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対ウクライナ侵攻長期化の中、ロシア国民3割超が核使用容認 高まる攻撃論、意識変容の背景にあるものは?

47NEWS / 2024年9月15日 10時0分

ロシア北西部プレセツクから発射されたICBM=2022年4月(ロスコスモス提供、AP=共同)

 ロシアのウクライナ侵攻が長期化するにつれ、核使用に対するロシア国民の意識にも変化の兆しが出ている。政府自らが戦術核使用の準備とも取られる動きを見せ、その使用を否定しない姿勢を示していることが影響している可能性がある。背景を探った。(共同通信=太田清)

 ▽独立系調査機関


ロシア極東のボストチヌイ宇宙基地で演説するプーチン大統領=2022年4月(ロシア大統領府提供、ロイター=共同)

 ロシアの独立系世論調査機関レバダ・センターは7月4日、前月行われたウクライナ侵攻に関する世論調査結果を発表。設問の一つはウクライナ侵攻を巡り「ロシアによる核兵器使用は正当化されるか」というものだった。
 「明確に正当化される」10%、「どちらと言えば正当化される」24%を合わせ、核攻撃を支持するとした回答は全体の3分の1の34%に上り、前回の昨年4月の同様調査と比べ、5ポイント上昇。


 一方、「明確に正当化されない」31%、「どちらかといえば正当化されない」21%を合わせ、否定的な意見は52%に上ったものの、前回調査に比べると4ポイント低下し、核兵器使用を容認する国民が増えている傾向をうかがわせた。
 特徴的な点として、プーチン大統領支持・不支持層で分けると、支持層は36%が核攻撃を支持しているのに対し、不支持層は21%にとどまった。
 レバダ・センターは国家の財政支援を受けていない世論調査機関で、2016年にはスパイ機関とほぼ同義の「外国の代理人」に指定されロシア国内での活動が大きく制限されるなど、政府広報とは一線を画し、比較的客観的な調査を行っていると評価されている。
 同様の調査は、別のロシアの独立系世論調査機関ロシアン・フィールドも実施していた。
 「ウクライナでの勝利のため必要であれば核兵器使用は許されるか」との設問に対し、「許されない」との回答が73・9%を占めた一方、「許される」10・5%、「敗北の危機にある場合のみ許される」5・2%と、核攻撃支持は計15・7%にとどまったが、調査は昨年6月と、1年以上前のもので、これ以降、同様調査は行われていない。

 ▽政治プロセス


ロシア国防省が7月31日に発表した、戦術核兵器の使用を想定した演習に参加する大型車両(国防省提供・共同)

 核攻撃について、レバダ・センターは、なぜ攻撃を支持するのかについて回答者に聞いておらず、その理由を明確にしていない。
 一方で、ロシアはこの1年、同盟国への戦術核配備を進め、核使用を想定した軍事演習も実施。国内ではウクライナ侵攻を巡り核使用を求める声も相次いだ。
 前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長ら強硬派が欧米に対する核攻撃の威嚇を繰り返す中、特に注目を集めたのが、政府系シンクタンク、外交・軍事政策評議会の名誉会長セルゲイ・カラガノフ氏が昨年6月、週刊誌プロフィルに発表した論文だ。
 同氏は欧米によるウクライナ支援をやめさせ、ロシアが最終的に勝利するために限定的な核使用もやむを得ないとの考えを提唱、大きな波紋を呼んだ。
 一方、プーチン大統領は昨年3月、隣国の同盟国ベラルーシに戦術核を配備すると表明。同6月には第1陣を搬入したことを明らかにした。


5月23日、ベラルーシを訪問しミンスクの空港でルカシェンコ大統領(左)の出迎えを受けるロシアのプーチン大統領(ロシア大統領府提供・タス=共同)

 また、ロシア国防省は今年5月、侵攻の拠点となっている南部軍管区で軍事演習を開始。演習には核弾頭搭載可能な弾道ミサイルを運用する部隊が参加。空軍部隊が極超音速ミサイルに「特殊弾頭」を装備して出撃する訓練も行うなど戦術核使用を想定した内容となっている。
 ロシアはさらに、現在は大量破壊兵器による攻撃を受けた場合や、「国家存続の危機」に立った場合のみ核攻撃を行う権利があると規定している軍事ドクトリンを改め、核使用の敷居を下げる動きも見せている。プーチン大統領が今年6月、国際経済フォーラムで見直しの可能性に言及。その後、大統領報道官が見直し開始を公式に認めた。
 侵攻の長期化や前線での膠着(こうちゃく)、ウクライナ軍によるロシア国内の攻撃などに加え、こうした動きが国民の意識変容に結びついている可能性もある。
 米誌フォーブス・ロシア語版は昨年6月、「これまでは核使用の論議は極端な思想を持つ人に限られていたが、今や一般の専門家が論じ始めている。次の段階は、核問題を社会的空間や政治プロセスに移すことで、これはあり得ないことではない」と警告する論文を掲載していた。

 ▽英独も

 核に対する意識が変容しているのはロシアだけではない。
 ドイツは米国の核兵器を国内に受け入れ共同運用する「核共有」に参加しているが、伝統的に非核世論は強く、ウクライナ侵攻前の2021年に誕生したショルツ連立政権は、先進7カ国(G7)では初めて核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を表明するなど非核色の強い政策を進めた。
 しかし、ウクライナ侵攻後に世論は一変。ドイツ公共放送NDRが2022年6月に公表した世論調査で、52%のドイツ人が米国の核兵器配備継続を支持した。支持が過半数となるのは同調査で初めてだという。
 また、「終末時計」計測で有名な米誌ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツによると、核兵器廃絶を目指す科学者らの国際組織「パグウォッシュ会議」英国支部などが昨年1月に行った世論調査で、核保有を支持する英国人の3分の2が、ロシアのウクライナ侵攻で支持の気持ちが強まったと回答。一方、核保有に反対していた人の16%は、侵攻後に保有支持に意見を変えたと回答した。

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