埋め立てられる「リサイクル優等生」、徳島市収集のペットボトル大半が再生せず、その理由は…全国最下位影響か
47NEWS / 2024年6月26日 10時0分
お茶などの清涼飲料の容器として身近なペットボトルは、使用後に再資源化しやすい「リサイクルの優等生」と呼ばれる。近年は環境意識の高まりを受けて再利用が進み、資源価値が上昇、飲料メーカーや自治体を巻き込んだ争奪戦も起きているほどだ。
そんなペットボトルだが、徳島市では家庭から分別収集したもののうち、大半が直接埋め立てに回されていた。リサイクル率は2022年度の推計で25%以下にとどまる。記者は取材で、埋め立てを行う最終処分場に、徳島市から大量のペットボトルが搬入される現場を確認した。
他のごみと交じっていて取り出しにくいから?汚れていてリサイクルに不向きだから?だが、専門家に尋ねると「再生できるものも捨てられているのではないか」と疑問の声が上がる。埋め立てる以外の方法はないのか。(共同通信=米津柊哉)
▽ペットボトルはごみや砂と一緒に袋詰めにされ、埋め立て場所へ
リサイクルするかどうか選別する施設に運ばれたペットボトル、瓶、缶の混合収集物=2024年2月、徳島市
徳島市が回収し、埋め立てのため最終処分場に運ばれたペットボトル=2024年1月、徳島県松茂町
徳島空港近くにある徳島県松茂町の最終処分場。ここには、徳島市が収集し、リサイクルに回すかどうかの選別過程を経た結果、リサイクルできないと判断されたペットボトルが運ばれてくる。
記者が複数回に渡り最終処分場へ取材に訪れたところ、他のごみとともにトラックに積まれて運ばれてきた大量のペットボトルがあった。
残っていたラベルからお茶やコーラが入っていたとみられる、数々の使用済みペットボトル。中身が腐っているように見える汚れたペットボトルがある一方、透明で、素人目できれいだと感じるものも多かった。砂と一緒に袋に詰められた後、トラックに載せられ、埋め立て場所まで運ばれていった。
▽全国では95%のリサイクル率、徳島市は推計25%以下
徳島市のペットボトルリサイクル(2022年度)
徳島市はペットボトルを缶、瓶と一緒の袋で回収する「混合収集」の方式を採用している。2022年度に家庭から収集したペットボトルは、抽出調査による全体に占める割合(26・5%)を基に算出すると917トン程度とみられる。
一方で、リサイクルに回ったのは、家庭以外から出されたペットボトルも含めて216トン。リサイクル率は25%以下となり、残りは埋め立てられている計算になる。
同様の方法によって他の年度を調べても、同じ傾向がみられた。
他の自治体ではどうだろうか。環境省の「市町村の分別収集等の実績」の調査によると、全国の2022年度収集量は約34万8千トン。対するリサイクル向け引き渡し量は、約33万トンで、計算するとリサイクル率は約95%となる。
ただ、この調査で実は徳島市のリサイクル率は100%となっている。混合収集していることで「リサイクルに回らなかったペットボトル」が他のごみと一緒になっていて重さを実測できず、「収集量イコール、リサイクル量」と回答していたためだ。他自治体に取材すると、推計値を回答しているところもあり、まちまちだった。
四国の県庁所在地に個別に尋ねてみると…。
高知、松山両市はペットボトル単独で収集しており、リサイクル率は90%台だった。
高松市は、徳島市と同様の混合収集を行っており、推計で約40%をリサイクルに回しているという。混合収集だとリサイクル率が下がる傾向が見られるが、それでも徳島市に比べれば高い数字だ。また、徳島市と異なり、リサイクルされなかったペットボトルは直接埋め立てるのではなく、燃やして焼却熱を発電などに活用している。
▽1トン8万円、ペットボトルは金になる
ペットボトルの資源価値は上昇している。公益財団法人「日本容器包装リサイクル協会」は自治体からペットボトルなどの分別収集物を引き取り、競争入札によって再資源化業者に回している。
リサイクルのコストが大きいため、業者にお金を支払って引き取ってもらう分別収集物もある中、ペットボトルは基本的に業者がお金を払って引き取っている。
協会によると、平均落札価格は2022年度に1トン当たり8万7210円を記録し、前年度から約6万円跳ね上がった。
売れるのであればなおさら、わざわざ分別収集したペットボトルの大半を埋め立てる理由が気になってくる。
▽徳島市が挙げる課題とは・・・
なぜリサイクルに回るペットボトルが少ないのか。徳島市に取材するとこう回答があった。
徳島市役所
「混合収集をしているため、液体や瓶の破片でペットボトルが汚れてしまう」
市の担当課としては、ペットボトルのリサイクル率の低さというより、リサイクルに回った方のペットボトルの汚さを課題として認識していたようだ。
担当者は、リサイクルに回ったペットボトルの品質を毎年調べる調査で市の成績が芳しくなかったことを引き合いにこう漏らす。
「リサイクルに回ったものですら質が悪い」
外観の汚れや異物の有無などから点数を付ける協会の調査で徳島市は2022年度、100点中60点で全国最下位だった。
では混合収集が問題なのか。他にこの方法を行っている自治体に聞いたところ、札幌市では大部分がリサイクルに回っていたことが分かった(抽出調査による推計)。
札幌市の担当者は処理方法をこう説明してくれた。
「磁石や風を使って選別すると、最後はペットボトルのみが残り、目で見て不適物を取り除いている。(選別の)設備は他自治体と変わらず、特殊なやり方をしているわけではないが市民の方に水ですすいでもらうことは周知している」
混合収集でもリサイクル率の高い自治体は存在するのだ。
そしてリサイクルされなかったとしても、高松市のように燃やして発電などに活用する「熱回収」という方法もある。
徳島市はなぜ熱回収方式もとらず、直接埋め立てているのか。あらためて徳島市に聞いたところ、挙げた理由は「焼却施設の老朽化」だった。今の設備はプラスチックを燃やすことを前提としていない古いもので、ペットボトルに対応できないというのだ。
▽専門家「十分リサイクル可能」
最終処分場に運ばれた徳島市のペットボトルの画像を環境政策に詳しい同志社大学の原田禎夫准教授に確認してもらうと、次の見解があった。
「価格は安くなるが、技術的にはリサイクルできないというレベルの汚れではなく、十分リサイクルできる」
25%は自治体のリサイクル率としては極めて低いと指摘し、「同じ収集日であったとしても、ペットボトルを他と袋を分けて回収するなど改善策を探るべきだ」と提案する。
もっとも、自治体にとって分別収集は負担になるとの見方も示した。最近は自治体と連携した飲料メーカーなどが自らペットボトルを回収し、リサイクルにつなげている事例もある。原田准教授は「洗浄などの費用や手間は本来、市民や自治体ではなく、飲料メーカーなどの事業者が負担すべきもの。生産者が廃棄まで責任を持つ必要性を訴えていくことが重要だ」と指摘している。
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