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西武特急ラビュー5年、新旧車両を乗り比べた「大違い」は?

47NEWS / 2024年6月28日 11時0分

特急「ちちぶ」で走る「ラビュー」001系と、撮影する人たち=6月1日、埼玉県日高市

 【汐留鉄道倶楽部】駐在していたアメリカから帰国して「是非乗ってみたい」と思っていたのが、今年3月で営業運転開始5年を迎えた西武鉄道の特急用車両「ラビュー」001系だ。先頭部が球面状になった金属調の塗装で、客室に縦1.35メートル、横1.58メートルの大きな窓ガラスが並んだ外観は革新的だ。

 池袋線・西武秩父線の全ての特急に運用されているラビューと、両線からは引退して新宿線に残る前世代の「ニューレッドアロー(NRA)」10000系の新旧特急用車両を乗り比べると、外観にとどまらない「大違い」の点があった。
 6月1日、池袋線の池袋駅(東京)から西武秩父(埼玉県秩父市)行き特急「ちちぶ」に乗り込んだ際、一風変わった行き先の特急券を持っていた。通常ならば止まらない「高麗(こま)」(埼玉県日高市)だ。


 この日は西武の車両を検査・修繕している武蔵丘車両研修場(日高市)が公開され、最寄り駅の高麗に一部の「ちちぶ」が臨時停車した。池袋からの特急料金は大人600円と、特急では1駅手前の飯能(埼玉県飯能市)と同じだった。


ラビュー001系の車内=6月1日、埼玉県秩父市

 車内には、丸みのある黄色い生地が基調のクロスシート座席が通路を挟んで左右2列ずつ並んでいる。西武の通勤用電車はかつて黄色の塗装が主流で、デザインを監修した建築家の妹島和世さんが「西武線と言えばこの色」と採用した。
 予約した窓際の座席に腰かけて驚いたのは、茶色の座面がソファのように沈み込むことだ。可動式のヘッドレストを頭部のちょうど良い位置に動かすことができ、体を包み込むような快適な座り心地だった。


「ニューレッドアロー(NRA)」10000系の車内=5月19日、東京都新宿区

 大違いだったのは、5月に親族の墓参りの帰りに所沢(埼玉県所沢市)から西武新宿(東京)まで乗った新宿線特急「小江戸」のNRAの座席だ。紺色の生地の座席は見た目より堅く感じられ、頭部も白いヘッドカバーの生地を取り付けているだけだった。
 車内で放送される自動アナウンスも異なる。ラビューは始発の池袋駅でチャイムが流れ、「本日も西武鉄道をご利用いただきまして、ありがとうございます」の声が響く。NRAは違う音色のチャイムで、社名は読み上げない。ラビューは西武が「フラッグシップトレイン(旗艦列車)」と位置付けているため、「西武鉄道」の社名を強調したいのかもしれない。


ラビューの車内自動アナウンスを担当する久野知美さん(左)。右はJR西日本の「ウエストエクスプレス銀河」などをデザインした川西康之さん=6月4日、神奈川県箱根町でのイベントで

 ラビューの日本語の車内アナウンスを担当しているフリーアナウンサーの久野知美さんは鉄道好きで知られ、私が審査員を務めている日本一の鉄道旅行を決める賞「鉄旅オブザイヤー」の授賞式の司会でもおなじみだ。乗車後に神奈川県箱根町でのイベントでお目にかかった際、久野さんに「ラビューは楽しい電車なので、アナウンスも高めの声にしています」と教えていただいた。
 ラビューが走り出すと、次なる大違いを実感した。乗ったのは主電動機(モーター)を搭載した車両なのに、実に静かなのだ。対照的だったのは私が乗ったNRAで、「爆音モーター」と呼ばれる大きな音を奏でるモーターと、「抵抗制御」と呼ばれる旧式の制御装置を積んだ編成だった。
 鉄道ファンとしては「爆音」をBGMのように楽しんでしまうのだが、一般の利用者には会話や睡眠の妨げにならない静かな走行機器が好まれよう。ラビューはNRAに比べて年間消費電力量を約6割低減した省エネルギー化も売りだ。


西武鉄道の小手指車両基地に止まっていた旧小田急電鉄8000形=6月1日、埼玉県所沢市

 省エネ化では、ラビューで小手指車両基地(所沢市)を通った際に〝切り札〟となる電車が止まっているのを見つけた。省エネ化した制御装置「VVVFインバーター」を採用した旧小田急電鉄8000形だ。西武は小田急から8000形、東急電鉄から9000系を計約100両譲り受けて旧型車両から順次切り替え、2030年度にはVVVFインバーター搭載車両に統一する計画だ。
 切り替えと言えば、池袋線の電車は飯能で進行方向が変わる。だが、飯能―西武秩父間ではいすが進行方向とは反対を向いたまま座る。一方、JR九州の主に博多(福岡市)―大分間を走る特急「ソニック」が途中の小倉(北九州市)で進行方向が変わる際には、いすの向きも変えるのが通例だ。ソニックでは乗客同士が協力して座席を回転させる光景が見られ、「ラビューも見習えばいいのに」と思ってしまう。
 飯能を出ると秩父山地へ向かう勾配区間に入るが、高性能モーターを搭載したラビューは順調だ。それだけに「臨時停車駅の高麗に停車する自動アナウンスが用意されているのだろうか」という細かい点が気になった。
 「心配ご無用」。そう言わんばかりに、「間もなく高麗、高麗に到着いたします」という久野さんの美声が車内に響いた。


ラビューの運行開始5年を記念したキャラクター「らびゅーくん」=6月1日、日高市

 池袋を出発して49分後、定刻通りに高麗のホームに降り立った。デザインと居住性、走行性能、省エネのいずれも車体色のように輝きを放っているラビューでの移動体験は、期待を大きく上回った。武蔵丘車両研修場の公開では運行開始5年を記念したキャラクター「らびゅーくん」も披露され、子どもたちの熱い視線を浴びていた。


西武鉄道武蔵丘車両研修場公開ではNRAと記念撮影するコーナーが用意され、筆者も撮っていただいた=6月1日、日高市

 ハイスペックで人気も抜群の〝優等生キャラ〟のラビューに感服した一方、2025年度以降に引退予定のNRAにしっかりと乗っておきたいという思いは変わらない。ラビューとは「大違い」の旧世代ながらも奮闘し、駆け続けている姿にひとごとではない親近感を覚えるからだろうか。


ラビューで運行されている西武鉄道の特急「ちちぶ」の通常の停車駅(オレンジ色のライン、西武鉄道提供

 ☆共同通信・大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)デジタルコンテンツ部次長。2013~16年のニューヨーク支局特派員、20~24年のワシントン支局次長を含めてアメリカに通算10年間住み、24年5月から現職。連載『鉄道なにコレ!?』も執筆している。

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