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〝安い日本〟京都の宿泊客の7割は外国人!日本人には近くて遠い観光地になるのか?

47NEWS / 2024年9月13日 10時30分

訪日客らでにぎわう京都市内=6月

 円安による恩恵を最も受けている業界の一つが観光だ。外国人に人気の目的地、京都市のホテルに宿泊するインバウンド(訪日客)の割合は過去最高の水準で推移している。4月には7割を超え、5~7月も6割以上の状態が続く。宿泊料金は値上がりしているが、円安により、訪日客にとって日本の物価は割安に映る。

 その半面、日本人には手が届きにくくなっている。利用をためらってしまうような料金になっていたり、泊まりたいホテルはすでに予約で満杯だったり。お目当ての観光地として支持されてきた京都は、日本人にとって〝近くて遠い存在〟になってしまうのだろうか。(共同通信=小林磨由子)


二条城を訪れる訪日客ら=6月、京都市内

 ▽日本人はちらほら

 8月下旬、JR京都駅近くの高級ホテルを訪ねてみた。フロント近くから英語や中国語の会話が聞こえる。バイキング形式の朝食会場はほぼ満席。日本人の姿もちらほら見えたが、8~9割は訪日客のようだった。

 英語のガイドブックを片手にパンをほおばる男性、頭部にベールを着けた姿でコーヒーを飲む女性、大人数で食卓を囲む家族。それぞれが朝の時間を楽しんでいた。

 京都市観光協会が市内のホテル110軒以上を対象にした調査によると、4月の延べ宿泊数に占める訪日客の比率は70・1%。調査対象のホテル数は変わっているが、2014年の統計開始以降で最も高い割合となった。

 5、6月も6割を超え、7月は66・2%で4月に次ぐ高水準だった。国別でみると、4~6月はアメリカが最多で、2位は中国。7月には中国が3割を超えてトップになった。


訪日客らで混雑するJR京都駅前=6月

 ▽宿泊料金はコロナ禍前に比べ3割高

 物価高や人件費の上昇などにより、ホテルの宿泊料金も上がっている。7月の平均客室単価は1泊1万8147円で、前年同月に比べると7・8%上がった。新型コロナウイルス禍前の2019年7月と比べると、29・9%も高い。ちなみに、今年4月の平均客室単価は2万4406円だった。

 それでも円相場が各国通貨に対して軒並み下落したことで、訪日客にとっては割安感がある。市観光協会でマーケティング部門を統括する堀江卓矢さんは「単価の高いホテルほど訪日客の宿泊比率が高い傾向にある」と話した。

 8月下旬には、清水寺からもほど近い場所に海外富裕層を意識した高級ホテルが開業したばかり。今後も外資系ホテルの進出が予定されており、訪日客の囲い込みが加速している。


 ▽国内顧客にも心配り

 「ロビーもレストランも外国かと錯覚するほどだった」。京都市中心部にあるホテル日航プリンセス京都のスタッフは4月をこう振り返った。

 昨年春から訪日客が増え始めたという。光熱費や人件費の上昇に伴い、客室料金をコロナ禍前よりも15%ほど引き上げた。それでも海外からの利用者は多く、今年4月の訪日客比率は過去最高の6割に達し、その後も高い水準が続く。

 高まる需要に応えるため、7月からホームページを多言語対応にした。レストランでは訪日客向けメニューの開発に余念がない。語学力の強化などスタッフのスキル向上にも力を入れる。


訪日客向けにリニューアルしたホテルの客室=9月6日、京都市内

 そんな中でも、日本人客への心配りは忘れない。「コロナ禍でホテルを支えてくれたのは国内のお客さまだった」。値段を上げても、これまで以上に心のこもった接客に努める。「国内の顧客も大事にしながら、海外からも一層の集客を図りたい」。ホテルのマーケティング部門でマネジャーを務める喜多見ゆりさんはこう話した。

 ▽やはり強い訪日客の消費マインド

 こんなデータもある。京都市が毎年まとめている「京都観光総合調査」によると、2023年の宿泊者の平均観光消費額単価は日本人が6万3986円だったのに対し、訪日客は8万7208円。内訳をみると、宿泊代は7千円近く、買い物代では1万円近くも訪日客の方が多くお金を使っている。

 その強い消費マインドにも支えられ、2023年の観光消費額は過去最高の1兆5366億円に達した。最近では、京都市内の四つの百貨店の免税売上額が今年4月に50億円を突破。円安の追い風で好調が続き、5月以降はコロナ禍前の2019年に比べて3倍以上の伸びとなっている。

 
 オーストラリアから新婚旅行で日本に来たという夫婦は「日本はいいことばかり。今は物価も安いしね」と話した。9月は中国の人たちが家族で月見を楽しむ中秋節、10月には建国記念日の国慶節といった連休が控えている。観光消費額をさらに押し上げそうだ。


ホテルでチェックインする夫婦。新婚旅行でオーストラリアから訪れた=9月6日、京都市内

 ▽オフシーズンの観光を呼びかけ

 ホテルの稼働率はコロナ禍前の水準に戻りつつある。京都市観光協会の予測値では、10月には85%を超える見込みだ。訪日客の増加で平日の稼働率も上がっているという。

 市観光協会でマーケティングを担当する堀江さんは「訪日客は早くから予約するため、日本人が予約しようと思ったときは、もう目当てのホテルに空きがないことも多い」と話す。宿泊料金の高騰に加え、泊まりたいホテルが取れず、観光を諦める人も少なからずいるという。

 日本人にとって、京都は足が向かいにくい観光地になってしまうのだろうか。堀江さんはこう続けた。「4月や11月といったピークシーズンを避けて京都に宿泊するケースも増えている」

 2023年の京都観光総合調査でも明らかになっているが、京都に来る日本人の半分以上は訪問回数10回以上のリピーターだ。シーズンにこだわらない楽しみ方を知っている人も多い。

 オーバーツーリズム(観光公害)の問題が指摘される中、京都市は閑散期の誘客や分散型の観光を進めるなどの対策を取っている。日帰りする日本人が多い中、宿泊料金が高くても泊まりがけで観光したくなる魅力的な京都への進化が求められている。


伏見稲荷大社の連なる鳥居。訪日客に人気の撮影スポットになっている=8月21日、京都市

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