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「生理のつらさも更年期の大変さも、もっと大きな声で話そう」切実な問題に応えるフェムテック トイレットペーパー型のナプキン、災害用下着…「女性のモヤモヤを解決したい」

47NEWS / 2024年3月18日 10時0分

東京・六本木で開かれたイベント「Femtech Fes!」に参加するため、海外から来日した起業家ら=2月9日

 例えば初潮を迎えた後、閉経まで訪れる月経。腹痛や頭痛、気分の落ち込みなど、肉体的にも精神的にもしんどい思いをしている女性は多く、日常生活に支障を来すこともあるが、他の人にはなかなか伝えにくい。

 月経のほか、妊娠、出産、更年期など、自身の体と向き合い続ける女性の不安や負担の軽減を目的とした製品やサービス「フェムテック(femtech)」が注目されるようになった。英語の「female(女性)」と「technology(技術)」を組み合わせた造語で、関心の高さを示すように、2月9日~11日に東京・六本木で開かれたイベント「Femtech Fes!」には5千人が訪れた。

 「生理の貧困」といった女性を取り巻く社会的課題の解決のための製品、月経の不快感解消など開発者自らの経験をもとにした製品などが並び、女性たちの日々の切実なニーズに応えようとする選択肢が生まれてきていると感じた。(共同通信=白坂美季)


東京・六本木で開かれたイベント「Femtech Fes!」の会場=2月9日

 ▽「生理の貧困」にトイレットペーパーの発想
 生理用品はトイレットペーパーのようにいつでも手に入られるものでないといけない―。世界的に大きな問題となっている「生理の貧困」(経済的理由で生理用品を購入できない)について書かれたボストン・グローブ紙の記事をきっかけに、トイレットペーパーのようなロール型で、公共施設のトイレの個室などに設置し、利用者が無料で使える生理用品が開発された。

 この製品を展開するアメリカの「Egal」社CEOのペネロペ・フィニーさんは「トイレで用を足すことについてはトイレットペーパーが解決する。では、なぜ女性の生理についても同じように解決できないのでしょうか」と問う。


トイレットペーパー型生理用品を世界に展開している「Egal」のCEOペネロペ・フィニーさん=2月9日、東京・六本木の「Femtech Fes!」会場

 ▽8歳の子が生理用品をいつも用意できるか
 「たとえ生理用品を買うお金があったとしても、外出先で突然始まることもありますし、忘れることもあります」。フィニーさんによると、アメリカでは統計的に初潮を迎える年齢が下がってきており、8歳ごろに初潮が始まることもあるという。「8歳の子どもがいつも生理用品を用意しておくのは無理な話。それをどう解決するか、ということでもあります」

 トイレットペーパー型の生理ナプキンは1ロールで40枚分。学校、大学、スタジアム、銀行、図書館で導入されている。「学校への導入例では1年間に1人の女性生徒に対して5ドルかかる計算。とても良心的だと思います」とフィニーさん。商品はアメリカ、イギリス、カナダに広がっており、南アフリカでも展開予定で「日本でもぜひ広げていけたら」と言う。

 ▽女性が抱えるモヤモヤを解決
 展示された製品を見て、女性ならではの課題に注目しそれを解決しようという多様な視点を感じた。シンプルなデザイン、透けない素材、速乾性などが特徴の災害用下着を日本の企業は開発。身の危険が迫った時にボタンを押すだけですぐに助けを呼ぶことができるスマートブレスレットとアプリをアメリカの企業が展示しており、目を引いた。


「Femtech Fes!」に出展されたスマートブレスレット。身の危険が迫った時にボタンを押すだけですぐに助けを呼ぶことができる=2月9日、東京・六本木

 開発者が自身の悩みから発想した製品もあった。重い生理痛に悩まされ、「月経痛緩和デバイス」の開発を行ったのは日本の医療機器メーカーの女性だ。医師の指導の下で使用する機器で一般販売はしていないが「このデバイスを使うことで、生理休暇がとりづらかったり、鎮痛剤の副作用が気になったりするといった女性の負担感を少しでも軽減できたら、と思っています」。


