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明治生まれは無料で入れます…でも実際にいるの? 帝国ホテル玄関に新千円札・北里柴三郎の研究所も、「本物」展示にこだわる愛知・明治村の魅力に迫る

47NEWS / 2024年8月13日 10時30分

明治村にある帝国ホテル中央玄関の内部

 4月上旬、神奈川県内の110歳の住人が国内最高齢の男性になったと報じられた。生まれは大正2年。つまり、国内に明治生まれの男性はいなくなったことになる。ニュースを受けてにわかに話題になったのが、愛知県犬山市の「博物館明治村」だ。なぜならこの施設、明治生まれの人の〝入村〟を無料にしているからだ。X(旧ツイッター)などの交流サイト(SNS)では「無料で入れる男性、もういないの?」といった声が飛び交った。
 ここでは日本各地に残されていた明治時代の遺構を展示している。ノスタルジックな雰囲気が漂う名称で、子どもから中高年まで幅広い年代でにぎわう、そんな村の魅力に迫った。(共同通信=平井森人)

 ▽「本物」にこだわり、移設した建築物


 ある週末、名古屋鉄道犬山駅のバス乗り場は、明治村行きを待つ人で行列ができていた。「奥までお進みくださーい」。係員が呼びかける中、さらに人が加わる。家族連れから夫婦、若いカップルなどさまざまだ。列の後方にいた記者は、乗降口のドア付近に立って乗車するほかなかった。
 明治村が開村したのは、今から約60年前の1965(昭和40)年3月。オリンピックが日本で初めて開催された翌年のことだ。戦争や高度経済成長に伴う再開発の波で失われつつあった明治建築を残すことが目的だった。東京・内幸町にある帝国ホテルの旧中央玄関をはじめ建造物が60点以上並ぶ野外博物館で、三重県庁舎など建物11点と、工作機械など産業遺産3点は国の重要文化財に指定されている。


明治村で展示されている三重県庁舎

 「本物」にこだわり、建築物は元の所在地から移したものばかり。注目は、7月3日から発行が始まった新紙幣で千円札の顔となった細菌学者の北里柴三郎が東京・白金に建てた研究所だ。留学先のドイツの研究所にならったという洋風の建物に入ると、ペストや結核といった感染症との戦いの歴史や、北里の生涯を展示している。


東京・白金から移設された北里研究所

 建物の向きにもこだわる。顕微鏡を使う研究では、時間帯や季節次第で強さや角度が変わる南からの日光は不向きだといい、当時も研究室の窓は北側に設置されていた。明治村では、来村者が実際の使われ方を感じられるよう窓の向きを合わせている。
 北里研究所内では9月29日まで北里のほか、渋沢栄一、津田梅子の新紙幣の顔3人に焦点を当てた企画展示も開催。村内の土産店には新紙幣を模したタオルも並び、盛り上がっている。研究所の建物は放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」のロケでも使用されていて、問い合わせが増えているという。


北里研究所内で開かれている新紙幣の顔3人に焦点を当てた企画展示


博物館明治村で発売されている新紙幣を模したタオル

 ▽SLも現役、謎解きゲームでリピーターも

 国内だけでなく、ブラジルにあった移民住宅なども現存している。1874(明治7)年にイギリスから輸入された蒸気機関車(SL)は、村内の移動手段として現役で活躍しており、乗車や撮影を目当てとしたファンも訪れる。
 夫婦で訪れた岐阜県多治見市の会社員河村利隆さん(66)は年間パスポートを持つ常連だ。この日、乗車を楽しみ「ゆっくり進む昔ながらの乗り心地が良かった」と満足げだった。


1874年にイギリスから輸入され、明治村で運行を続けるSL

 明治村は、2024年5月に累計の来村者が5千万人に達した。ピークは明治への改元から100年だった1968年で、年間150万人を記録。この年は政府主催の記念式典も開かれ、国民的な盛り上がりを見せていた。1992年までは毎年100万人超を維持していたが次第に右肩下がりとなり、2002年には30万人ほどにまで落ち込んだ。
 明治村の湯田晃久所長によると、かつては建物を外から眺め、説明を読むことがメインの一般的な博物館のような場所だった。来村者の減少を受けててこ入れし、内部に立ち入って楽しめる建物を増やすなど、見るだけでない体験型のコンテンツを増やした。
 村内を回ってヒントを集める謎解きアトラクションは、内容を変えながら断続的に開催されている若者を呼び込む人気企画だ。1日でクリアできるものから数日かかるものまでレベルはさまざま。リピーターも楽しめるほか、問題を解くうちに歴史を学べるように構成されている。

 ▽コスト大の大規模修繕、「後世に残す使命」


三重県伊勢市から移設した「宇治山田郵便局舎」

 課題は老朽化する建築物の手入れや修理だ。三重県伊勢市から移設した「宇治山田郵便局舎」は、日本郵政と共同で約4億円を投じて4年に及ぶ大規模修繕を行った。湯田所長は「本物に触れることで私たちの暮らしのルーツを作った人々の熱量や物語を感じることができると思う。後世に残す使命がある」と村の維持を誓う。費用は入村料や有志の寄付金で賄いたいとしている。常連の河村さんも「歴史ある物の維持にはお金がかかると思うが、今後も続けてほしい」と応援していた。

 ▽112~116歳の方お待ちしています

 ところで、SNSで話題となったような「無料で入村した人」は、過去にいたのだろうか。
 明治村によると、2014年の1人を最後に10年間、明治生まれの人が入村した記録はない。国内全体の最高齢は1908(明治41)年に生まれた兵庫県の女性で今年5月に116歳の誕生日を迎えた。国勢調査を担当する総務省は明治生まれのみの人口は集計しておらず、現状で国内に明治生まれが何人いるのかは分からなかった。
 明治時代が終焉を迎えた1912(明治45)年から112年。湯田所長は「相当ご高齢とは思うが、もし来村いただける方がいれば大歓迎。ぜひ当時の生活や思い出の話をうかがいたい」と話した。

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