あなたが住む地域の男女格差 簡単に、しかも詳細に分かります 今年も公開「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」
47NEWS / 2024年4月8日 11時0分
日本の各地域で、男女平等はどれくらい進んでいるのか、あるいはどのくらい遅れているのか。都道府県単位で簡単に見比べられるサイトが、公表された。タイトルは「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」。上智大の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が算出している。
国単位の男女格差を測る“本家”世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数に準じた手法で、政治、行政、教育、経済の4分野ごとに背景や課題を掘り下げている。あなたが住む地域の現状はどうなっているだろうか。(共同通信社会部ジェンダー取材班)
▽政治の1位は東京
指数公表は、今年で3回目。政府統計などから都道府県別、男女別のデータがある計30指標を選んで、統計的に処理されて算出されている。指数は0~1の間で、1に近いほど男女が平等、反対に0に近いほど男女格差が大きい。
まず、「政治」分野の指数は47都道府県の平均値が0・190。単純比較はできないものの昨年の0・161より若干改善している。昨年4月の統一地方選を経て、都道府県議会や市区町村議会などで女性議員が増えたことが大きいと言える。
都道府県議会の男女比は34都道府県で数値が上がり、統一地方選で当選者に占める女性の割合が22・0%と最も高かった香川が特に伸ばした。市区町村議会も37都道府県で上昇した。
抜本的に改革するには、「政治活動と育児」の両立支援が必要。ただ、「1」には遠く及ばない現状を考えれば、議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」についても活発な議論が求められそうだ。
政治分野全体の1位は3年連続で東京だったが、指数は0・352。江東、豊島、北各区長選と東大和市長選で女性が当選し、女性首長が9人に増加している。市区町村長の男女比は昨年の2位から1位に上がった。全体2位は神奈川、3位は千葉、4位は大阪、5位は山形と続いた。
昨年4月の衆参補欠選挙の結果も反映されている。衆院千葉5区と和歌山1区、参院大分選挙区で女性新人が当選し、衆参両院選挙区議員の男女比の指数が上昇した。特に大分は、全体順位でも昨年の44位から26位へと最も伸ばした。日田市で女性市長が誕生したほか、女性ゼロ議会の解消が進んだことも後押しした。
市区町村長が女性ゼロだったのは19県で、昨年より4県減少。歴代知事の在職年数の男女比は、過去に女性知事が在籍したのが7都道府県に限られるため、指標に「0」が並んだ。
▽行政は北陸3県が上位に
「行政」分野で男女格差が最も小さかったのは鳥取だった。3年連続の首位。福井は女性が副知事に就任し、昨年の5位から2位に上昇した。富山、石川を含む北陸3県が10位以内に入った。
鳥取は全10指標のうち「都道府県管理職」「都道府県の選挙管理など行政委員会」「市区町村管理職」の三つが1位となった。残る7指標も10位以内だった。
富山は育児休業について「地道に声をかけ、取りやすい雰囲気を醸成」(担当者)した結果、男性の職員の取得率が17・2%から36・3%に大きく伸びた。順位も14位から8位に上昇した。
石川は「市区町村審議会」などが改善し、15位から9位になった。
上昇幅が最大だったのは長崎。女性が副知事になったほか、男性職員の育休取得率が13・0%から26・0%に倍増し、45位から33位に上がった。
一方で、能登半島地震など自然災害のたびに女性の視点が求められる避難所運営を巡っては、関連する指標は依然低迷している。
避難所運営など地域防災計画を作る「都道府県防災会議」の指標は、47都道府県の指数を単純に平均すると0・294にとどまった。委員に就くのは国の出先機関や警察、消防組織の長らで、男性が多いことが背景にある。
宮城は、防災会議に多様な意見を反映させるため高齢者や障害者の団体に就任を要請。委員60人のうち女性が16人に増えた。福井も女性委員が増え、避難所での子どもに配慮したスペースや性犯罪対策の議論が「活発になった」(担当者)。
「市区町村防災会議」の単純平均は0・128と、さらに低い。
他の指標の単純平均を見ると「都道府県管理職」が0・147、「市区町村管理職」が0・221。男女格差が最小だったのは「都道府県庁の大卒程度採用」で0・673だった。
▽教育は大学進学率、学校管理職が鍵
「教育」分野は校長などの男女比や、男女別の四年制大学進学率によって「教育従事者」と「教育を受ける側」の双方を七つの指標で分析した。
1位は広島。校長の女性比率が小学校で2位、中学校で4位。大学進学率の男女平等度は6位だった。広島県教育委員会は、育児や介護を経験した管理職が研修で体験を話すなどロールモデルを知る機会をつくり、管理職の女性割合を増やそうと試みてきた。担当者は「現場で地道に取り組んだ成果が出ている」と話す。
岩手、富山、長野、島根、山口が前年から10ランク以上アップしたが、三重、和歌山、鳥取は10ランク以上順位を下げた。順位に影響する比重が大きい「大学進学率」が要因で、男女格差の縮小、拡大が結果に反映されたとみられる。
順位が上昇した長野では、県教委が夜間の校内巡回を外部委託するなど長時間労働の是正を進めている。県教委は「働きやすい環境が結果的に女性の活躍にもつながる」と説明する。
大学進学率は、男性で40%を下回る都道府県はなかったが、女性では8県が30%台。女性が男性を上回ったのは前年から2県減って徳島のみとなった。男女ともに進学率が低い県もあり、平均所得や地域の大学整備など地域間格差に注目した教育施策が求められる。
このほか小学校から中学校、高校へと段階が上がるにつれ、校長の女性比率が下がる傾向が全国的にみられた。また全都道府県の教育委員会に女性委員が在籍していた。44都道府県に複数の女性委員がおり、12都県では男性委員数を上回った。
▽経済格差の解消には職場だけでなく家庭でも
「経済」分野では、男女の就業率に注目したい。就業率の男女差が最小なのは沖縄。沖縄は、フルタイムの仕事に従事する男女の賃金格差も小さかった。一方で、共働き家庭の家事・育児などに使用する時間の男女差は大きく開いた。経済格差が少なくても、家庭での役割が固定され女性に負担がのしかかる現状が示されている。
福井と石川では、女性の就業率やフルタイム率は高かったが、フルタイムの賃金格差に開きがあった。福井県立大の塚本利幸教授(社会学)は「中小製造業が多く、3世代近居が主で子育てサポートを受けやすい北陸では、共働き率が高い」と解説。賃金格差の背景には、給与が高い管理職が男性に偏り「女性は仕事と家事育児の多重負担で、キャリアアップにまで力を注げない」との事情があるとした。
漁協役員は、全国で女性が0・5%と少なさが際立つ。水産庁の担当者は「漁業は長期操業や力仕事が多く過酷で、女性がそもそも少ない」と指摘。女性役員が増えれば「新しい視点が出てくるのでは」と話す。
社長の男女比は、全国でほとんど0・1台に。0・2台は茨城、沖縄、東京の3都県のみだった。女性がトップに就任したり、起業したりしやすい土壌づくりが必要だ。
(取材・執筆は田川瑶子、竹生瞳、川南有希、中村岳史、兼次亜衣子が担当しました)
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