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能力生かせる仕事に就けないウクライナ避難民 母国では医師として活躍、免許制度と日本語が壁に【あなたの隣に住む「難民」⑦】

47NEWS / 2024年3月13日 10時30分

オレーシャ・ボイツォワさん一家が暮らす都営住宅で相談に応じる横山由利亜主任主事(左端)。右から2人目がオレーシャさん、右端はアナスタシアさん

 近所にロシアのミサイルが落ちた。地震のように家が揺れる。ウクライナ東部ザポロジエに住んでいたオレーシャ・ボイツォワさん(43)は、夫と娘と共に隣国ポーランドに脱出した。
 「でも、欧州は避難民が多すぎた。日本も受け入れていると知人に聞いて」。2022年7月に来日し、東京都営住宅で暮らす。家賃や光熱費は都が賄い、月約17万円の生活費が政府から支給される。
 「支援にはとても感謝している。ただ、夫は障害があり、私が仕事をしないと生活は厳しい」。子ども向けの英語講師を務めた後、都の職業訓練プログラムに半年間参加し、職を探している。(共同通信編集委員=原真)

 母国では麻酔医として活躍していた。しかし、日本の医師免許がないため、同じ仕事には就けない。せめて医療に関係する職場で働きたいと考えているものの、見通しは立たない。


 「医師や弁護士、教師など、ウクライナ避難民には専門性を持つ人が多いが、国家資格や言語が壁になって、能力を生かせない」。オレーシャさんらを支援する日本YMCA同盟の横山由利亜・主任主事は指摘。政府や自治体の支援が終了した場合、自立できる避難民は1、2割ではないかと懸念する。


 ▽子どもは三つの学校へ
 娘のアナスタシアさん(15)は都立中と日本語学校に通い、ウクライナの中学校の通信教育も受けている。「すごく大変だけど、頑張る。今ウクライナに帰ったら、もっと大変な生活になるから」。大好きなアニメや漫画のフィギュアを並べた部屋で、つぶやいた。
 ロシアとの戦いは終わりが見えない。「終わったとしても、自宅が残っているかも分からない。将来の計画を立てられないのが、一番のストレスだ」とオレーシャさん。
 22年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻すると、日本政府はウクライナ避難民の受け入れを表明した。これまでに2500人以上が来日し、400人余りが帰国するか第三国へ移り、今も約2100人が日本で暮らす。
 政府は、来日する飛行機を手配し、一時滞在施設を提供するなど、自治体や企業とも連携して、他国出身の難民や避難民に比べ格段に手厚い支援を行ってきた。首相の岸田文雄は「国際秩序の根幹を揺るがすロシアの侵略を踏まえた緊急措置で、それ以外の方々への対応とは一概に比較できない」と弁明する。
 23年6月の入管難民法改正で、条約上の難民に該当しない戦争避難民らを、難民に準じて保護する「補完的保護」制度が新設されている。政府はウクライナ避難民を念頭に、同年12月、補完的保護の申請を受け付け始め、オレーシャさんらも申請、24年2月に認定された。難民と同様に、より安定的な「定住者」の在留資格(在留期間5年)が付与され、生活保護の受給も可能になる。
 横山主任理事は「日本でゼロから生活を始めるのだから、どれだけ支援しても、やり過ぎることはない」と言い切る。「ウクライナを前例として、外国から来た人への支援を広げていきたい」

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