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「プロ野球90年」家族3代巨人ファン、女流棋士・矢内理絵子さんが語る野球の魅力 「将棋では絶対に味わえない盛り上がり」

47NEWS / 2024年9月21日 10時30分

インタビューに答える女流棋士の矢内理絵子さん

 発足から90年を迎えたプロ野球への思いを聞くインタビューシリーズ。家族3世代で巨人ファンという女流棋士、矢内理絵子さんが、将棋の世界から見えるプロ野球の魅力を語ってくれた。(聞き手 共同通信・小海雅史、児矢野雄介)

 ▽将棋にはない連帯感


2012年の日本シリーズを制し胴上げされる巨人の原辰徳監督=東京ドーム

 両親がジャイアンツファンで、父は長嶋茂雄さんを応援する世代。母は吉村禎章さんが好きだったようです。野球というとジャイアンツが身近にありましたし、後楽園球場にも見に行きました。私は将棋を始めてからはテレビを見ない生活になりましたけど、それ以前はしょっちゅうジャイアンツ戦の中継を見ていました。
 棋士になってからもよく東京ドームに行っています。有料のファンクラブ会員だったときもあって、仲のいい女流棋士を誘って一緒に応援していました。阿部慎之助さんの応援のコールは盛り上がりやすかったですね。全然知らない人と「やったー」みたいにハイタッチできる。非日常の雰囲気がすごく好きです。2012年に巨人が日本一を決めた試合を見に行けて、「すごい!」と全身に鳥肌が立つぐらい、将棋では絶対に味わえないような大盛り上がりでした。


 将棋は基本的に個人の勝負なので、同じ一門でも対局となれば全力でたたきつぶしにいきますし、勝ったときにみんなで喜べるということはなかなかありません。チームスポーツの連帯感はうらやましいですね。ピンチになると、コーチや内野手の方がピッチャーのところに来て、ちょっと声を掛けたりするじゃないですか。将棋にもコーチのような存在がいてくれたらいいのになとよく思います。

 ▽親しみやすいお兄さん


巨人・中畑清の打撃フォーム=1988年4月、東京ドーム

 中畑清さんはキャラクター的にすごく明るくて、子供にとっても親しみやすかった。コマーシャルにもよく出ていて、すごく元気なお兄さん。チャンスに強いイメージで、応援しがいがありました。DeNAの監督をされていたときは印象が全然違いましたね。子どもの頃に見ていた底抜けに明るい雰囲気とは違って、やっぱり風格が出るなと思っていました。ラジオで共演させていただく機会があって、お会いしたら昔の印象のままで、オンとオフの差はすごいなと思いました。
 現役では長野久義選手が好きです。「いい人」のエピソードしか聞いたことがないし、真面目に頑張って取り組んでいる感じが応援したくなっちゃいますね。

 ▽野球にも大局観


「慧眼」と書いた色紙を手にする女流棋士の矢内理絵子さん

 棋士は色紙に座右の銘を書く機会が多いのですが、物事の本質を見抜くという意味の「慧眼」という言葉が最善手を追求していく将棋にぴったりで、大切に書き続けています。野球でも見誤ってはいけないものはあると思うんですよね。
 目に見えない「流れ」があるのは野球も将棋も一緒。タイトル戦で追い込まれても、一局勝てたらそこから連勝できたり、いい流れで指せている時に席を立ってしまったがために、余計なことを考えて失敗したりということがあって、一手を境にいきなり流れが変わってしまうということを感じます。野球でもダブルプレーやバント失敗で流れが変わることが、勝負の分かれ目になるんじゃないでしょうか。試合が終わるまで油断しちゃいけないし、負けそうな時も、最後まで何が起こるかわからない。
 ジャイアンツの原辰徳・前監督と対談したことがありますが、チーム全体の最善を考える大局観が大事なのだと感じました。それぞれの選手の特性を考え、その日の調子も見ながら、すごく戦略を練っているんだろうと思います。分からないなりに「次はこうかな」と配球を読みながら見ることもあります。

 ▽長男も夢中


5月30日のソフトバンク戦で2ランを放った巨人・岡本和真=東京ドーム

 小学3年生の長男は岡本和真選手のファン。やはりホームランバッターはヒーローになりやすいですね。シーズンが始まると、手が付けられないぐらい野球にのめり込んでいます。今のジャイアンツのユニホームは背番号の上に名前がないので、新しく出てきた若手の選手が分からなかったりすると、息子が全部教えてくれます。順位とか打率とかのデータも、すごく調べているんですよ。iPad(アイパッド)を使って勉強するふりをしていて、近づいたら野球の動画を見ています(笑)。
 テレビ中継やネットの配信があるので、身近なんでしょうね。よく公園で選手のまねもしています。この間は阪神の近本光司選手をやっていました。右利きなので左で構えても打てないんですけど、まねだけはするんです。実際には選手は遠い存在だけど、近くに感じられてのめり込めるんだろうなと思います。
 息子はジャイアンツが負けていても「ヒットを打って、ヒットを打って、最後に岡本選手がホームラン打てば」って夢みたいなことを言うんですけど、そういうことが想像できるだけでも楽しい競技ですよね。

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