メタの新型ゴーグル端末「Quest3」発売、部屋に地球外生命体?MRゲームを体験 【速報レビュー】ヒット商品の後継機、アップルと対決へ
47NEWS / 2023年10月3日 10時30分
米メタ(旧フェイスブック)は10月10日、新しいゴーグル型端末「Meta Quest(クエスト)3」を日本など23カ国で発売する。2020年に発売した従来機種のクエスト2は仮想空間「メタバース」ブームに乗ってヒットした。クエスト3はコンピューターが作ったバーチャル世界の仮想現実(VR)に加え、現実の景色とコンピューター生成の映像を組み合わせる複合現実(MR)に対応した。メタが東京都内で開いた体験会に参加し、一足早く試してみた。(共同通信=吉無田修)
▽進化のポイントは?
クエスト3の進化のポイントをまとめた。
・ヘッドセット本体とコントローラーのデザインを刷新。本体はクエスト2より薄く、手で握るコントローラーは小型化した。
・本体の重さは515グラム。クエスト2と重さはほぼ同じだが、頭部にかかる重量バランスを改善し、疲れにくくした。
・MRのゲームなどを楽しめるように、周囲の様子をカラーでリアルタイムに映し出すカメラを搭載。クエスト2も周囲を映し出すカメラはあったが、モノクロ映像だった。
・片目ずつのぞき込む二つのディスプレーは4K映像を超える解像度といい、クエスト2より約30%向上。見える範囲の視野角は水平110度、上下96度と広くなった。
・米クアルコム製の最新チップセット「スナップドラゴンXR2 Gen2」を搭載し、処理能力を高めた。
・価格は7万4800円(128ギガバイト)と9万6800円(512ギガバイト)の2種類。米国ではクエスト3は499・99ドル(約7万4千円)から。3年前の為替水準なら日本での販売価格は5万円台からだったとみられる。
クエスト3のヘッドセットとコントローラー=9月11日、東京都渋谷区
▽AIが部屋の家具や天井を自動認識
体験会でクエスト3を装着すると、ヘッドセットの向こう側の風景がカラーで両眼のディスプレーに映し出された。この「パススルー」機能の映像は、目で見える視覚体験をほぼ再現している。「ほぼ」と書いたのは、少しにじんだ映像だからだ。スマートフォンで写真撮影する際に画面に映し出される鮮明な映像とは違い、パススルーの映像はやや粗く、手首に着けていたアップルウオッチの文字盤は読み取りにくかった。
とはいえ、近くにいる人の表情は分かり、コミュニケーションを取ったり、周囲の様子を確認したりするのに問題はない。メタによると、解像度は、クエスト2の約10倍、上位機種のクエストプロ(15万9500円から)の約3倍と言う。このパススルーの映像を使ってMRを楽しむ。
パススルーの映像と仮想空間の映像を切り替える操作方法はシンプルだ。側頭部のバンドを2回タップするだけ。ただ、感度がイマイチなのか、記者の場合はこの操作でサクサク切り替えられなかった。タップのタイミングといった慣れの問題もあるのかもしれない。
便利に感じたのは「ガーディアン」と呼ぶ安全機能の設定が自動化されたことだ。メタのゴーグル型端末は、使用中に部屋に置いてある家具などにぶつからないように、境界線を設定する。クエスト2ではパススルー映像の中で、行動できる範囲を手元のコントローラーで線を引いて設定していた。クエスト3は、センサーなどを使って人工知能(AI)が障害物のほか、天井などを自動認識する。映像でその様子が表示され、思わず「すごい」とつぶやいてしまった。
クエスト3を体験する記者=9月11日、東京都渋谷区
▽盛り上がるMRのパーティーゲーム
最初にプレーしたのは、MRの体験ソフト「ファースト・インカウンターズ」。部屋に宇宙船のようなものが着陸し、ボール形のかわいらしい宇宙の生物が現れる。コントローラーは銃のような役割で、部屋の天井や壁を撃つと、破壊され、隙間から宇宙空間が見えた。現実世界の部屋が仮想世界と融合していて、不思議な体験だった。
