーがあり、被写体として魅力的だ。185系ほどの派手さはない、というか比較にならないほど地味だが、鉄ちゃんが殺到しない“日常鉄”を満喫できてありがたい。

 ☆共同通信・寺尾敦史

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