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日本で例を見ない巨大な「政治祭典」  暗殺未遂事件直後のトランプ氏は「自己陶酔」【ワシントン報告⑲共和党大会】

47NEWS / 2024年8月9日 10時30分

米共和党大会で、暗殺未遂事件の際に犠牲となった元消防士の制服に寄り添うトランプ前大統領=7月18日、ウィスコンシン州ミルウォーキー(AP=共同)

 米共和党は7月中旬、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで大統領選の党大会を開いた。日本ではあまり例のない巨大な「政治祭典」である。民主党は8月19日から党大会を予定する。正副大統領候補を正式に決め、11月の本選へ機運を高める場と位置付けられる。共和党大会は暗殺未遂に遭ったトランプ前大統領礼賛一色となった。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕)

 ▽「全体の大統領になる」


 両党とも4日間の日程で、スケジュールはクライマックスとなる大統領候補の受諾演説で締めくくられる。星条旗をイメージした赤や青の光があふれる会場で、トランプ氏は数千人の党関係者を前に「米国の半分ではなく、全体の大統領になる」と訴えた。
 日ごろと趣を異にする言葉からは、暗殺未遂に屈しない自分こそ大統領にふさわしいという自己陶酔が見て取れた。演説後半はいつも通りの政敵批判を交えた時事漫談に戻り、当初55分間の予定は1時間半近くに延びた。負傷した右耳を覆う白いガーゼが目立つ。初日から連日会場に現れ、代議員らを沸かせた。


米共和党大会で手を掲げるトランプ前大統領=7月18日、ウィスコンシン州ミルウォーキー(AP=共同)

 会場の多目的施設「ファイサーブ・フォーラム」はプロバスケットボールの本拠地としても知られ、約1万7千人を収容できる。期間中、ビール醸造の街として知られるミルウォーキーには党やメディアの関係者ら5万人が集い、経済効果は2億ドル(約310億円)以上と見込まれた。


米共和党大会が開かれたウィスコンシン州ミルウォーキーの多目的施設「ファイサーブ・フォーラム」(奥)=7月16日(共同)

 暗殺未遂もあって周辺の警備は厳重だった。メディア関係者は事前に記者証を申請し、大統領警護隊(シークレットサービス)の審査を経て許可が下りる。会場や、メディアセンターが設けられた会議施設などがある区画約1キロ四方は封鎖され、入る際には厳重な身体・荷物検査が求められた。

 ▽2年間の準備


米ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党大会。スクリーンにはトランプ前大統領らが映し出された=7月16日(共同)

 共和党が会場をウィスコンシン州にしたのは、選挙結果を左右する重要州であるからにほかならない。トランプ前政権で大統領首席補佐官を務めたプリーバス氏は大会で「州とミルウォーキーは開催まで2年間の準備を重ねてきた。携わった全員に感謝したい」と振り返った。
 2400人を超える代議員が指名候補を正式に決める。参加は名誉なことのようだ。南部テキサス州の代議員ジャクソン・カーペンターさんは「今回が初めての出席。全米の党員と出会い、大統領選に関与できるのは素晴らしい経験」と語った。予備選ではヘイリー元国連大使に投票したが、今はトランプ氏を支持する。トランプ氏の評価が人によって分かれる点も理解する。「(心理状態を探る)ロールシャッハ・テストのような存在で、トランプ氏に希望や夢を抱ける人たちが支持している」と自分なりに解説した。


米ウィスコンシン州ミルウォーキーのファイサーブ・フォーラムで開かれた共和党大会で、ステージに登壇したトランプ前大統領=7月18日(ロイター=共同)

 大会は有力者らの演説が軸だが、合間にはバンドの演奏が続き、スポーツイベントのようにも見える。演出も巧みで、トランプ氏も副大統領候補のバンス氏も連日、顔を見せたが、それぞれの演説はバンス氏が3日目の最後、トランプ氏が4日目の最後まで引っ張り、じらしながら雰囲気を高める。
 メディアセンター周辺にはトランプ氏のグッズを売る土産物の出店も複数あり、祭りに近い。全米から党やメディア関係者が一堂に集まる貴重な機会だけに、議事には載らない非公式の会合や食事会が市内でいくつも催された。


共和党大会のメディアセンターの一角に設けられた土産物店=7月17日、米ウィスコンシン州ミルウォーキー(共同)

 ▽1968年と因縁

 民主党は中西部イリノイ州シカゴで大会を開く。イリノイ州は民主党が強い。選挙で絶対に落とせないウィスコンシン州と中西部ミシガン州に接する地という点が重要だ。バイデン大統領の後継は事実上、ハリス副大統領に決まっている。


米マサチューセッツ州での選挙集会で演説するハリス副大統領=7月27日(ロイター=共同)

 シカゴは因縁の場所で、1968年大統領選でも同じ夏に民主党大会が開かれた。指名候補を目指したケネディ元司法長官が直前にロサンゼルスで暗殺され、ベトナム反戦運動の高まりから会場周辺は抗議活動で荒れた。
 再選を目指した現職のジョンソン大統領はこの年の春、不人気を自覚し撤退した。これは高齢不安から選挙戦を離脱したバイデン氏と似通い、当時副大統領だったハンフリー氏が党指名候補になった点はハリス氏が後継となった事例と重なる。ケネディ氏の息子ロバート・ケネディ・ジュニア氏が無所属で出馬している点も二つの大統領選の結び付きを感じさせる。ハンフリー氏は11月本選で共和党のニクソン氏に敗れた。

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