米国では「マックス」が健在 次世代車両には旧「踊り子」風の3本の斜めストライプも
47NEWS / 2023年12月1日 11時0分
【汐留鉄道倶楽部】JR東日本のオール2階建て新幹線「Max(マックス)」は2021年10月に全て引退したが、米国西海岸のオレゴン州ポートランドの都市圏では同じ響きの「MAX(マックス)」と名付けられた“平屋”の電車が大車輪の活躍をしている。環境負荷低減に一役買う公共交通機関が発達した「環境先進都市」のポートランドを象徴する存在で、ひと目見るだけで乗りたくなるスマートな外観だ。23年中の営業運転開始を目指す次世代車両の側面には、JR東日本の東京駅と静岡県・伊豆半島を結ぶ特急「踊り子」の定期運用を21年3月に終えた電車185系のような3本の斜めのストライプが入っている。
▽総延長は宇都宮ライトレールの7倍
MAXは公共交通機関「トライメット」が運行する次世代型路面電車(LRT)の名称で、都市圏を迅速に結ぶ電車なのを示す「Metropolitan Area Express(メトロポリタン・エリア・エクスプレス)」を略している。躍動感のある名前に似つかわしく、LRTだけが走る専用軌道では最高時速90キロ近くで駆ける。
いずれもポートランド中心部と近郊を結ぶ5路線があるMAXの総延長は計100キロ弱と、日本初の全線新設LRTとして宇都宮市と栃木県芳賀町の間で2023年8月に開業した「宇都宮ライトレール」(14・6キロ)の約7倍に達する。
MAXはポートランド中心部にある停留場では環状線になった路面電車、近郊の停留場では幅広いトライメットの路線バスと乗り継げる。自転車の車内への持ち込みも可能だ。
MAXの路線図(太い線)。細い線は路面電車
利便性が高く、使う電気の100%を再生可能エネルギーで賄うなど環境に配慮したMAXは、トライメットが22年実施した調査で支持するとの回答が利用者の86%に上った。ポートランド在住の女性会社員(44歳)は「行きたいところにどこにでも行くことができ、ダイヤもおおむね信頼できるのでとても便利だ」と評価する。
▽初代型車両同士をつながない理由
MAXで営業運転中の電車には五つの形式がある。最初に開業した1986年に導入された初代型車両のタイプ1は旧ボンバルディア・トランスポーテーション(現在のフランスのアルストム)が製造し、1編成は二つの車体で構成されている。
タイプ1は乗降口に2段の階段があるのに対し、残るタイプ2、3、4、5はいずれも車いす利用者がそのまま乗り降りできるバリアフリー対応の超低床車両で「自転車や、ベビーカーを使っている利用者も迅速に乗り降りできる」(トライメット)。これらの四つの形式はドイツのシーメンスが製造し、1編成に三つの車体が連なる。
MAXの初代タイプ1の車両(手前先頭の2両)=10月22日、ポートランド
通常の営業運転では二つの編成を連結するが、タイプ1同士はつながない。なぜなら乗降口にある階段があるタイプ1は車いす利用者らに不都合なため、運転時にはバリアフリーに対応したタイプ2または3と連結して走るのだ。
MAXの先頭部などには3桁の車両番号が記されており、タイプの数字が先頭に付けられている。
MAXタイプ1の車両内部=10月21日、ポートランド近郊
▽試運転中の次世代車両を目撃
ポートランドを訪問した2023年10月、MAXの路線「レッドライン」の終点ポートランド空港停留場の南隣のマウントフッド通り停留場で試運転を進めている次世代車両タイプ6を目撃した。
シーメンスが造った三つの車体が連なる超低床車両で、青色の車体の側面にはオレンジ色の3本の斜めになったストライプが入っている。旧「踊り子」仕様の185系に描かれた3本の斜めストライプの緑色とは色彩が異なるものの、先が決して長くない185系のチャームポイントがまるで太平洋を越えて引き継がれたかのような世代交代劇は感慨深い。
JR東日本の3本の斜めストライプが入った塗装の185系=2019年7月22日、東京都港区