「Femtech Fes!」で展示された「月経痛緩和デバイス」=2月9日、東京・六本木

 膣(ちつ)内に入れて使う月経カップを初めて利用し、生理中のムレやにおいがなくなって快適に過ごせた経験から、自身も新たな月経カップの開発に取り組んだ女性は、勤めていた会社をやめて起業した。「女性が抱えるモヤモヤを解決していきたい」と意欲的だ。

 ▽体の大切な場所だからこそ話しづらい
 会場では出展者の説明を熱心に聞く来場者の姿が多く見られた。30代の会社員は「生理前や生理中の不調やイライラで仕事にも支障をきたしています。会社に生理休暇があっても、とりづらいんですよね」と吐露する。フェムテックという言葉を雑誌で知り「このイベントをきっかけに、これからも情報収集をして自分に合うものを見つけていけたら」と話した。

 20代の学生は「もともとストレスがかかると不眠気味になるんです。生理のストレスを減らせれば、睡眠も改善できるのではないかと思って来場しました。就活中なので、日中の生理の負担も少しでも減らせたらいいのですが」。

 率直に語ってくれたこの2人に共通したのは「体の悩みについて、友達との間ではなかなか話題にできない」という声だった。実際、デリケートゾーン向けの商品を紹介するある出展者も「数年前に比べたらフェムテックや、商品の認知度は格段に広がりましたが、体の大切な場所のことであるからこそ、まだまだ話しづらい方も多いと感じます」と明かす。

 ▽経済効果を超えた議論を
 このイベントには「フェムテック」という言葉を2015年ごろに発案した「生理周期管理アプリ」開発者でデンマーク出身のイダ・ティンさんが訪れ「フェムテックという言葉が世界中に広がっていることをすごくうれしく思う」と語った。


「フェムテック」という言葉を2015年ごろに発案したイダ・ティンさん。「生理周期管理アプリ」の開発者でもある=2月9日、東京・六本木の「Femtech Fes!」会場

 フェムテックや女性の健康を取り巻く日本の現状はどうか。作家の北原みのりさんは、1996年から女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」を運営し、長年、女性の心身の悩みに耳を傾けている。女性の性や身体について語ることがタブー視されてきた日本で、自分自身の体を最優先に生きてほしいと発信を続けてきた北原さんは「フェムテックという言葉を初めて聞いたとき、私がやってきたことはこれだったんだ」とポジティブな気持ちになったという。

 フェムテックによる経済効果は2025年時点で年間約2兆円とする推計もある。注目されるようになったフェムテックだが、日本では経済的な側面が強調されていると感じる、と北原さん。「性と生殖の権利に関する議論が足りないため、フェムテックという分野が本当に温まっていく土壌がまだ醸成されていないと思います」と話す。


女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」を運営し、長年、女性の心身の悩みに耳を傾けている作家の北原みのりさん(撮影・穐吉洋子さん)

 ▽女性は我慢し続けている
 北原さんによると、台湾では、フェムテックに関わる女性たちの動きが、性教育の在り方にも影響を与え、社会全体のジェンダーに関する考え方の変化を呼び起こしたという。

 「フェムテックの中にはデータで健康管理しようとするサービスも多いですが、だれもがそれを手にできるわけではないと思います」と指摘。生活に困っていたり、障害があったり、より切実にフェムテックを必要としている女性たちの存在を考慮した視点が求められる、と訴える。

 北原さんは「28年間活動してきて変わらないのは、女性はずっと我慢し続けているということ。女性は、生理のつらさも更年期の大変さも、もっと大きな声で話していい。そうした困り事を語り合える場所や機会が必要ではないでしょうか」と呼びかけている。

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