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花火大会復活、簡単やないで 運営に奔走、9月15日開催の大阪「水都くらわんか花火大会」

47NEWS / 2024年8月15日 11時0分

第2回大会の花火(Motoyuki Tanaka)

 「花火大会の復活、簡単やないで」。大阪府枚方市で飲食業などを営む井関拓史さん(38)は9月15日に地元で開かれる「水都くらわんか花火大会」の実行委員長だ。2003年の開催後に中止となった花火大会を復活させようと奔走したとき、昔を知る人に無理だろうと言われた。だが、2022年に復活にこぎ着け、今年9月に3回目の開催を迎える。全国各地の花火大会は資金集めに苦慮しており、新型コロナウイルス禍が落ち着いても中止決定が相次いでいる。井関さんに運営への思いを聞いた。(共同通信=加藤裕)

 ▽枚方愛


井関拓史さん

 「花火大会、また見たいね」
 井関さんが花火大会復活に動いたのは、経営する飲食店で昔を懐かしむ声を客から聞くようになったのがきっかけだ。


 枚方市の河川敷で花火大会が中止となって年数を重ねるにつれ、客の地元愛が行き場を失っているように感じた。考えてみれば、枚方の名所や名物、と言ってピンとくるものがない。外国人からメインストリートはどこかと聞かれ、首をかしげてしまう自分ももどかしかった。
 井関さんは和歌山市出身で、枚方市に住み始めたのは大学時代からだ。当時バイト先だった店の経営を、社会人になって受け継いだ。その店で客の声を聞き、枚方と自分のことを重ねて考えるようになった。
 中学のころ、やんちゃだった。いつの間にか友達が減り、自信を失った。そのうち、うつ症状が出て不眠症に苦しめられるようになり、一時は自殺も考えてビルの屋上へ駆け上がったが、怖くなって足を止めた。
 それからだ。死ぬより、死ぬ気持ちをもって生きよう、と思い直したのは。誰かに求められる自分の像を考えるようにもなっていた。
 「枚方には花火が必要なのではないか。枚方に必要なものを自分が作れば、自分が求められる人間になれるのでは」
 復活への行動は、井関さんのそういう思いから始まる。

 ▽手応え


花火大会が見られる大阪府枚方市の淀川河川敷

 井関さんは2014年に一般社団法人「Light up OSAKA」を設立し、翌年、河川敷でのイベントを主催した。多くの来場者を呼び込む花火大会にしようと、昔を知る人たちに相談すると、簡単ではないと一蹴された。警察への相談、警備の人員確保、ステージの設営。どれをとっても一筋縄ではいかず、各所に頭を下げてまわった。
 2015年の第1回イベントは地元の注目を集めようと、手持ち花火を同時着火する人数のギネス記録に挑戦する内容にした。記録更新には及ばなかったが、約2000人の来場者を集め、手応えを感じた。
 河川敷での催しは徐々に知られるようになる。来場者は2016年に約4000人に倍増、その後も年を追うごとに1万5000人、4万人、5万5000人と順調に伸びた。
 しかし、新型コロナ禍に見舞われ、2020、21年の開催をあきらめざるを得なかった。
 井関さんも飲食店の経営が厳しくなる。同じ境遇で苦しむ地元の店を助けようと、ウーバーイーツのような大手より手数料が安い料理宅配サービスを開始。枚方の新しい名物にしようと芋スイーツ店も開いた。現在、観光地域づくり法人(DMO)「くらわんか観光マネジメント」の代表理事も務める。イベント運営で奔走していたら、いつの間にか地域観光推進の顔役になっていた。


第2回大会の花火(Michihiro Sugaya)

 イベントは2022年に「水都くらわんか花火大会」に名称を変え、交通規制を伴う「花火大会」として運営された。「水都」は「水の都・大阪」の別称、「くらわんか」は「食べないのか?」の方言だ。この地域では19年ぶりの花火大会の復活だった。コロナ禍はまだ続いていたが、約25万人の来場者を集めた。
 今年も多数の来場者を見込む。9年前の最初のイベントで75発程度だった打ち上げ数は5000発を超える規模となる。
 ただ、事故は絶対に防がなければならない。地震のような災害が起きたときの避難も重要だ。運営者側は来場者の安全確保に最も神経をとがらせている。

 ▽泣いている人

 花火の値段は高い。比較的大きな8号玉で1玉5万~6万円はする。大会の運営費は数千万~数億円かかると言われる。
 埼玉県狭山市、千葉県御宿町、岐阜県笠松町―。今年の花火大会を見送る事例が相次いだ。理由は開催経費が高騰しているためだ。警備員などの人手確保が困難になり、燃えかすに対する住民からの苦情もある。運営側が対応に追いつかなくなっている。
 資金集めに苦慮しているのは「水都くらわんか花火大会」も同じだ。
 「この地域にとっての『花火』とは思い出であり感動であり絆です。この街にとって大切なものを感じてもらう場所を創造する為に花火を上げます」
 水都くらわんか花火大会のホームページには、こう記されている。
 井関さんは言う。
 「花火を見てね、泣いている人もいるんです」
 人は花火を見上げ、花火に何かを見ている。その何かが、その人自身の思い出ということだろう。見上げた人の数の思い出が夜空に投影される。花火大会は地域の記憶そのものでもある。
 いったん中止した花火大会は、復活できるのか。それは、地域が記憶をどうつなぐかという問いかけであるようにも感じた。

  ×  ×  ×
 第3回水都くらわんか花火大会は9月15日(日)正午~午後8時に淀川河川公園の枚方地区「枚方会場」と大塚地区「高槻会場」で開催し、午後7時半から花火を打ち上げる。打ち上げ予定数は5087発。縁日や音楽祭も開く。問い合わせ先は電話072(845)6322。公式サイトでも詳細を紹介している。

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