阪神の優勝を支えたドラフト戦略、「目玉」でなくても役割・ポジションで上位指名 補強から育成へ、「生え抜き」の成長で目指す常勝チーム
47NEWS / 2023年10月24日 10時30分
プロ野球のドラフト会議が10月26日に開催される。今季18年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした阪神の勝因の一つが、徹底したドラフト戦略と育成の成功だった。優勝を決めた9月14日の巨人戦での先発メンバーは、外国人選手のシェルドン・ノイジー外野手以外は全て自ら指名して育て上げた「生え抜き」の選手。常勝チームを築けるかは、継続的に有望株を獲得できるかに懸かっている。今年のドラフトにも注目だ。(共同通信=原嶋優、浅山慶彦)
▽長期ビジョン描き育成重視
今年と同じように18年ぶりの優勝を成し遂げた2003年は、フリーエージェント(FA)で獲得した金本知憲外野手や、トレードで加入した下柳剛投手らが活躍。その後も大リーグから日本球界に復帰した城島健司捕手や西岡剛内野手、福留孝介外野手を獲得するなど、大型補強を繰り返した。
だが、Aクラス入りの常連にはなったものの、2005年を最後に優勝からは遠ざかった。12球団で最も熱狂的なファンを抱え、在阪メディアも手厳しい。監督など現場は目の前の勝敗にとらわれがちだが、長いペナントレースを制すにはもっと大局的な視野が必要と判断し、育成重視の方針へかじを切った。当時の編成担当者は「親会社の人間で長期的なビジョンを描き(方針が)ぶれないようにした」と振り返る。
9月9日の広島戦で2点適時二塁打を放った近本外野手。2018年のドラフト会議で阪神が獲得した
▽ドラフト戦略の成功
選手の獲得などに関わる嶌村聡球団本部長は「MLB(大リーグ)やFAで補うのは対症療法。センターライン(グラウンドの中心に当たる捕手と二遊間、中堅)、4番打者、先発投手など、チームの中核は日本人選手でと考えた」と、ドラフトでの狙いを話す。
スカウト部門の要職に親会社の阪神電鉄出身者などを配し、ドラフト戦略をコントロール。将来の中軸候補に狙いを定めた2016年は、白鷗大の大山悠輔内野手を1位で単独指名した。2018年のテーマは「センターラインの強化」。重複指名の抽選で藤原恭大外野手(現ロッテ)、辰己涼介外野手(現楽天)を外したが、中堅を守れる選手にこだわり近本光司外野手を獲得した。手薄だった遊撃手もターゲットとし、将来を見据えて宮崎・延岡学園高の小幡竜平内野手を2位で、即戦力として社会人野球のホンダの木浪聖也内野手を3位で指名した。
6月5日のロッテ戦で3ランを放った大山内野手。2016年のドラフト会議で阪神が獲得した
上位を野手で固めるのは異例で反対意見も出たというが、嶌村本部長は「大事なことは何を捨てるか。最後は力業だった」と意向を貫いた。重要なのは、選手のネームバリューにこだわらず、「左投手」「右の大砲」「遊撃手」など、必要性の高いポジションや役割を見定めることだという。主軸候補として大山、俊足の1番打者として近本を獲得したように、選手のタイプを見極め、「ドラフトの目玉」として注目されていなくても、必要と判断すれば1位で獲得してきた。
2019年は岡山・創志学園高の西純矢投手や大阪・履正社高の井上広大外野手ら高校生を中心に指名。中長期的な視点に基づき、勝ち続けられるチームをつくるための選択だった。
▽育成方針の確立
選手の育成については、月に1度の会議で意思統一を図っている。フロント、スカウト、2軍指導者らが、若手選手一人、一人について議論する。投手のフォームを変更させる際には、レーダーを用いて弾道などを精密に測定する機器「トラックマン」を活用して、腕や指の角度まで細かく分析。精神論での指導は徹底して排除し、スタッフ全員で選手の将来像を共有した。
データなどの根拠に基づいた合理的な育成によって、独立リーグ出身の湯浅京己投手や石井大智投手も1軍の戦力へと成長を遂げた。さまざまな取り組みが実を結んでの優勝に、あるスカウトは「急に(チームを)変えることはできない。地道にやるしかない」と万感を込める。
今回のドラフトは大学生の好投手がそろっている。フロントの判断に任せる方針の岡田監督は「どこも上位はピッチャーになるんちゃう」。ドラフト巧者がどのような戦略を描くのか、今年も目が離せない。
4月8日のヤクルト戦で登板した石井投手。独立リーグを経て2020年のドラフト会議で阪神から指名を受けた
外部リンク
- 「どんな障害者でも、とにかく受け入れてしまう」グループホーム大手運営会社 事業拡大を優先、報酬高い重度者に狙い…現場で起きていたことは
- 始まりはストリートビューに映り込んだ除草剤容器 ビッグモーターの「街路樹問題」 木はどうやって枯死させられた?有識者や専門家の答えは
- 「日本人客は『ごめんね』と言いながら変態のような行動を要求する」韓国の性売買当事者が明かした実体験 新宿・歌舞伎町では驚きも 「痛み」を語り社会を変える
- 「4年で40%賃上げを」アメリカの自動車ストライキで労働者が立ち上がる理由 隣の彼女の時給は半額…バイデン、トランプ両氏も現地入り【2023アメリカは今】
- 自らおむつ履き排せつ実験、「おむつを開けずに中が見たい」介護職員の声を実現した臭いセンサー 原点は中学時代の介護経験、提携施設で集めた5千件のデータ
この記事に関連するニュース
-
【阪神】FA大山悠輔の争奪戦を注視する若虎「チャンスが回ってくるかも」
東スポWEB / 2024年11月21日 5時14分
-
【西武】常勝軍団再建へ 中軸は〝助っ人頼み〟も…「高卒」「生え抜き」育成へ原点回帰
東スポWEB / 2024年11月16日 6時14分
-
清原Jr.や151キロ左腕、侍J外野手は指名漏れ 選抜Vの18歳は燕4位…明暗分かれた“2世”
Full-Count / 2024年10月28日 8時10分
-
“神ドラフト”はどこだ…専門家が徹底分析 複数競合を引き当てた逸材の未来
Full-Count / 2024年10月25日 13時58分
-
「ドラフト一番の勝者は楽天」元スカウト・得津高宏氏は巨人&ソフトバンクを「D評価」と診断
東スポWEB / 2024年10月24日 22時21分
ランキング
-
1侍ジャパンは2次ラウンド2連勝、決勝進出の条件は…23日昼の試合結果で決定の可能性も
読売新聞 / 2024年11月23日 0時20分
-
2【侍ジャパン】ベネズエラに逆転勝利で無傷の7連勝&国際大会26連勝 2大会連続決勝に大きく前進 牧が決勝満塁弾など13安打9得点
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月22日 23時2分
-
3「私は重い不安障害とADHDを患っている」 女子フィギュアで輝く裏で…人知れぬ葛藤を抱えて立つリンク
THE ANSWER / 2024年11月23日 8時13分
-
4侍ジャパン・早川 23日の台湾戦先発へ「決勝にいい弾みをつけられるような投球をしたい」
スポニチアネックス / 2024年11月23日 5時1分
-
5ベネズエラ・ロペス監督「夢であり、これぞベネズエラだという試合をやろう!」 日本戦敗戦も前を向く
スポニチアネックス / 2024年11月22日 23時44分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください