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45人死傷の相模原事件、植松聖死刑囚が拘置所のチェックをくぐり抜けた作品とは

47NEWS / 2023年11月2日 16時0分

植松聖死刑囚の作品「死刑執行」

 死刑が確定した元被告(死刑確定者)と、死刑判決を受けた後も裁判を求めている被告の絵画などを展示する「死刑囚表現展 2023」が11月3~5日、東京都中央区の松本治一郎記念会館で開かれる。死刑囚の心の内やどのような人間かをうかがい知る機会となりそうだ。2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が死傷した事件の植松聖死刑囚(33)は、収容先の東京拘置所から、自作の絵やイラストを所外に出すことを禁止されながらも応募してきたという。どんな作品なのか。(共同通信編集委員=竹田昌弘)


「相模原事件」

 ▽相模原事件の絵でもめ、色紙に文字
 表現展の事務局によると、2005年から始まったこの展示会は今回で19回目となる。今回は、死刑確定者ら15人の約280作品を展示する予定。


 植松死刑囚が応募してきたのは、いずれも色紙いっぱいに黒い文字で文章を書き、赤い手形を押したり、着色した図形などを書き込んだりした5作品。それぞれ①「相模原事件」②「即時抗告」③「無理心中」④「大麻取締法」⑤「死刑執行」―というタイトルが付けられている。①は事件に関する感想、②は再審請求を棄却され、即時抗告した事情をそれぞれ記した。③と④に書かれているのは、無理心中と大麻取締法について考察した内容。⑤は「死刑反対者は『殺人だ!』といいますが…」で始まり、私見を述べている。
 関係者によると、植松死刑囚が絵などを所外に出すことを禁じられたのは、相模原事件をテーマに描いた絵を巡り、東京拘置所側ともめたためという。2022年の表現展には、多くの色を使い、頭蓋骨が爆発したような絵などを寄せた。今回はその相模原事件の絵を応募しようとしていたのかもしれない。


溝上(事件当時の旧姓山田)浩二死刑囚の作品「Give a loud cry!~おーい、広志ぃ~! 届けこの声、白壁に……2023年7月7日に『刑事収容施設法141条において準用する法129条一項3号の規程に基づき抹消』と告知され、作品の左側半分をガッツリ抹消されたVer.」

 ▽首に絞縄「死ぬわけにはいかない」
 大阪で2015年に起きた中学1年男女殺害事件の溝上(事件当時の旧姓山田)浩二死刑囚(53)が便せんに描いた作品は、200点を超える。そのうち性別不明の人物が大きく開けた口元で両手を拡声器のように広げている絵は、叫んだ内容が黒塗りされている。
 事務局によると、収容先の大阪拘置所が「刑事施設の規律および秩序を害する結果を生ずるおそれがある」として、黒で塗りつぶした。黒塗りされたのは、溝上死刑囚が山田姓のときに養子縁組し、現在は末期がんで入院中の山田(旧姓松井)広志被告(49)へのメッセージという。山田被告は2017年に名古屋市で夫婦が殺害された強盗殺人事件の差し戻し審で死刑を言い渡され、控訴している。


井上孝紘死刑囚の作品「“鳥天狗.紅葉散らし.図。(完全オリジナル図)左胸から腕セ部.額彫り.見本形.”」

 溝上死刑囚の作品の中には、死刑執行のときに使われる絞縄を首に巻き付けた人物が描かれた絵もある。人物のそばには「Painful(痛い)」や「I can’t afford to die(死ぬわけにはいかない)」などと書かれている。

 井上孝紘死刑囚(39)が送付してきた、封筒に書かれた絵を同封の指示書通りに、事務局で組み合わせると、入れ墨が彫られた腕ができあがった。井上死刑囚は、2004年に福岡県大牟田市で母子ら4人が殺害された事件で死刑が確定した。


ペンネーム「中田典広」の作品「清水寺」

 ▽執行された元死刑囚の手法に挑戦
 「故加藤智大君(東京・秋葉原無差別殺傷事件で死刑確定、22年7月に死刑執行)が得意としたイラストロジックに挑戦してみました」として、白と黒のマス目で清水寺や厳島神社などを描いたのは、ペンネーム「中田典広」。前回に続き、2度目の応募という。


風間博子死刑囚の作品「命―弐〇弐参の壱」

 1993年の埼玉・愛犬家ら連続殺人事件で死刑が確定し、再審請求を続ける風間博子死刑囚(66)は表現展の常連で、今回は鎖を握りしめる手を描いた絵など4作品を送ってきた。


金川一死刑囚の作品「自画像」

 同様に無実を訴え、再審請求中の金川一死刑囚(73)が寄せた自画像には「73歳のはじめです」「早く春よこい」などと書き込まれている。熊本県免田町(現あさぎり町)で1979年、女性が殺害された事件で逮捕されてから44年間、獄中で過ごしてきた。

 1970~73年に「殺し屋」を雇って4人を殺したとして起訴され、うち3人の殺人罪などを認定されて死刑が確定した藤井(旧姓関口)政安死刑囚(81)の作品は「愛(なんでも溶かす薬)」と題する、ネコが数多く描かれた絵。やはり再審請求中で、獄中生活は金川死刑囚よりも長い。


藤井(旧姓関口)政安死刑囚の作品「愛(なんでも溶かす薬」

 ▽主催は「大道寺幸子・赤堀政夫基金」
 表現展は、死刑廃止運動に取り組んだ大道寺幸子さんが2004年5月に亡くなり、その遺志に従い、残したお金で始まった。大道寺さんは、連続企業爆破事件で死刑が確定し、2017年に病死した将司元死刑囚の母。島田事件で死刑が確定したものの、再審で無罪となった赤堀政夫さんからも14年に資金の提供があり、現在の表現展は「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」の主催となっている。
 「死刑囚表現展 2023」は11月3日14日午後1~7時、4日午前11時~午後5時半、5日午前11時~午後5時。入場無料。4日午後6時からは、表現展の選考委員を務める彫刻家、小田原のどかさんのギャラリ―トークがある。松本治一郎記念会館は、東京都中央区入船1―7―1で、5階の会議室が会場。問い合わせは、共催の「死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90」(電話03―3585―2331、港合同法律事務所)まで。

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