阪神優勝、6年ぶり復帰の今岡打撃コーチ「打率低くても得点を」 「アレ」のキーマンに聞く(5)
47NEWS / 2023年9月29日 10時30分
プロ野球阪神の18年ぶりリーグ優勝を振り返るインタビュー連載。最終回は古巣に復帰した今岡真訪打撃コーチ(現役時代の登録名は「今岡誠」)。前回優勝した2005年は岡田彰布監督の下で主力選手としてプレーし打点王を獲得した教え子が、今年は指導者としてチームを支えた。(共同通信=松澤勇人)
―6年ぶりに阪神のコーチに復帰しました。
「ロッテと合わせたらもう(コーチとして)8年目なんですよ。不安は全くなかったですね。(岡田監督に)もう一回優勝監督になってもらいたい、もう一回優勝を味わわせてほしいなと。昨年は1年間評論家をやらせてもらいましたけども、阪神の選手には親近感がずっとある。若いときにいっしょにやっている。4、5年たった彼たちが何を思っていま野球をやっているのか、どう成長したのか興味がありました」
―大山悠輔選手が不動の4番になりました。
「ロッテにいる時に何回か、『苦しんでいます』と周囲から聞いていました。黙々とやるタイプ。いい意味で頑固なので、だから岡田監督も4番にしているんだろうなあって思っています。やろうとしていることを彼はちゃんと持っていて、違う意見がきても『ボクはこう思います』と言える。自分の軸があって、いつも同じルーティンをこなしていると思いますね」
―グラウンドで直接指導する場面はあまりありませんが、どのようなときに選手と話をしていますか。
「基本的に教え魔なんでね。聞いてきたらずっとしゃべってます。僕もすごく教えたいですよ。でもみんな自分の論理を持っているので、全員には当てはまらない。監督が打線としてやってほしいこと、こういうときは強引にとか、こういうときは3球目ぐらいまで待ってくれよということは一緒だと思う。でも、脇を締めなさいとか開けなさいとか、グリップを上にしなさいとか下げなさいとか言い出したら、全員違うので」
春季キャンプで岡田監督(右)と練習を見守る=2月2日、沖縄・宜野座
―四球が大幅に増えました。
「突出した数字がないのに得点がめちゃくちゃ多い。打線で点を取るというのをちゃんとやってくれているんじゃないかなと思いますね。ボール球を振るなというのはスコアラーさんとの共同作業。スコアラーさんが言うことを耳に入れることは大事だけど、ゲームのときにこちらが『何で振るねん。振るなって言うたやろ』というのは邪魔。近本(光司)は強引にいっていいとき、わざとボール球を振る。中野(拓夢)も大山も。途中でフォアボール狙いにいったら選ぶ。そうやってくれたら、ボール球を振らないことを意識していても、打ちにいくときの反応に邪魔にならない。選手だって分かってる」
―自身の現役時代もそうでしたか。
「たとえば『このピッチャーは2ボール1ストライクからはスライダーが8割ですよ』と言われたら、スライダーを狙わなあかんと思うでしょ。でも俺は、じゃあスライダーを見逃せばと思うタイプ。タイミングが合わないなら、打ちにいったらアカンでしょ。ずっとそういうことを考えてた。うちの選手は『何も気にしなくていいよ』って言ったら、振ってタイミング合わせていくタイプが多いと思う。でも『打線としてちゃんとしようぜ』って言ったとき、他のチームよりできているということなんじゃないですかね」
―ワンチャンスで追い付く、勝ち越すのが今季の強さでした。
「打率が低くても得点を挙げていくって、指導者冥利に尽きるからね。ずっと打ってくれるんだったら、(コーチの)仕事がないわけじゃないですか」
9月12日の巨人戦でベンチから戦況を見つめる(右)=甲子園
―オリックスの山本由伸投手やロッテの佐々木朗希投手のような好投手と対戦するとき、どのような考えで臨みますか。
「例えば八回にチャンスがきて、相手にとってもここ一番という場面。よく『いいピッチャーには早く仕掛けろよ』と言うけど、自分の体験からも、『まず投げさす』ですよね。格闘技で言ったら間合いを測るということ。間合いを測ってないのにパンチしたって当たらない。駆け引きを頭に入れているということですよ。相手が『チャンスやからどんどんくるぞ』と思っている中で、『はいどうぞ』って静かに入る。間合いっていうのは抽象的だけど、俺はめっちゃそういうところ見てますね」
―木浪聖也選手、近本選手の得点圏打率が高い。
「僕らが見ていても、打ちそうやもん。間合いが合っているということですよね。僕自身も打点挙げていたときは、だいたい2、3球目だった。初球からじゃほぼ答えが出ない。見逃した球がストライクかボールか、追い込まれたかなんて関係ない。『いいピッチャーやから仕掛けよう』っていったら、多分負ける。空パンチだけ」
―佐々木朗希投手に勝ったロッテ戦では、イニングの合間に円陣を組みました。
「あれは俺なりに『どうにか間合いを取ろう』と。相手に『なんかやってるな』って思わせれば。だから(円陣では)何も言ってないよ。やっただけ」
―2005年は選手として岡田監督の下で優勝しました。監督とコーチとしてはどのような関係ですか。
「コーチの立場で監督とどういう関係やなんて一切気にしたことないけどね。俺らの仕事は選手を見ること。何か聞いてきたら、何て答えてやろうかなと思って、毎日練習と試合を見てるわけなんで。コーチが監督を見るなんて、おかしいでしょ。選手を見るのが仕事なので」
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