タイプ6(定員168人)は発光ダイオード(LED)を用いた横長の前照灯を備えており、客室の大きな窓から沿線風景を楽しめる。車内の天井部にある案内表示で次の停留場などの情報をタイムリーに伝える。
トライメットのタイラー・グラフ広報責任者は「全部で30編成発注したタイプ6を5路線全てで運用する予定で、代わりにタイプ1を全て引退させる」と説明する。開業当初から活躍してきた形式の車両が消えるのは残念なものの、置き換え完了後にMAXはバリアフリーに対応した超低床車両が100%となる。持ち味の利用しやすさに磨きがかかり、環境先進都市の大動脈としての潜在力がマックス(最大限)まで高まることを期待したい。
JR東日本が運行していた「Max」E1系=2012年1月20日、新潟市
☆共同通信・大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)ワシントン支局次長。自動車社会の米国にいながら車の運転を敬遠し、主に鉄道と路線バスで移動しています。公共交通機関が発達し、「美食の街」としても定評があるポートランドはニューヨークなどとともに米国で最もお気に入りの都市の一つです。
外部リンク
- 「新幹線のお医者さん」のドクターイエロー、現行車両でその活躍にいよいよ幕? 2020年代後半で引退と考える3つの理由「鉄道なにコレ!?」【第52回】
- 子どもの死「3割」は防げた?うつぶせ寝による窒息や水辺の事故、自殺… 死因検証し小さな命を守る制度「チャイルド・デス・レビュー」の現状とは
- 「肉の味を覚えてしまったヒグマ」の脅威 牛66頭を襲ったOSO18は「人間が生み出した」 対策班リーダーが警告、背景にエゾシカ問題
- 入籍していなくても「扶養手当」は出るのに、なぜ同性パートナーはダメ? 判決に専門家の批判が次々、他県ではOKのケースも
- 女子高生殺人の証拠は「脅迫状」、でも逮捕された男性は文字が書けない…犯人と決めつけた捜査は「被差別部落の出身」だからか 無実を約60年訴える「狭山事件」
この記事に関連するニュース
-
上京民が絶句「“短い”10両編成が参りま~す」 なぜ東京じゃ15両もフツーに? 列車の長さ、どう決まるのか
乗りものニュース / 2024年11月23日 15時12分
-
結論「鉄道はムリ」 富士山の登山鉄道構想が“八方塞がり”になったワケ 代替案は“さらにデカい構想”に
乗りものニュース / 2024年11月20日 7時12分
-
通勤形も動態保存の時代に 東急8500系電車
47NEWS / 2024年11月15日 11時0分
-
名古屋の新交通“電車みたいなバス”ついに詳細ルート発表 名駅ー栄むすぶ「SRT」25年度登場
乗りものニュース / 2024年11月7日 7時12分
-
横浜市電の元車掌が語る、びっくりエピソード! 「入ると助役が…」営業所の風呂場は検査場だった!?
オールアバウト / 2024年11月2日 21時15分
ランキング
-
18歳女の子含む6人が重軽傷…朝の高速道路で乗用車3台と軽乗用車2台が絡む事故 伊勢湾岸道下り・湾岸弥富IC付近
東海テレビ / 2024年11月23日 13時59分
-
2遺族「2回死んでほしい」妻と1歳の長女の首をロープで殺害した事件で元看護師の男に『無期懲役』の判決
BSN新潟放送 / 2024年11月23日 7時17分
-
3【ふたご座流星群 まもなく始まる】 観察のポイント&撮影のコツ【スマホで流星を撮るには】
MBC南日本放送 / 2024年11月23日 15時10分
-
4【裁判詳報】不可解な関係 20年にわたり売春の収入を”渡し続けた女”と”受け取り続けた女” 強盗致死事件で共謀はあったのか ”渡し続けた女”が証言
RKB毎日放送 / 2024年11月23日 15時4分
-
5「壊してもらいたい」“心霊スポット”化した廃病院で相次ぐ不法侵入などの迷惑行為 行政や警察が介入できない理由は… 新潟・糸魚川市
BSN新潟放送 / 2024年11月23日 13時44分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください