「床トントン」の謎儀式、表彰式で渡す「細長い箱」…。パリ五輪のちょっとした疑問、赤いアイツの人気も調べてみました
47NEWS / 2024年8月10日 10時30分
パリ五輪のテレビ中継を見ていると、「なんだあれ?」と気になることがいくつかあった。
例えば、競技開始前に腰ほどの高さの棒で床をトントントンと3回たたく、謎の「儀式」。どの会場でもやってるようだ。トントンしている人は満足げだが、特段の説明はない。
表彰式では、メダルと一緒に渡されている細長い箱もちょっとよくわからない。まさかトントンの棒が入っているのか…。そして、メダリストはその箱を脇に置いたり、脇に挟んだりしながら仲良くスマートフォンで自撮り。スマホ持ち込んでいいの?過去の五輪では見なかったような気がするけど…。公式マスコットの人気も含めて、現地で調べてみた。(共同通信=小田智博、黒田隆太、河村紀子)
▽あの日本人金メダリストがトントン
五輪で儀式に参加した高橋礼華さん
まずは棒の儀式について調べていると、こんな情報が。「日本人がトントンするらしい」。この日本人というのが、2016年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを手にした高橋礼華さん。バドミントンの「タカマツ」ペアの一人だ。
高橋さんが登場したのは4日のバドミントン会場。高橋さんは木の棒を握り、ゆっくりと3回床を突いた。ちょっと緊張しているようだが、笑顔も見える。儀式が終わると会場は歓声に包まれた。
儀式の後、高橋さんが電話取材に応じてくれた。儀式参加のきっかけは、会場に高橋さんが来ていると知った大会関係者からの連絡。数日前に依頼があったのだという。
「私なんかでいいのかなと思ったけれど、本当にありがたい。実際にやるときはかなり緊張した。とにかく間違えないように、日本の恥にならないようにと考えた。あっという間だった」
高橋さんはほっとした様子でそう話した。儀式についてどう思うかと聞くと「この合図で始まって、選手が入ってくる。お客さんを盛り上げる、いい演出だと思う」と答えた。
なぜこの儀式をやるのか。その答えは、五輪公式ホームページに書かれていた。棒は「ブリガディア」と呼ばれ、各競技の開始時に行われる。トントンする役は、スポーツ選手やボランティア、著名人などが担っている。
もともとはフランスの劇場で公演の始まりを告げる合図で、中世に起源があるとも言われる。3回たたく理由は諸説あり、一つは、演劇における「俳優」「観客」「物語」を意味するというもの。パリ大会では伝統に倣い、アスリートのパフォーマンスに敬意を促す意味を込めたという。
▽表彰式でもてあまし気味の長い箱
表彰台に立つ阿部一二三選手(ゲッティ=共同)
競技のフィナーレに当たる表彰式でもちょっと気になる「ブツ」があった。メダルとともに渡される細長い箱だ。もらったメダリストの中には「何これ?」という表情も。カメラマンの求めに応じて写真撮影する際には、もてあますのか表彰台に置かれている。
中身は一体何だろうか。海外のメダリストのSNSや五輪公式ホームページに答えがあった。
中身はあるポスター。イラストレーターのウーゴ・ガットーニさんがパリ五輪のためにデザインした公式ポスターだ。五輪のモチーフに彩られたパリの街並みが明るく華やかに、そして緻密に描かれている。
パリ五輪の公式ポスター五輪の公式ポスター(組織委提供・共同)
ガットーニさんは制作に2千時間を費やしたそうだ。公式ポスター発表時の組織委の説明によると、色の使い方については、あの宮崎駿監督の世界観を意識したという。ポスターはオリンピックのオンラインストアで購入することもできる。
▽表彰式にスマホ持ち込み?
その表彰式では、メダリストが手渡されたスマホで仲良く自撮りをする姿が目立つ。そんなに気軽にスマホを持ち込めるのか、どうやって他の人にシェアしているのか―。調べてみると、大会スポンサーが関係する話だった。
韓国サムスン電子のホームページによると、スマホは同社製。写真は自動的にアップロードされ、選手らが共有できる仕組み。ホームページは「表彰台の上でより個人的な思い出を作れるよう支援している」とうたう。
探してみると、X(旧ツイッター)のオリンピック日本語公式アカウントに、日本選手が写る自撮りがいくつもあった。ある写真では、体操男子個人総合で優勝した岡慎之助選手が、他の2人のメダリストと顔を寄せ合っていた。見ていると、なんだかアスリートが身近に感じられる。
自撮りする岡選手ら
▽赤いアイツ、人気のほどは
フリージュのぬいぐるみ
販売されているフリージュのぬいぐるみ
記念撮影するフリージュ
最後に、大会によっては賛否のある公式マスコットについて。今回はどう受け止められているのだろうか。
今大会のマスコット「フリージュ」は、フランス革命などで自由の象徴となったフリジア帽がモチーフになっている。赤い体にぎょろっと丸い目。大阪万博の「ミャクミャク」のキモカワイさに通じるものがある。
大会前には人気がイマイチという話もあったが、実際はどうだろうか。パリ五輪・パラリンピックの公式グッズを販売する現地の「メガストア」で聞いてみることにした。店はパリ中心部のシャンゼリゼ通りにある。店に向かう途中、フリージュTシャツを着た家族が目に入る。ぬいぐるみをかかえて歩く子供もいた。
メガストアの店員によると、商品の中で、特に人気を集めているのが「フリージュ」のグッズだという。Tシャツやぬいぐるみ、帽子、ピンバッジが売れ筋だそうだ。店舗内にはフォトスポットがあり、フリージュの着ぐるみが現れると歓声が上る。家族連れが撮影のために列をつくった。
フランス在住のフレデリック・リュックさん(48)は「家族へのお土産を買いに来た。フリージュはフランスを表現していて、とても良い」と話してくれた。かごは商品でいっぱいだ。
店で最も高い商品はフリージュの巨大ぬいぐるみで800ユーロ(約12万5千円)もする。女性店員は「自分が働いている日だけで4人は購入していて、びっくりしている」と笑った。
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