知名度勝負の選挙、「キャラ立ち」の東京都知事生む? 注目度の高さ、乱立の原因に。選管も想定外の56人立候補
47NEWS / 2024年7月6日 10時0分
首都のかじ取り役を決める東京都知事選は最終盤を迎えた。過去最多の56人が立候補したが、実は以前から候補は乱立気味だった。最近は20人以上の立候補が続いている。
注目度が高い選挙では、知名度が勝敗を分けることが少なくない。これまでにあった都知事選は21回で、知事の座に就いたのは9人。振り返ると「キャラ立ち」した人が多い。現職はキャスター出身の小池百合子氏。他の面々も作家やタレント出身とバラエティに富む。
知事のキャラクターや選挙の歴史をひもとけば、選挙の見方が変わるかも。(共同通信=東京都知事選取材チーム)
▽作家の次は作家、さらに作家
初代の東京都知事は、終戦直後の1947年に就任した。「東京都長官」を務めた経験のある安井誠一郎氏だ。初当選時は56歳で、実はこれまでで最も若い都知事。その後は小池氏までいずれも60代で初めて就任している。安井氏は戦後の食糧不足や住宅難の解消に尽力した。交通整備を進め、復興に努めたとされている。
59年に就任した東龍太郎氏は2期を務めた。64年の東京五輪開催のほか、上下水道や地下鉄建設など都市基盤整備に力を尽くした。
高度経済成長を経て、東京では人口集中や公害が問題になる。そんな中、67年に就任したのは経済学者の美濃部亮吉氏だった。当時の社会、共産両党の「革新共闘」で当選を勝ち取った。福祉重視を掲げ、老人医療費無料化や児童手当創設に取り組んだ。「東京に青空を」のスローガンで公害対策にも着手した事で知られる。一方で、オイルショックによる景気後退もあり財政は悪化した。
1967年4月、東京都知事選で当選を決め、万歳する美濃部亮吉氏(左から2人目)
79年から16年間知事を務めたのが元内務官僚の鈴木俊一氏。在任期間は今も最長記録になっている。東京駅に近い丸の内にあった都庁舎の新宿移転や臨海副都心の開発に尽力した。
その鈴木氏が臨海副都心で開催しようとしたのが世界都市博覧会だった。ただ、この博覧会は別の都知事の判断で中止になる。決断を下したのは、直木賞作家でタレント出身の青島幸男氏。ただ、他の政策などで独自色を出せず、1期で都庁を去ることになった。
1994年2月、世界都市博覧会の会場となる臨海副都心地域を視察する鈴木俊一氏
青島氏の後を継いだのも有名作家だった。芥川賞作家で、運輸相などを歴任した石原慎太郎氏。99年に就任し、ディーゼル車の排ガス規制や新銀行東京設立などを推進した。言動は強気で、波紋を広げるものも少なくなかった。尖閣諸島を買い上げる計画を表明したことなどはその例だ。石原氏の当選4回は鈴木氏と並んで最多。
石原氏の後継もまた作家の猪瀬直樹氏。東京五輪・パラリンピック開催が決まったのは猪瀬時代だった。ただ、医療法人グループからの5千万円受領が発覚したことで、わずか1年で辞職に追い込まれた。
後に続いた国際政治学者で元厚生労働相の舛添要一氏も2年で都庁を去る。政治資金の私的流用問題を指摘されたことがその理由。次が現職の小池氏だ。
▽首都圏では断トツの投票率
今回の選挙の特徴は「候補乱立」だ。過去21回の都知事選のうち、10人以上が立候補したのは14回に及ぶ。16年以降は20人以上が続いている。
東京都庁舎
乱立に慣れているはずの東京都選挙管理委員会も56人という数は「想定外」だったようだ。選挙ポスターの掲示板の枠は最大48人分しか準備されていなかった。
都選管は告示日当日、49番目以降に届け出た8候補にクリアファイルと粘着テープや画びょうを支給した。候補者に個別に増設を要請するという異例の対応だった。
有権者を見ると、都は全国でも群を抜いて多く、1150万人(6月12日現在)に上る。得票数の過去最多は12年に当選した猪瀬氏で433万票。小池氏が再選された20年の366万票が続いている。
その20年の投票率は55・0%で、16年は59・73%。首都圏の知事選では23年の埼玉が23・76%、神奈川が40・35%、21年の千葉は38・99%と比較すると、かなり高いことが分かる。注目度の高さが影響しているようだ。
都知事選で投票率が最も高かったのは美濃部亮吉氏が再選された1971年で72・36%。最も低いのは鈴木俊一氏が3選を果たした87年で43・19%となっている。
▽年間予算はスウェーデンやチェコ並み
最後に、選挙戦の舞台となっている東京都をデータで見てみよう。
東京都は約1400万人の人口を抱え、日本全体の1割超を占める。年間予算は16兆円でスウェーデンやチェコの国家予算と同程度。21年度の都内総生産は113兆7千億円で、全国の2割余り。オランダやトルコの国内総生産に匹敵する。
都道府県で3番目に面積が狭い半面、今年5月1日時点の人口は1417万人で、2位の神奈川県に大差をつける。ただ、23年の人口動態統計(概数)では、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は東京都は0・99。全国平均を下回った。
65歳以上の高齢者は20年時点で319万人、都全体の22・7%を占める。45年は397万人で全体の28・8%と予測している。
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