少子化対策の財源確保が争点、負担増に論戦欠かせず 歯止めかからぬ一極集中、予算倍増にばらまき批判も【衆院選2024】
47NEWS / 2024年10月17日 10時30分
10月27日投開票の衆院選では、政府が「次元の異なる」とうたう少子化対策の財源確保策が焦点となる。石破政権は前政権を引き継ぎ、医療や介護など社会保障費の歳出削減や、公的医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金」で賄う方針だ。国民の負担増につながるだけに、与野党の本格的な論戦が欠かせない。
また、人口減少と東京一極集中に歯止めがかからず、多くの地方が苦しんでいる。石破茂首相は、自治体への交付金を当初予算ベースで倍増させると表明したが、まだ具体策には乏しく「ばらまき」との批判も上がる。衆院選では、地方をどう再生するか、各党の対応が問われる。(共同通信=芦沢昌敏、筋野茜)
▽メニュー
「人口減少は国の根幹に関わる課題だ。こども未来戦略を着実に実施する」。首相は10月4日の所信表明演説で、こう強調した。
前政権が策定したこども未来戦略に基づく少子化対策関連法が6月に成立。児童手当や育児休業給付の拡充などを行う。
実現には最大で年3兆6千億円の財源が必要となる。確保策の一つが社会保障費の歳出削減で、2028年度には1兆1千億円を見込む。
削減の具体的なメニュー案として政府は、医療費窓口負担が3割となる高齢者や、介護サービスの自己負担が2割となる人の対象拡大を挙げる。実施の可否を2028年度までに判断する。
他に、医療費が高額になった際、毎月の自己負担額を一定にとどめる「高額療養費制度」を見直し、負担額の上限引き上げを検討。介護サービス利用時に作成する「ケアプラン」(介護計画)の有料化の是非を2026年度末までに判断する。
▽隠れ増税
これまでも議論の的となったが結論を先送りした項目もある。政府関係者は「財源確保には痛みを伴う改革が必要だ」と強調する。
首相は所信表明で「社会保障全般を見直し、安心してもらえる制度を確立する。時代に合った社会保障へ転換する」と語った。だが何を、いつ、どれだけ切り込むのか具体的な説明はなかった。
財源を捻出するための支援金は、2026年度から徴収する。負担額は加入する公的医療保険や収入で異なり、政府の試算では月50~1650円と幅がある。
支援金には批判が根強い。立憲民主党の野田佳彦代表は、9月の代表選時の共同通信アンケートで「隠れ増税」と指摘。10月7日の衆院代表質問では、野党が「現役世代のさらなる負担になり、本末転倒だ」(立民の吉田晴美氏)と主張したのに対し、首相は「説明を尽くす」と述べるにとどめた。
▽原点
「もう一度原点に返り、地方創生をリニューアルしてやっていきたい」。石破氏は10月1日の首相就任会見でこう力説した。地方創生の交付金を当初予算ベースの1千億円から倍増し、中央省庁の地方移転や地域交通の確保を進める方針だ。「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、今後10年間の基本構想を策定する。
▽焼き直し
2014年5月、「日本創成会議」の記者会見で人口減少の予測について説明する増田寛也元総務相
地方創生が本格化したのは、第2次安倍政権下の2014年。民間団体「日本創成会議」が全国896自治体を「消滅可能性都市」として公表したのがきっかけだった。
安倍晋三首相(当時)は「まち・ひと・しごと創生本部」を新設し、初代担当相の石破氏を中心に、地方移住の促進や地方大学の活性化などに取り組んだ。ただ中央省庁の地方移転は文化庁の京都移転などごく一部が実現しただけで進んでいない。このため「成果が上がらなかった政策を焼き直すのか」といった声も上がっている。
2014年9月、「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掛ける安倍首相(右)と石破地方創生相(いずれも当時)=東京・永田町(代表撮影)
東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)では2023年、転入者が転出者を上回る「転入超過」が前年比約2万7千人増の約12万7千人。新型コロナウイルス禍で一時減ったものの、収束後は就職や進学に伴い若者が東京に集中する傾向が再び加速している。
▽露骨
政府は今年6月に地方創生10年間の検証を公表。地方への移住者増加など一定の成果はあったとしつつ「人口減少や東京圏への一極集中の大きな流れを変えるに至らなかった」と総括した。
地方からは交付金の倍増を歓迎する声もある一方、ある政府関係者は「政策の議論もせず、露骨な選挙対策のばらまきだ」とあきれる。
野党も特色ある対策は打ち出せていない。ある東海地方の市長は「与野党とも既視感のある対策ばかりで、期待外れだ」と冷ややかに見る。
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