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「12年で6兆円投資」アマゾンが日本市場に積極投資する理由とは 干しシイタケは海外販売で売り上げ50倍!「日本の特産品は海外で有望」

47NEWS / 2024年1月16日 10時0分

アマゾンの配送センターの内部=2022年8月、沖縄県豊見城市(提供写真)

 インターネット通販の代名詞として日常生活に浸透した「アマゾン・コム」。スマートフォンで「ポチッ」と商品を注文すれば、国内の多くの消費者が翌日に受け取れる利便性が売りだ。事業者にとっては、言葉や地域に制約されることなく商品を販売できる重要な場になっている。一方で、増え続ける荷物の配達に追われ、心身ともに疲弊するドライバーの存在が社会問題化している。

 2001年からアマゾンジャパン(東京)を率いるジャスパー・チャン社長が共同通信のインタビューに応じた。「2010年から2022年までに総額約6兆円を投資した」と明かしたチャン氏。日本で積極投資を続ける理由を語った。(共同通信=柿元孟)

 ▽翌日配送可能な商品は700万点以上、対象はほぼ全国に拡大


インタビューに応じるアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長=2023年12月、東京都目黒区

 ―アマゾンは近年、国内各地に物流拠点を設けていますが、どのくらい投資しているのですか。
 「アマゾンジャパンが2010年から2022年に国内で投資した総額は計約6兆円です。この投資額は、日本の市場を重視していることの表れです。投資のペースは徐々に上がっています。物流改善の観点でいうと、入荷や在庫管理、出荷までの物流や配送の施設を充実させました。自動化を進め、ロボットも導入して作業効率を改善しました」

 ―投資のペースが上がっているそうですが、具体的には。
 「2022年には約1兆2千億円を投じました。物流拠点、いわゆる倉庫を埼玉、神奈川、兵庫の3県に増やし、約25カ所となりました。このほか、消費者の自宅までの「ラストワンマイル配送」を担う拠点も18カ所新設して、全国で計50カ所となりました。物流拠点を運営する人員を含めたアマゾンの直接雇用者も増え、従業員は計約1万2千人となりました」

 ―投資することで消費者にはどんなメリットがあるのでしょうか。
 「在庫のある商品を幅広い地域で翌日に配送できるようになりました。翌日配送可能な商品は700万点以上になり、北海道を除き、ほぼ全国に対象が拡大しました」


商品棚の下に入り棚を動かすロボット=2022年3月、兵庫県尼崎市(提供写真)

 ▽空気を運ぶのは無駄。梱包材を小さく
 ―物流業界は、トラックドライバーの残業規制強化によって起こる混乱を懸念しています。いわゆる物流の「2024年問題」に対しては、具体的にどのような取り組みを進めていますか。
 「ドライバーが無駄なく配送できるよう工夫しています。例えば、再配達を減らすために荷物を置いて帰る『置き配』を推進しています。自宅に宅配ボックスがなかったり、置き配に不安があったりする人でも安心して受け取れるよう、コンビニやスーパーと隣接する場所などに専用ロッカーの設置を進めており、42都道府県で計約4千台あります」


アマゾンの商品を受け取れるロッカー=2019年9月18日、横浜市(提供写真)

 ―商品の梱包を簡素化していますが、それはどうしてですか。
 「梱包を小さくして一度に配送できる量を増やし、配送を効率化しています。これまでは商品を大きな箱に入れていましたが、空気を運ぶのは無駄だと考え、梱包材を小さくすることで1度の配達でトラックに積める量を増やしました。環境負荷を低減する狙いもあります」

 ―配送効率化にITはどのように活用していますか。
 「お客さまが安心して商品を受け取れる新しい方法の導入と同じくらい、テクノロジー活用も重要です。ドライバーが目的地に迷うことなくスムーズに行くためには、配送で使う地図が正しく表示され、渋滞情報を的確に反映した最短のルートが示されている必要があります。生成人工知能(AI)も含めてテクノロジーを活用します」


荷物を詰め込むドライバー=2022年8月、沖縄県豊見城市(提供写真)

 ▽海外で売れる宮崎の干しシイタケ。中小企業の好循環に
 ―国内のネット通販市場の先行きをどうみていますか?
 「経済産業省の調査では、国内物販のうち電子商取引(EC)の占める割合は2022年で9%と、欧米と比べて5ポイントほど低く、国内市場は成長の余地がまだまだたくさんあります。お客さまが求める配送スピードにまだお応えできていない面もあり、改善に努めます」

 ―アマゾンが取り扱う中小企業の商品が増えています。
 「2022年は約14万の販売事業者がアマゾンジャパンを通じて数億の商品を販売しました。その事業者の多くは中小企業です。中小企業はより良い商品を作ろうと開発に力を入れていますが、販路拡大や自力でECに乗り出す経営資源は限られています。アマゾンにはフルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)という仕組みがあり、企業が商品を物流拠点に納品すれば、アマゾンが受注から梱包、発送、返品対応まで代行するサービスです。中小企業がこの仕組みを使うと、限られた経営資源を商品開発に集中でき、魅力的な新商品を生み出せれば好循環につながります」


在宅・不在に関わらず、指定の場所で商品を受け取る「置き配」サービス=2020年3月、横浜市(提供写真)

 ―中小企業はどのように販路を拡大できますか。
 「アマゾンはグローバルに事業展開しているため、販売網は国内だけでなく、世界中にあります。中小企業がアマゾンの仕組みを使えば、米国や欧州でも簡単に商品を販売できます。言語の問題を気にすることなく、全世界の販路にアクセスできるようになるのです。国境をまたぐ電子商取引は『越境EC』と呼ばれており、これを使えば無限のお客さまに出会うことが可能になります」

 ―海外に販路を拡大した中小企業の具体的な成功事例はありますか。
 「例えば、干しシイタケを販売する宮崎県の杉本商店は、海外に販路を広げたことで売り上げが2016年と比べて約50倍になりました。2022年には国内の中小企業など約4千社がアマゾンを通じて約5500万点の商品を海外に販売し、取扱商品数は前年比で約30%増えました。世界的な健康志向の高まりを背景に、地域特産のシイタケやこうじが好評でした。日本各地の特産品は海外でもとても有望です」

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