次のゲームは、スマホ向けゲームで知られる「ねこあつめ」のクエスト版。コントローラーで部屋にペットドアを設けると、仮想世界のアニメのねこが現実世界に入ってきた。ねこを持ち上げ、離すと地面に着地した。コントローラーに振動が伝わってきた。
最も楽しかったのは、複数人で遊べるパーティーゲームの「BAM!」だ。現実世界のテーブルの上にコンピューターが生成したゲーム盤が現れた。ルールは一定時間、王冠のようなものを保持すれば勝ち。小型ロボットをコントローラーで操作し、互いに体当たりして邪魔し合う。テレビゲームでも対戦型のソフトはあるが、MRで立体的に表現されたゲームは迫力が異なる。体験会で一緒にプレーした他の3人も夢中でプレーしているように見えた。
▽VR映像は美しく。しかしVR酔いも
VR映像は解像度が向上し、より美しくなった。「レッドマター2」は、月面基地を舞台にしたパズルゲーム。クエスト2とクエスト3のゲーム映像を比べると、違いは一目瞭然。クエスト2の映像がピンボケしていると思えるほど、クエスト3は鮮明に見える。基地の窓ガラスの汚れも表現できていた。クエスト3のゲームは、同じゲームでも映像が鮮明になり、没入感が高まる。記者も月面基地の世界に入り込んだような感覚になって、ワクワクした。
クエスト2(左)とクエスト3(右)のゲーム画像の比較(メタ提供)
一方で、映像の種類によるとみられるが、クルマ酔いに似た「VR酔い」も感じた。記者は当初、レッドマター2を立ってプレーしていたが、そのうち足がフラフラしてきて、椅子に座らせてもらった。ゲーム終了後も気分の悪さがしばらく残った。自分の頭で想像する歩くスピードとゲーム映像の進み方のギャップや、映像の場面転換の仕方などが原因のような気がした。
メタの担当者に体験会で聞いてみると、メタはVR酔いに対する改善に取り組んでいるという。クエスト3では、視覚的に映像をよりクリアにすることや、端末の付け心地の良さを具体例に挙げた。
しかし、記者が体験したようにVR酔いを完全に防げるわけではない。VR酔いは個人差もあるので、特にクルマ酔いに弱い人は、動きの激しいゲームなどは気をつけた方がいいだろう。
▽アップル後継機と対決へ
体験会の会場は、結婚式場としても使われる東京都渋谷区にある施設「TRUNK BY SHOTO GALLERY」。れんがなどが施された内装は「インスタ映え」した。
体験会では冒頭、メタのマーケティング責任者の女性がプレゼーテーションを行った。歴代のクエストシリーズを振り返り、ヘッドセット本体はパソコンやゲーム機といった外部端末と接続しないで使用できるコードレスで、電池は内蔵され、手頃な価格に抑えているという利点をアピールした。
体験会でクエストの性能を説明するメタの担当者ら=9月11日、東京都渋谷区(メタ提供)
メタの説明を聞いて意識させられたのは、来年初頭に米アップルが初めて発売するゴーグル型端末「ビジョンプロ」だ。視線や指の動きで直感的に操作できるという高い評判の一方、電池は外付けで、販売価格は50万円程度(日本円換算)もする。
記者は、アップルが2025年以降に発売するとみられるビジョンプロの廉価版か後継機で、メタのクエストシリーズと競合すると予想している。アップルはこれまで、価格を抑えた高性能の新機種を投入することで、消費者にお得な印象を感じさせて販売を拡大してきた。
ゴーグル型端末市場は新しい市場とはいえ、メタはアップルと比べ一日の長がある。社運をかけて社名まで変えたメタにとっては負けられない戦いになる。
VRやMRは、ゲームに限らず、ビジネスでの利用も始まっている。巨大テック企業による未来を切り開く開発競争を期待したい。
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