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逆方向への長打より得意だったもの。サインを出されて役割を実感・井口資仁さん 野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(42)

47NEWS / 2024年9月18日 10時0分

2004年9月の日本ハム戦でサヨナラ本塁打を放ち、ガッツポーズの井口資仁さん=福岡ドーム

 プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第42回は井口資仁さん。ダイエー(現ソフトバンク)打線の中軸に座り、大リーグでワールドシリーズ制覇を経験。ロッテで日本復帰し、42歳まで現役を続けました。中堅から右方向への長打が印象的な右打者でしたが、もっと得意だったものがあると教えてくれました。(共同通信=栗林英一郎) 

 ▽木製バットと体力がマッチした結果の三冠王


1996年6月、全日本大学選手権の東北福祉大戦で本塁打を放つ井口資仁さん=神宮

 小学校の少年野球までは捕手で、リトルリーグに入ってから内野手ですね。プロは目指してましたけど、あまり練習のきつい高校へは行きたくないし、文武両道っていう形を考えて東京・国学院久我山高へ。寮のある高校にも行きたくなかったので、通えるというところで選択しました。僕らの時代でも10年に1回ぐらいはプロへ行く選手が出るペースの学校ではありましたんで。(2年時の夏の甲子園大会出場は)練習時間もかなり短いし、こんなんで甲子園に行っていいのかなって思ってましたね。

 高校時代もプロから誘いは頂いてたんですけど、金属から木製のバットに変わって苦しんでる人がかなりいたんで、大学でしっかり木製に慣れてからプロに行きたかった。それと、ちょうど僕が大学4年の時にアトランタ五輪があるので、高校の時に着ることができなかったジャパンのユニホームを何とか着たいっていう思いがありましたね。

 青山学院大では1年の春に打率3割3分3厘打って、1年の秋が2割、2年の春が1割ぐらいだったんですよ。自分の中で何か変えないとプロにも行けないだろうと思っていました。2年春のシーズン中からですかね、ウエートトレーニングをやり出して、秋から木のバットと体がマッチしてくるようになり、急にホームランが出るようになりました(2年秋の東都大学リーグは打率3割4分8厘、8本塁打、16打点で三冠王を獲得)。4年間でリーグ歴代最多の通算24本塁打を記録したとはいえ、神宮球場は良い風がずっと吹いてるんで、打球を上げればスタンドに入る。ホームランバッターっていう認識は全くなかったです。広角に外野を越える中距離ヒッターだと思ってました。

 ▽打率3割4分でも首位打者を取れなかった


2002年4月の西武戦で井口資仁さんは右越えに本塁打=西武ドーム

 当時のドラフトは逆指名制度があり、いろんな球団から話がありました。ダイエーはそこまで強くなかったですし、やっぱり強いチームに行くんじゃなくて、弱いチームを強くしたかった。その中で自分がしっかりとレギュラーを取って試合に出たいという思いがあったんで、ホークスを選ぶことになりましたね。福岡もかなり都会ですし、非常に温かく迎え入れてもらった感じでした。

 プロ5年目の2001年から打撃成績が伸びた要因はタイミングの取り方ですかね。王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)に風呂場でばったり会って、何で一本足打法にしたとか、どういうタイミングの取り方をしたとか、そういう話を素っ裸で教えてもらった記憶があります。その後、スコアラーで来られた金森栄治さんの打撃理論が僕に合ってたかなと思うんです。体の使い方を結構言ってくるんですよ。どうやったら力が一番伝わりやすいか、いろんな例を出してくれた。何でお母さんは子どもを長く抱っこできるのか、重い鉄の扉を開ける時はどうやって開けるんだとか、いろんなヒントをくれながら「やっぱりちょっと脇が締まってるよね」と。
 そうすると打つポイントがだんだん近くなった。前で打てって言われていたのが、奥行きが出てくる。真っすぐは近くで打てるし、変化球は前で拾える。嫌な球がなくなってくるんですよね。真っすぐを一番近いポイントでファウルできるように待っておけば、後は何とでもなるって思えるんで、追い込まれても全然嫌じゃなかったです。スイングする力、体の力がある人じゃないとできないですが、それを僕はできたので、金森さんの考えに合ったのかなと思います。

 右方向に強く打てる長所がありましたが、どうしても福岡ドームっていう(ホームランテラス設置前の)広い球場が引っ張らせてしまっていたんで、自分の中で原点に戻れた。なおかつ力が付いてきて、福岡ドームでもフェンスに当たったり越えたりっていう打球が出るようになってきた。自信を持って90度を目いっぱい使って打てるようになったってところですかね。
 2003年は3割4分を打ち、普通だと首位打者が取れるはずなんですけど、その年はガッツさんかな(日本ハムの小笠原道大が3割6分で首位打者)。僕は4位だったんです。そういう時代でした。109打点、112得点とかしているんですけど、あんまり目立たなかったですね。42盗塁で盗塁王ですけどね。だってダイエーのチーム打率が2割9分7厘ですから。100打点以上が4人(井口さんの他に松中信彦=123打点、城島健司=119打点、バルデス=104打点)。大リーグに行った吉田正尚みたいなのがいっぱいいた。

 ▽つなぎ役の気持ちが理解できたメジャー時代


2005年10月、ワールドシリーズへ向けた練習でキャッチボールをする井口資仁さん=USセルラー・フィールド

 大リーグでは、それなりにできたとは思いますけど、けががあり、成績も出なくて日本に帰ってくることになったんで、全然成功したとは思ってないですね。特にホワイトソックスは、いろいろ(打席での)制約があったので。でも、チームが勝つためにですし。契約時に2番バッターって言われ、それでも入団したんで。2番をこなさないと僕の仕事じゃないと割り切りました。そのおかげでチャンピオンリングをもらえましたし、感謝しなくちゃいけない。
 つなぎ役は自分が思い描いていたところと違った部分はありました。もっと自由にできたら、もう一度やり直せるんだったらっていうのはありますけどね。ただ、そういう役割も野球にはあるんだと知るきっかけになりました。ホークスの時もロッテの時もそうですけど、サインなんかほぼ出ない選手だった。2番の人とか8番、9番の人って結構こういう思いをしながら野球をやってんだなって。一球一球、ああ次はこうなんだって。これは指導者になって生きたんじゃないですか。


2017年9月、引退セレモニーでファンにあいさつする井口資仁さん=ZOZOマリン

 日本に34歳で戻って、まだまだ体が動けました。マー君(田中将大)がいてダルビッシュ有がいて、4年間でこんなに変わるんだっていうぐらい、すごいピッチャーが出続けてきたんだなって思いました。それもまた、対戦が楽しみではありましたけどね。
 (2割9分7厘の)2013年は最後の頑張りだったんじゃないですか。日米通算2千安打の年です。一番気合入ってた時ですね。2017年の引退時は、やっぱりシーズンを通して出て、しっかり成績を残して終われたら最高だったかなと思います。ただ、チーム状況がかなり良くなかったので、早めに身を引く形になりました。

 ▽良いことも悪いこともリセットできる長所


2013年7月の楽天戦で井口資仁さんは本塁打を放って日米通算2千安打を達成=Kスタ宮城

 2千安打を打ちたいっていう目標はあったんですが、数字的に結構遠いなとは思ってましたよね。年間150本とか打たないと2千は抜けないんで。フォアボールも取ると3割近く打たないと150本を超えないですし、それでも10何年かかるわけじゃないですか。程遠い数字だなと思いながら、いつの間にか、あと何本っていう感じですかね。30歳を超えても、ずっと試合に出ていないとやっぱり無理ですよね。

 プロ入りして4年目ぐらいまで足首の捻挫だったり肩の手術だったり、けがを繰り返してたんで、1月の自主トレーニングをものすごく大事にしてました。そこでどれだけ貯金をつくるか、2月のキャンプ含めて1年間持つ体ができるかが分かってきたので、1月は追い込みました。基本的には走り込みばっかり。球団のトレーナーやトレーニングコーチ、いろんな専属の人がつくってくれる練習メニューが20何年と重なって、よりボリュームアップしていきました。


インタビューに答える井口資仁さん=2022年11月撮影

 食事とかあんまり気を付けたことはないです。どちらかっていうと、もう毎日満タンにするぐらいのガソリン(お酒)。でも、本当に自分の一番の得意はオンオフがしっかりしてること。良いことも悪いこともリセットして、次に入っていけるっていうのが長所。お酒を飲みながら「はい明日」みたいなことか多かったですね。切り替えというのは非常にしっかりできた野球人生だったかなと思いますね。

 ×  ×  ×
 井口 資仁氏(いぐち・ただひと)東京・国学院久我山高―青学大から1997年にドラフト1位でダイエー(現ソフトバンク)に入団し、99年と2003年の日本一に貢献。米大リーグ、ホワイトソックス移籍1年目の05年にワールドシリーズ制覇を経験した。09年にロッテで日本復帰。名球会入り条件の日米通算2千安打は13年7月に到達。17年に現役を引退し、18年からロッテ監督を5季務めた。74年12月4日生まれの49歳。東京都出身。

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