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政治資金規正法の改正は問題の本質ではない?「調達格差」が政権交代起きない弊害に 元衆院議員の菅野志桜里弁護士に聞く【裏金国会を問う】

47NEWS / 2024年5月12日 10時30分

4月26日に開かれた衆院政治改革特別委

 

 岸田文雄首相は今国会での政治資金規正法の改正を表明し、議員本人に対する責任を強化する方向で議論が進められている。
 しかし、衆院議員を3期務めた菅野志桜里弁護士は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の本質はそこではないと指摘する。その真意はどこにあるのか―。
 注目すべきは政党交付金導入と引き換えに禁止になったはずの企業・団体献金の扱いだ、と訴える。(共同通信=帯向琢磨)

 ▽秘書が議員をかばえなくなるような制度改革が必要 


インタビューに答える元衆院議員の菅野志桜里弁護士

 ―議員時代、自民党の政治資金パーティーに問題意識はありましたか。
 「販売ノルマがあって大変だという話は聞いたことがありますが、組織的に売り上げをキックバック(還流)しているとは、耳にしたことはありませんでした」


 ―菅野さんは元検事でもあります。今回の捜査をどう見ましたか。
 「政治資金規正法は、処罰対象が会計責任者となっています。安倍派幹部の起訴を期待する向きもあったと思いますが、会計責任者と共謀したとする議員の具体的な証拠がなければ起訴はできないわけですから、限界があったのでしょう。証拠を超えて起訴することの方がむしろ怖いので、規正法の処罰対象に議員を追加するという抜本的な治療が求められます」
 ―「政治とカネ」の問題はたびたび問題になっています。政治資金の透明性をどう確保していくべきでしょうか。
 「永田町には世間の常識とは違う独特の職業倫理観があります。例えば、仕える議員のバッジを守るために、できるだけ議員に責任を負わせないようあえて詳細を報告しない―。こうした文化が秘書に脈々と受け継がれています。だから、政治資金収支報告書の提出時に議員の署名を求めるなど、秘書が議員をかばうことができなくなるような制度改革が必要になります」
 「政党から議員個人に支給される『政策活動費』、旧文通費も議論の的になったので、合わせて透明にしていくべきです。あとは企業・団体からの献金やパーティー券の購入など『自由な調達』はこのままで良いのかということもきちんと考えるべきでしょう」 


国会議事堂

 ▽企業・団体献金の規制が肝、過去に禁止を約束したはずだ


衆院議員時代に予算委で質問する菅野氏=2020年

 ―野党は企業・団体献金の禁止を強く求めています。企業・団体献金は、資本金の額や構成員の数に応じて年間750万~1億円を政党や政治資金団体に献金できるというものですが、どのような弊害があるのでしょうか。
 「応援しようという気持ちから野党にももたらされる個人献金と違い、有利な政策実現のために行われる企業・団体献金は金額が桁違いであるにもかかわらず、与党にしかいきません。現職時代、ある団体のトップから『野党に献金する理由がない』と言われたことがあります」
 「自民党はこの企業・団体献金によって小選挙区ごとに集金システムを構築し、豊富な資金力を基に地元での活動量を増やして、選挙で圧倒的に有利な状況をつくっています。選挙区の真ん中に一つ事務所を置いて、限られた人員で活動する手法ではかないません。自民党にとっては政権を維持する基盤となっており、この『調達格差』とも言える状況が二大政党制が実現しない要因になっていると考えます」
 ―企業・団体献金を規制すべきだ、ということですね。
 「30年前の政治改革の際、自民党は政党交付金を導入する代わりに企業・団体献金を禁止すると国民に約束しました。それなのにそれがほごにされ『二重取り』が続けられています。これを放置していいのか、ここが肝だと思います。政治資金パーティーも企業・団体献金の抜け穴に使われているので、そこはふさいだ方が良いでしょう。野党には引き続きしっかり追及してほしいです」 


家宅捜索を受けた自民党安倍派の事務所が入る建物を出る東京地検特捜部係官=23年12月19日

 ―事件を受けて安倍派などは解散する方向となりましたが、派閥の弊害はどう考えますか。
 「能力ではなく派閥の均衡を重視する人事となることで、大臣ポストが『不適材不適所』だと感じる国民は多かったのではないでしょうか。今回の問題を契機に、人事の差配や若手の教育といった機能を派閥から党にどう再配分していくかも注視していくべきです。野党にしても、政権交代を目指すならば、派閥に代わる党内のガバナンス(組織統治)をどのようにしていくべきか示す必要があると思います」

 かんの・しおり 1974年仙台市生まれ。元検事。2009年から衆院議員を3期務め、民進党で政調会長。
   ×   ×   ×        
 立憲民主党は政治資金パーティーや企業・団体献金の禁止を柱とする政治改革案を公表したが、自民党案はパーティーについて「透明性の在り方」「外国人へのパーティー券販売の在り方」との記述以上に踏み込まず、企業・団体献金に関する言及は全くない。野党からは「抜け道があり過ぎる」「国民にとってゼロ回答」などと批判が出ている。
 一方、自民党案には、政治資金収支報告書の提出時に議員の「確認書」添付を義務付ける制度が盛り込まれた。自民党は、秘書が議員をかばえなくなる仕組みに変わると主張するが、対象は国会議員関係政治団体に限られるため、野党は「連座制もどきだ」などと反発している。

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