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133連勝中の「驚異の少女」 女子レスリング藤波朱理 その強さの秘密

47NEWS / 2024年3月16日 10時30分

昨年9月の世界選手権で優勝した藤波朱理=ベオグラード(共同)

 レスリング女子53キロ級の20歳、藤波朱理(日体大)は中学時代の2017年から勝ち続けている。昨年9月の世界選手権で早々にパリ五輪代表を決め、現在は連勝を133にまで伸ばした。白星街道で突き進むパリへ「金メダルをつかむ。絶対にかなえたい夢」と気持ちを高める。五輪4連覇、不戦敗を除いて189連勝の記録を持つ伊調馨(ALSOK)の薫陶を受け、大一番に備える。(共同通信=七野嘉昭)


 ▽栄光の歴史、新時代を担い
 五輪のレスリング女子は、藤波が生まれた翌年の2004年アテネ大会から採用された。日本女子は伊調、五輪3連覇の吉田沙保里を軸に栄光の歴史を築き、東京大会まで金メダルを計15個獲得。東京大会は伊調、吉田がいない初の五輪だった。


 パリへも激しい代表争いが繰り広げられ、東京大会からの連続出場は50キロ級金メダルの須崎優衣(キッツ)だけ。藤波は昨年6月の全日本選抜選手権で東京五輪女王の志土地真優(ジェイテクト)に圧勝し、世代交代を果たした。新時代を担い「藤波朱理のスタイルを貫きたい」と堂々と話す。
 伊調は藤波をこう評する。「朱理はまだまだ根を張っている段階。これから伸びてくる。魅せるレスリングができるのでは」
 53キロ級で長身の164センチ。長い手足を生かした闘いは攻守に隙がない。50メートル走は「8秒後半。普通の子より遅い」というほどだが、タックルは遠い間合いから流れるように入る。「瞬発力よりタイミング。0コンマ何秒の単位で考える」


伊調馨(右)と並んで全日本選手権を観戦する藤波朱理=2023年12月、代々木第二体育館

 男子のトップ選手も研究し尽くした伊調の緻密な技術を学び、組み手やタックルは手の指の角度まで意識する。スパーリングでは1本目から胸を借りることも珍しくないという。雑な攻撃は鉄壁の防御に封じられる。ともに汗を流して育てる伊調は「勢いよく向かってくる。こっちはまだ体が温まっていない時もあるのに」と苦笑しながら、情熱を受け止める。
 昨春、伊調が雑談の中で「1試合が6分で終わるのはもったいない。研究して練習しているのだから1時間でも闘いたい」と話しているのを聞き、その貪欲な姿勢に感銘を受けた。強さを追求し、結果以上に内容にこだわる意識も同じだ。
 連勝記録を「過去のもの」と言い切るが「注目されるのは好き。どんどん注目してほしい」とプラスに捉えている。


杭州アジア大会で長い手足を生かしてタックルを決める藤波朱理=2023年10月(共同)

 ▽五輪の魔物
 レスリングではこれまでも連勝記録が注目された。ジュニア時代の記録が中心の藤波とは対照的に、吉田と伊調は世界のトップレベルで無敗を誇り、五輪開催年にはまさかの敗戦を喫し、苦境から巻き返した。
 吉田は08年1月に米国選手に敗れ、119連勝でストップ。得意のタックルを返され、号泣した。大きなショックを乗り越え、北京五輪を圧倒的強さで制した。
 伊調は16年1月、新鋭のモンゴル選手に完敗。不戦敗を除いて03年3月以来の黒星で189連勝で止まった。「成長するきっかけにしたい」と奮起し、リオデジャネイロ五輪で4連覇を達成した。
 伊調も藤波と同じ20歳で最初のアテネ五輪を制し、重圧やけがを乗り越えて白星を積み重ねてきた。藤波は金言を胸に刻んで大舞台に臨む。
 「五輪に魔物はいない。自分で勝手につくり上げるもの。特別な場所だが、マットもシューズも同じ。変わらずに闘う」
 海外では「ワンダーガール(驚異の少女)」と称される。どんな闘いで世界を驚かせるのか。藤波自身が誰よりも心待ちにしている。

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