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サッカーパリ五輪目指すチームの「10番」鈴木唯人がデンマークで考えたこと 「孤独に戦うことにも良さを感じた」

47NEWS / 2023年12月28日 10時0分

調整するサッカーU―22日本代表の鈴木唯人(左)=ブレンビー(共同)

 パリ五輪出場を目指すサッカーのU―22(22歳以下)日本代表で背番号10を担う鈴木唯人が、今季デンマークの強豪ブレンビーに加入した。五輪イヤーを迎える大事なシーズンの新天地に、これまで日本人選手になじみの薄かった国を選んだアタッカーは「ドイツやベルギーに行く人が多い中、孤独に戦うことにも良さを感じた。サッカーにフォーカスできる環境がある」と強い決意を込め、新たな一歩を踏み出している。(共同通信ロンドン支局=田丸英生)

 ▽激動の1年

 今年1月にJ2清水からフランス1部リーグのストラスブールに期限付き移籍し、激動の1年が始まった。シーズン途中に残留争いをするチームに加わるという難しい状況で、4月に待望のデビュー戦でゴールを決めたが3試合に途中出場しただけでシーズンを終えた。公式戦でアピールする機会すらほとんど得られなかったが、チームメートの元日本代表GK川島永嗣から多くのことを学ぶなど自らの成長を実感し「試合には全然出ていなかったが、得るものは多く今後のサッカー人生に間違いなく生きてくる。刺激の毎日で、結果以外で見たらすごく楽しい半年だった」と初の海外挑戦を前向きに受け止めた。


インタビューに答える、サッカーU―22日本代表の鈴木唯人=11月7日、ブレンビー(共同)

 ▽「やっぱりこっちが向いている」

 契約満了で7月に清水に復帰するとJ2で3試合に出場し、翌月にはデンマークのブレンビーへ完全移籍。「フランスに行ってから、やっぱりこっち(欧州)でやることが自分に向いていると思った」という強い海外志向が決め手となり、再び日本を飛び出した。


練習で笑顔を見せる、サッカーU―22日本代表の鈴木唯人(右)=ブレンビー(共同)

 デンマークは欧州連盟(UEFA)が各国クラブの直近5シーズンの成績で算出するランキングで14位。日本人選手が多く在籍するオランダやベルギー、ポルトガルより格下に位置付けられる。ブレンビーはかつてラウドルップ兄弟やGKのP・シュマイケルといった世界的名手を輩出した名門だが、オファーを受けるまでは名前も聞いたことがなかったという。
 3季前のリーグ王者とはいえ、今季は欧州チャンピオンズリーグなどのUEFA大会に出場していない。そんなチームでの再出発にも「抵抗はなかった。フランスも最初は正直どんなリーグか知らずに行ったので、どこを選んでもそれが正解だったと思えるようにすればいいだけ」と覚悟を決めた。


ブレンビーの本拠地スタジアム=11月7日、ブレンビー(共同)

 シーズン前半は先発定着を目指す立場で「今はチームメートの信頼を得る時期」と個を前面に出すプレーよりもチーム戦術に合わせることを重視する段階と捉え、冬季中断までで公式戦3ゴール。「レベルは来てみないと分からなかったが、正直フランスとあまり変わらない。デンマークだからといって、フランスのときより余裕を持ってできているわけでもない」と水準の高さを肌で感じた。コペンハーゲン近郊を本拠地とするブレンビーは、リーグ2連覇中の宿敵コペンハーゲンと並ぶ人気を誇る。ホーム戦は平均2万人を超える観衆が集まり、チームカラーの黄色と青に染まるゴール裏はサポーターの歌声で熱気に包まれる。


ゴール裏スタンドを埋めて応援するブレンビーのサポーター=11月6日、ブレンビー(共同)

 ▽自ら切り開いたキャリア

 小学時代に横浜Mの育成組織に在籍したが、卒業後は公立の神奈川・葉山中でプレー。一度はエリートコースを外れてから高校サッカーの名門である千葉・市船橋高に進み、Jリーグへとはい上がった。その経歴はプロ入り後のキャリアパスにも重なる。「それは間違いない。自分じゃなかったら(デンマークを)選ばなかったと思う」。自ら道を切り拓いてステップアップしてきた経験が今も糧になっている。


調整するサッカーU―22日本代表の鈴木唯人=ブレンビー(共同)

 ▽パリ五輪の大舞台へ

 11月18日に静岡市のIAIスタジアム日本平で行われたU―22アルゼンチン代表との親善試合では2ゴールの活躍で5-2の勝利に貢献し、かつて清水時代に慣れ親しんだピッチで進化した姿を披露した。


11月18日、サッカーU22国際親善試合、日本―アルゼンチンの前半、攻め込む鈴木唯人(右から2人目)=IAIスタジアム日本平

 来年4~5月の五輪アジア最終予選を突破すれば、夏に本大会の舞台が待っている。推進力のあるドリブル、攻守において球際での強さといった持ち味に磨きがかかれば、2021年の東京五輪でメダルに一歩届かなかった日本にとって大きな武器となる。「五輪のことを考えれば考えるほど、結局はクラブでの毎日が大事だという結論に至る」。冬季中断を経て年明けから再始動するシーズン後半に向け、五輪世代のエース候補が地道な努力を重ねてさらなる成長を期す。


練習の見学に訪れたファンにサインする鈴木唯人=11月7日、ブレンビー(共同)

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