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宙に浮いた供託金100億円、高額献金対策の新法は「何の影響もない」 旧統一教会会長、退任時期は明言せず【単独インタビュー後編】

47NEWS / 2024年7月31日 10時30分

安倍元首相銃撃事件から2年となり、現場付近に設置された献花台=7月8日午前、奈良市

 安倍晋三元首相銃撃事件の発生から2年に合わせた、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長の単独インタビュー。後半では、国側の施策への対応、自身の進退などについて聞いた。(共同通信=深江友樹)

 ―安倍元首相銃撃事件で逮捕、起訴された山上徹也被告について、教団として新たに把握したことはあるか。
 特に聞いていません。公判が開かれ、人物像が分かるまでは論評は控えた方が良いと思っている。

 ―教団改革の状況や課題は。
 コンプライアンス宣言以降の取り組みは確実に進めている。かつて裁判になったような案件は出てこないと感じる。

 ◇事件後、教団の高額献金問題が改めて明らかになったことを受けて、昨年には不当寄付勧誘防止法が施行された。消費者庁は、同法に基づく昨年度の調査対象は97件だったと発表。勧告や命令には至っておらず、個別の団体名も公表していない。

 ―不当寄付勧誘防止法の影響はあるか。
 消費者庁からアプローチはない。引っかかるような案件もない。特に何の影響もない。10万円以上の献金には、借金していないかなどを確認する書面を作成している。本人が拒否するケースなどを除き、9割以上で作成している。

 ◇教団を巡っては、解散命令が出るまでに財産を国内外に散逸させるのではとの指摘が相次ぐ。財産監視強化のため、文部科学省は3月、特例法に基づき教団を「指定宗教法人」に指定したと公示した。


盛山正仁文部科学相

 ―指定宗教法人に指定された影響はあるか。
 3カ月に1度、財務書類を文科省に提出することになった。すごい作業で、経理は大変。財務書類は定められた通り今後も提出する。「特別指定宗教法人」にならなかったことは安心している。特別指定となると、被害者と言われる方が財務書類を閲覧可能になる。これは本当にあっちゃいけない。

 ◇教団は昨年、被害者への補償の原資として、国側に最大100億円を供託する案を表明した。教団の財産が海外などに流出することが懸念され、規制法が必要との声も上がっていた。こうした懸念に対応する形で表明したとみられている。

 ―最大100億円の供託案はどうなったのか。
 国からのアクセスは何もない。供託金は宙に浮いている。財産を隠す意図はなかったので、その意図を表明するために供託案を提示した。被害者がもしいれば、しっかり対応する。

 ―財産の海外移転はないのか
 海外送金はストップしている。海外の研修参加時に現金を持参する場合は、日本での申込時に確認するシステムを稼働させた。
 この2年間で、不動産を購入したケースは何件かある。献金は減っているが、海外送金もストップしているので、明日(経済的に)死ぬような状況ではない。


韓国・京畿道加平の教団施設にある建物

 ―数年くらいは収支は持つのか。
 ノーコメント。

 ―自身の進退は
 役員から代えましょうと言われれば代わる。2世の新しい世代は育ってきており、機は熟している。いつでも交代は可能だ。

 ―集団交渉にはどう対応するか。
 集団交渉には明らかに期限切れのものもある。個別で要求してくれればきちんと向き合っている。これまでに800件弱、約55億円を返金した。

 ―報道については。
 報道する自由、報道しない自由があると思うが、信者の人権侵害など客観的な被害はもっと報道してほしかった。ちょっと諦めというか、寂しい思いがする。

 ―なぜ今インタビューに応じたのか。
 海外でも信教の自由への懸念の声が上がっている。潮目が変わり始めている。日本でも反応してくれる人がいるだろうと思った。問題意識を発信していかなければならない。


インタビューに答える田中富広会長=7月5日

 ◇インタビューは1時間半近くにわたり、解散請求への批判や、信者の人権侵害を訴える資料を記者に手渡す場面も。「信教の自由」を掲げて問題提起する田中会長。だが、被害を訴える当事者たちに言葉が届くとは思えなかった。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は「日本教団は、韓国側の意向に逆らえない。だから『謝罪』もできないのではないか。韓国側への送金も見えない形で続いているだろう」と推測する。田中会長の進退については「辞めれば、これまで否定してきた教団としての責任を認めたことになる」と指摘した。

 文教大の塚田穂高教授(宗教社会学)は「解散命令請求などを受け、教団は『被害者』意識をいっそう強めている印象だ」と批判する。信者への人権侵害が許されないのは当然としつつ「政権やメディア、全国霊感商法対策弁護士連絡会など、他者のせいにする姿勢ばかりが目立つ」と指摘。教団は改革をアピールするが、「教団側がもたらした過去の問題や被害が免責されるわけではない」。
 公益性ある「宗教法人」として活動してきたはずなのに、解散請求されるほど問題を積み重ねてきたことは事実だとして、「真摯に被害と向き合わない限り、どんな『改革』や『おわび』も社会には伝わらず、空回りするだけだろう」と話した。

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