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桁違いの有権者!「世界最大の選挙」実施中のインドは日本とどう付き合うのか カレーとヨガだけじゃない、ジョージ駐日大使に聞いた新経済大国の行方

47NEWS / 2024年5月7日 11時0分

満開の桜の下で笑顔を見せるジョージ大使=4月4日、東京都内(小島健一郎撮影)

 人口が14億人を超え、中国を抜いて世界一になったインド。4~6月実施の総選挙は投票日が7回に分けられ、9億7千万人もの有権者が票を投じることから「世界最大の選挙」とも言われる。人口増も追い風となり、モディ政権の2期10年で国内総生産(GDP)の規模は10位から5位に浮上し、4位の日本に迫ってきた。好むと好まざるとにかかわらず、無視できない存在になっていることは間違いない。
 こうした数字のスケールの大きさばかりでなく、カレーにヨガ、映画と、インド発の文化はじわじわと私たちの身の回りに浸透してきている。存在感を増す「新経済大国」は、日本とどのような関係を築いていこうとしているのか。インドのシビ・ジョージ駐日大使に聞いた。(共同通信=岩橋拓郎)

 ▽目標も壮大

 4月4日、共同通信との単独会見の冒頭でジョージ氏が強調したのは、日本とインドの経済協力関係をさらに深めるための野心的な目標だった。
 「今、インドに進出している日系企業は約1500社あります。つまり1500のサクセスストーリーがあるということです。今後数年間で1万5千社に増やしたいと思っています」
 そのために、在日インド大使館は昨年、日本の中小企業進出を支援する部署「中小企業促進室」を設けた。相談に応じる体制を整え、インドビジネスに関する規制や市場の情報などを提供する。


インドのマルチ・スズキのマネサール工場に並ぶ車=2019年8月(ロイター=共同)

 インドと聞けば、貧困と混沌、喧騒を想像する人が多いかもしれない。だが、ジョージ氏は「インドのGDP成長率は毎年7%台で、デジタル分野も含めたインフラ整備を進めている。最も急速に成長している国であり、インドは変わったのです」とアピールする。
 自身も積極的に〝セールス〟に動いている。これまでに47都道府県のうち40を訪問し、知事や市長、企業関係者らと意見を交わしてきたという。「あらゆる自治体から企業の代表団がインドを訪問しています。半導体を含めたさまざまな分野で機運をつかむことができるでしょう」と語り、インドは「チャンスの国」だと表現した。
 これまでにも日本との連携は進んでおり、現在建設中のインド西部アーメダバードと商都ムンバイの約500キロを結ぶ高速鉄道には、日本の新幹線技術を導入する。ジョージ氏はこれらの経済協力もてこに、インド独立から100年となる2047年までに「先進国入りする」との目標も打ち上げた。


インタビューに臨むジョージ大使=4月4日、東京都内(小島健一郎撮影)

 ▽世界最大の選択

 インドの経済成長は、2014年に発足したモディ政権が主導してきた。経済政策の柱の一つは、「Make in India(メーク・イン・インディア=インドで物をつくろう)」と呼ばれる。世界中から投資を呼び込み、自国の製造業を振興しようとする政策で、雇用創出や輸出拡大も狙う。4月17日から始まった下院(定数545)総選挙の焦点は、モディ政権2期10年の評価だ。
 選挙管理委員会によると、有権者数は約9億6880万人。全国に105万カ所の投票所を設置し、選挙の運営や警備に従事する人々は1500万人に上る。選挙の管理や治安の維持が難しいため、投票は州や地域別に7回に分けて行い、6月4日に一斉開票される。


 ジョージ氏は「わが国にとって重要なのは、直面する課題に対処することができるように成長を続けることなのです」と指摘し、選挙ではインドが躍進を続けることができるかどうかが争点だとの考えを示した。
 「インドでは毎日、30キロ以上の長さの高速道路が造られています。新しい鉄道も電車も空港も港湾も建設されています。次の10年、この勢いを維持できるかどうかはインドにとって大変重要なことなんです。選挙について言えば、これは10億人にとっての民主主義の祭典です。10億人が政権を選ぶ。これはすごいことですよ」
 インドメディアが投票直前の4月16日に報じた世論調査結果によれば、モディ首相率いるインド人民党(BJP)を中心とした与党連合は、2019年の前回の選挙を上回る393議席を確保しそうな勢い。対抗する国民会議派を中心とした野党連合は100議席に届かず、モディ氏の首相3選が濃厚な情勢になっている。「世界最大の選択」の結果は、1カ月半の長期戦の末に判明する。


インタビューに答えるジョージ大使=4月4日、東京都内(小島健一郎撮影)

 ▽国連にもの申す

 インドは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表を自任している。2023年には新興・途上国の首脳らによる「グローバルサウスの声サミット」をオンラインで開き、モディ首相が「今こそグローバルサウスの国々が世界の利益のために声を一つにする時だ」と呼びかけた。同じ年には20カ国・地域(G20)の議長国も務め、国際社会での発言力は増しつつある。そんなインドが目指しているのが、国連安全保障理事国の常任理事国入りだ。


新幹線車両を製造する川崎重工業兵庫工場を視察した(手前右から)安倍首相とインドのモディ首相=2016年11月、神戸市

 インドは同じ目的を共有する日本やドイツ、ブラジルと4カ国グループ(G4)を形成し、安保理の拡大論議を主導してきた。ジョージ氏に現在の国連の状況について意見を求めると「行き詰まっています。1945年に約50カ国で発足しました。今や世界には200カ国あるのです」と疑義を呈した。
 「私たちは多極的な世界に住んでおり、国連は世界の代表であるべき組織です。機能を果たすためにはいくつかの改革が必要です。簡単な質問をさせてください。アフリカのどの国が安保理の常任理事国に入っていますか。中南米は? 世界最大の民主主義国も、世界最多の人口を有する国も、世界で最も早く成長している国も入っていないのです」


インドのジョージ駐日大使=4月4日、東京都内(小島健一郎撮影)

 こう解説した上で、国連が現状を反映するためには、インドと日本が協働することが重要なのだと主張した。
 インドには伸びしろがある一方で、貧富の格差、雇用不足など課題もある。めまぐるしく変わる世界で、インドという巨像が清濁併せのみながらさらに巨大化していくことは必至だ。世界人口の6人に1人以上がインド人となった今、この新興大国に日本がチャンスを見いだすことができるかどうかは、どう向き合うかによるのだろう。


インタビューに応じるジョージ大使=4月4日、東京都内(小島健一郎撮影)

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