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暴力パワハラ問題根絶へ「指導者もアップデート」を 日仏の違い、柔道五輪金メダリスト谷本歩実さん

47NEWS / 2024年7月12日 10時0分

インタビューに答える谷本歩実さん=2024年5月

 日本スポーツ協会や日本オリンピック委員会(JOC)が連携し、スポーツ界の暴力や暴言、ハラスメント行為の撲滅を目指す「NO! スポハラ(スポーツ・ハラスメント)」活動を開始して1年が過ぎた。実行委員会のメンバーを務めた柔道女子五輪金メダリストの谷本歩実さん(42)は現役引退後、パリに留学した経験も踏まえ「指導者のアップデートも必要」と強調する。このほど共同通信のインタビューに応じ、日本とフランスの指導を取り巻く違いやスポハラ根絶への思いを語った。(聞き手は共同通信=七野嘉昭、田村崇仁)

 ▽選手のSOS

 ―昨年4月から1年間の活動での現状は。


「NO!スポハラ」活動をアピールする谷本歩実さん=2023年11月、東京都新宿区


 「NO!スポハラを口にするのはすごく勇気がいる。日本の場合はなかなか口に出しづらい環境なのも原因の一つ。そこがまず一つハードルだと感じた。そうした中で選手だけでなく、指導者や保護者からも話を聞き、ハラスメントが起きないための予防が一番重要だと気づいた。声を上げたことで、選手に選ばれないのでは、という不安は誰もがある。そこをいかにクリアにしていくか。何がグッドで何がバッドかというのをとにかくアップデートしていくことが大切ではないか。声を上げることが抑止力にもつながる」

 ―2013年に発覚した柔道女子日本代表の暴力指導問題。15人が声を上げた選手たちの勇気ある行動を振り返ると。
 「当時は声を上げる選択肢がなかった。だからメディアで一報を知り、自分の中でも驚きだった。10年以上たった今でも、関係者は心に深い傷を負っている。だからこそ、起こらないように予防することが大事だ。選手のSOSに気づける環境づくりが必須」

 ▽仏の指導は役割分担

 ―谷本さん自身、現役時代はどうだった。
 「『ふてほど(不適切にもほどがある!)』ですよね(笑)。あのドラマを見て、こんなに変わったんだなと思う。自分たちもそれが当然なんだと思ってずっと現役中はやっていたので、視野を広げないといけない。指導者になってから現場の環境は、時代の在り方とともに毎日、毎日変わる。なのですごく自分自身をアップデートしていかないといけない。そんなプレッシャーがあった」
 【不適切にもほどがある!】コンプライアンス意識の低かった1986年から2024年にタイムスリップした〝昭和のおじさん〟の体育教師(阿部サダヲ)が主人公の、TBS系ドラマ。

 ―日本とフランスで指導の違いは。
 「フランスに行って、小さい子どもたちから80歳くらいのおじいちゃん、おばあちゃんまで指導させてもらうなかで、根本的に日本との違いというのは感じた。例えば選手に触れること一つにしても、法律でそれが指導なのか何なのか、その選手との距離も決まっている。10年前の日本の指導はアメとムチを使い分けて公私とも全てをみる感じ。厳しく指導もするし、友達のような時間も過ごす。そこに心理的混乱が生まれる。一方でフランスは役割が細かく分かれている。コーチや組織を運営するスタッフ、トレーナーやカウンセラーもいる。きちんと役割があって必要以上に踏み込まないし、選手との適度な距離感がある」


柔道体験の交流会を終え、井上康生氏やラグビーフランス代表選手らと記念撮影する谷本歩実さん(中央右)=2022年6月、講道館

 ▽学び続ける大切さ

 ―日本スポ協の調査で23年度は窓口への相談件数が過去最多の485件。暴力は減少しているが、暴言が増加傾向に。39%と最も多かった。被害者の内訳は小学生が最多の42%で、中学生は12%、高校生は13%だった。
 「殴る蹴るは駄目だというのは当たり前になった。ただ暴言については浸透していない。どこからが暴言なのか。子どもたちが不快なことや嫌だと思うものは全て暴言、ハラスメントになる。今度はそこを浸透させないといけない。反対に、科学的に感情に刺さるいい言葉というのはパフォーマンスもアップする」

 ―ハラスメントを過剰に意識し、萎縮してしまう指導者もいる。
 「ほとんどの方はすごくいい指導をされて、日本のスポーツが成り立っている。とても感謝している。私も指導者として自分自身が変わっていかないといけないと感じる。大切なのは学び続けること。柔道教室をやると今までは子どもたちが円になって先生方は外で見守って静観している方が多かった。今では子どもたちの周りを先生方が囲ってメモを取ったり動画を回して、先生方がすごく学んでいる。これは本当に変わったなと感じる。現場の状況は毎日変わる。思いやりを持って、それぞれの立場に立って考えないといけない。スポーツの価値が伝わる環境になることを願っている」


谷本歩実さん(名城大提供)

谷本 歩実さん(たにもと・あゆみ)柔道女子63キロ級のエースとして04年アテネ五輪、08年北京五輪ではオール一本勝ちで2連覇。10年に現役引退後はパリに留学。指導者としては女子日本代表コーチなどを歴任。現在は日本オリンピック委員会(JOC)で理事、アントラージュ専門部会の部会長を務める。24年パリ五輪は日本選手団副団長。42歳。愛知県出身。


2008年北京五輪の柔道女子63キロ級で2連覇を達成した谷本歩実さん(共同)

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