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「そらさんぽ」でジオラマ満喫 飯田線見下ろす天龍峡大橋

47NEWS / 2023年11月3日 11時0分

天竜川を渡るJR飯田線の特急「伊那路」

 【汐留鉄道倶楽部】鉄道コラムなのに、今回は高速道路の新名所紹介となることをご容赦願いたい。今年夏、娘夫婦がもうすぐ1歳になる孫娘を連れて、都会から長野県南部の飯田市近郊に移住した。同地はもともと婿さんの出身地で、地元に帰って起業するためだ。引っ越しが落ち着いたところで、さっそくジジとババは中山間の新居を訪問。せっかくだからと翌日、最近とても人気だという絶景ポイントを案内してくれた。 

 それは中央高速から分岐する「三遠南信道(さんえんなんしんどう)」が、天竜川の名勝「天龍峡」を越える「天龍峡大橋」である。長さ280メートル、ワンスパンの鋼製アーチ橋で、高さは80メートルもある。その道路面(橋桁)の下にぶらさがるように眺めの良い観光用の歩道が設けられており、名付けて「そらさんぽ天龍峡」という。


「そらさんぽ」からの眺め。渓谷、鉄道、中央アルプスと、まるでジオラマだ

 近くのパーキングエリアに車を止め、歩いて橋のたもとにたどり着く。桁下の歩道をずんずん歩いていくと、左右の視界が開けていき、眼下にとうとうと流れる天竜川が見えてきた。雨上がりだったためか幾分濁っているように見えた。遠くに目をやれば中央アルプスの峰々が青空に映えている。

 そして、驚いた! JR飯田線の線路と天竜川を渡る鉄橋が、ちょうど斜め下に見えるのだ。この斜め下という角度がなんとも絶妙。鉄道ファンの大好きなジオラマを持ってきてはめ込んだかのような「出来すぎ」の景色だ。


美しいアーチを描く天龍峡大橋。路面の下に歩行者専用の「そらさんぽ」が設置されている

 歩道中央まで来ると、展望台のようなしつらえになっている。親切にも飯田線の時刻表(上りは天竜峡駅、下りは千代駅)が掲示されており、ちょうど20分後に上りの特急「伊那路」が通過することが分かった。これはチャンスだ。カメラの位置をあれこれ試しているうちにギャラリーが増えて10人以上になった。確かに人気スポットなのだ。


風通しのいい「そらさんぽ」。橋が緩くカーブしていることが分かる

 列車はほぼ時刻表通りにやってきた。鉄橋を渡る前にトンネルがあり、そのトンネルを走ってくる音がわずかに聞こえだしたため、慌てずカメラを構えることができた。3両編成の列車はゴーという音を渓谷に響かせ、私たちが立つ「そらさんぽ」の直下を通過、天竜川に沿って少し走った後、再びトンネルに入って姿を消した。


「そらさんぽ」の展望スペースに掲示された飯田線の時刻表。気が利いている

 川下りの船も定期運航されており、秋の紅葉、冬の雪景色、そして春の新緑と、一年中違ったジオラマを楽しむことができそうだ。

 三遠南信道の三は三河(愛知)、遠は遠江(静岡)、南信は南信濃(長野)で、その名の通り3県を連絡する約100キロの計画だ。しかし沿線は南アルプスなど険しい山と谷、地質も複雑なため、建設はなかなか進捗していないのが現状だ。天龍峡大橋は2019年秋に開通した。


天龍峡大橋周辺マップ

 飯田線は駅数が多く、とにかく時間がかかることで有名だ。数々の秘境駅、それも魅力だが、生活の交通手段としての力不足は否めない。いま建設中のリニア中央新幹線は飯田市内に設ける「長野県駅」で飯田線に接続する予定だ。リニアの開通時期は見通せないが、飯田線もその時には少しグレードアップするのではないか。中央高速での通いがしばらくは続きそうだ。

 ☆共同通信・篠原啓一

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