パリ五輪彩ったあの名言。コメント力強めのアスリートたち。この夏を言葉で振り返る
47NEWS / 2024年8月19日 10時30分
「最高に楽しい6分間でした」「夢の中では70メートル投げた」「人の失敗は祈りたくない」―。パリのオリンピックでアスリートが発した言葉は、トップ選手ならではのものから、ユニークなものまでバラエティーに富んだ。
大技で奇跡的な逆転後、翌日の試合に向けて「神様は2回も助けてくれない」と自らを鼓舞し、翌日、見事に金メダルをつかんだ選手もいた。
血のにじむような鍛錬を重ねてきたからこそ、残す言葉には重みがある。オリンピアンのコメントから、パリの夏を振り返ってみよう。(共同通信=大根怜、高田成美、小田智博)
▽逆転の大技「1%の可能性を信じた」
堀米雄斗
「地獄のような3年間だった」。スケートボード男子ストリートの堀米雄斗(25)は初代王者となった東京五輪後に結果が出ず、ぎりぎりで代表に滑り込んだ。パリ最後のトリックで全選手の最高点をたたき出し、大逆転で連覇。「1%の可能性を信じて、最後に実った」と感無量だった。
北口榛花
陸上女子やり投げの北口榛花(26)は、65・80メートルのビッグスローでこの種目初の金メダルに輝いた。喜びに浸りつつ、独特なエピソードを交えてさらなる記録への挑戦を誓った。「選手村に入ってから毎日、夢の中では70メートル投げていました。夢の中で終わっちゃったものが次はかなえられるように、また頑張りたい」
次の大舞台は、来年東京で開かれる世界陸上。インタビュアーから、その場での記録更新を期待すると言われると「もうちょっと早くがいいです」と笑った。
▽演技終え、「人の失敗は祈りたくない」
目標に届かなかったからこそ、聞く人の心を動かした言葉もあった。
四十住さくら
2連覇を果たせなかったスケートボード女子パークの四十住さくら(22)は思い描いた走りができず、他の選手の結果を待つ間にこう口にした。「最後まで諦めずに、でも人の失敗は祈りたくない」
開閉会式で旗手を務めたブレイキン男子の半井重幸(22)(=ダンサー名・SHIGEKIX)は3位決定戦で敗れ「より輝いた姿を見せたかった」と悔しさをのぞかせた。
半井重幸
それでも、この競技の魅力を伝えられたという手応えはつかんだ。「ブレイキンに出会ったことで、僕の人生がいい方向に生まれ変わった。その稲妻を一人でも多くの人に、特に次世代の子たちに見せて、モチベーションを与えられたら、僕はすごく幸せ」
柔道女子52キロ級の阿部詩(24)は兄の一二三(27)と兄妹での五輪連覇に挑んだが、2回戦でまさかの一本負け。
阿部詩
客席から「ウタ、ウタ」のコールが湧き起こる中で泣き崩れた。
混合団体で1本勝ちすると笑顔が戻り、「オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない。必ずリベンジしたい」。
体操男子の橋本大輝(23)はけがで万全の状態ではない中、団体総合で金メダルを獲得。
橋本大輝
連覇を狙った個人総合は6位に終わったが「けがをしてここまで戻った。団体の金だけでおなかいっぱい。悔しい気持ちより、幸せすぎて涙が出ちゃった」とすがすがしかった。
▽神様はいじわるしたり、助けてくれたり…でも最後は自分の実力
早田ひな
卓球女子の早田ひな(24)はシングルスの準決勝直前にラケットを握る左手を痛めた。「神様にこんなタイミングでいじわるされるとは思わなかった」。テーピングを施し、痛み止めを服用して3位決定戦のコートに。フォアハンドを駆使して勝利を手にすると、しゃがみ込んでおえつを漏らした。「よく頑張った、左手」。自身をねぎらった。
レスリング女子62キロ級の元木咲良(22)は逆に、神様への感謝を口にした。準決勝で大きくリードされるも、土壇場で起死回生の投げ技を繰り出して逆転。「世界一になるために来たのに、ここで負けたらどうしようと思って。でも神様が助けてくれたのかな」と目をうるませた。そしてこう言った。「神様は2回も助けてくれないと思うので、明日はしっかり自分の実力を発揮したい」
元木咲良
翌日の決勝で見事に勝利。首から金メダルを提げると「私だけがもらうのは申し訳ないくらいたくさんの方にお世話になった。みんなに分けてあげたいような大きいメダルです」と、素朴な言葉を口にした。
コメント力が強めの元木。最後に昨年の世界選手権で敗れ、リベンジを誓っていた選手に触れた。「(彼女と)対戦することはできなかったんですけど、今までの弱かった自分にリベンジすることはできたのかなって思います」
▽「負けたのに…」勝利だけではないスポーツの価値
メダルラッシュのレスリングでは、その選手ならではの言葉も生まれた。
日下尚
男子グレコローマンスタイル77キロ級の日下尚(23)は2000年生まれ。その年のシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん(52)にあやかって名付けられた。優勝インタビューで、同じ金メダルを獲得した思いを問われると「夢を見てるようです。最高に楽しい6分間でした」と満面の笑み。高橋さんのシドニーでの名言「すごく楽しい42キロでした」を、24年後にパリで受けて見せた。
金メダルの大本命だった女子50キロ級の須崎優衣(25)は初戦で苦杯をなめた。「みんなの努力も無駄にしてしまった。申し訳ない」と絞り出した。
気持ちを切り替えて手にした銅メダル。「オリンピックチャンピオンの須崎優衣じゃなかったら価値がないと思っていた。負けたのに信じてくれて、励ましてくれた方に感謝したい」。勝利だけではない、スポーツの価値を表す言葉だった。
須崎優衣
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