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45人死傷の植松死刑囚が色紙いっぱいに描いた作品 死刑囚15人の心境や性格を垣間見る表現展

47NEWS / 2024年11月2日 9時0分

植松聖死刑囚の「大麻①」

 死刑囚は何を考えているのか。どんな性格なのか。それらを垣間見る機会になるかもしれない。15人の死刑確定者の絵画などを展示する「死刑囚表現展 2024」が11月2~4日、東京都中央区の松本治一郎記念会館で開かれる。2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を殺傷した植松聖死刑囚(34)も出展している。(共同通信編集委員=竹田昌弘)

 ▽「大麻」「福祉制度」などと題する色紙9点
 主催団体によると、表現展は2005年から毎年開催し、今年は20回目となる。入場無料で、今回は死刑確定者15人の応募作計426点を展示する。中には、ペンネームの死刑囚もいる。

 植松死刑囚は2020年から毎年応募している。過去には多くの顔がある観音像のような人物画や頭蓋骨を爆発させた絵もあった。やまゆり園の事件をテーマに描いた絵の応募を巡り、収容先の東京拘置所側ともめたことから、昨年は黒の文字を色紙いっぱいに書いたものになったという。

 今年も昨年と同様の色紙が9点。今回は黒い文字の上から赤や青などの色を付けている。「大麻」「福祉制度」などのタイトルが付けられた色紙では、私見を展開している。「大麻の薬効」「生産性がない」「優生思想」といった言葉が記され、裁判で「(大麻は)本当にすばらしい」「意思疎通できない人間は安楽死させるべきだ」などと主張したときから心境の変化は全くうかがえない。

 ▽異なる拘置所在監の兄弟死刑囚が共同制作


井上孝紘死刑囚の「ペーパーファッション・タトゥー」

 2004年に福岡県大牟田市で母子ら4人が殺害された事件の井上孝紘死刑囚(40)=旧姓北村=は「ペーパーファッション・タトゥー」と題する作品を出展する。「説明書」通りにすれば、体に転写できる般若などの絵を送ってきた。主催団体で試すと、確かに転写された。「南総里見八犬伝 八犬士犬飼権八信道と唐獅子」などは、昨年の表現展を訪れた人がアンケート用紙でリクエストしたのに応えた絵という。


井上孝紘死刑囚の「説明書」

 福岡拘置所に在監されている井上死刑囚が線で表現した「筋絵」を描き、同じ事件で死刑が確定し、大阪拘置所に収容されている実兄の北村孝死刑囚(43)が色を入れた「Maria」も展示される。面会を許されている人が筋絵を受け取り、それを孝死刑囚に差し入れたことで実現したようだ。裁判では、孝紘死刑囚が罪を認める一方、孝死刑囚は無罪を主張。審理は一審から分離され、拘置所も異なる兄弟の共同制作は初めてだという。


北村孝死刑囚、井上孝紘死刑囚の「Maria」

 西口宗宏死刑囚(63)の「日日是〝辛〟日(真実)・合掌」には、亡霊に苦しみ、頭を抱える男と合わせた手が描かれている。西口死刑囚は、2011年に堺市で元象印マホービン副社長ら2人がそれぞれ殺害された2件の強盗殺人事件で、19年に死刑が確定した。確定前は表現展の常連だったが、確定後は作品が途絶え、今年の5点は久しぶりの応募となった。


西口宗宏死刑囚の「日日是〝辛〟日(真実)・合掌」

 ▽再審請求中の2人、「原爆画」や鳥の絵
 熊本県免田町(現あさぎり町)で1979年、女性が殺害された事件で死刑が確定したが、無実を訴えて再審請求中の金川一死刑囚(74)は逮捕から45年間、獄中で過ごしてきた。今年の「広島原爆画」には、赤いキノコ雲とともに、黒い文字で「平和世界 へいわなせかいでありますように」などと書かれている。


金川一死刑囚の「広島原爆画」

 同様に冤罪を主張し、再審を請求している風間博子死刑囚(67)は、1993年の埼玉の愛犬家ら連続殺人事件で死刑が確定した。絵画3作の一つ「命 弍〇弍四の壱」は、選考委員のアーティスト、小田原のどかさんが「(鳥は)何かを参考にして描いているわけではたぶんなくて、ご自分の記憶の中を探りながら描いているのだと思うんですけれど、元々ものすごく描写力がある」と評したという。


風間博子死刑囚の「命 弍〇弍四の壱」

 「東西南北」というペンネームの死刑囚は、方眼紙に描いた動物などの絵を初めて応募してきた。300点を超えるレポート用紙の応募作が展示される山田浩二死刑囚(54)は、大阪府寝屋川市で2015年に起きた中学1年男女殺害事件で死刑が確定した。「僕から山田広志についての報告『広志へ…。』」と題する絵では、喪服を着た男性が遺影を抱えている。この遺影は、山田死刑囚と養子縁組をした後、昨年12月に膵臓がんにより49歳で亡くなった山田広志元死刑囚(旧姓松井)という。


ペンネーム「東西南北」の作品。「子犬たち」(左上)、「熊」(右上)、「カワセミ」(左下)、「ブグロー(アムールとプシュケー、子供たち)」(右下)


山田浩二死刑囚の「僕から山田広志についての報告『広志へ…。』」

 ▽主催は「大道寺幸子・赤堀政夫基金」
 死刑囚表現展は、1974年の連続企業爆破事件で死刑が確定した大道寺将司元死刑囚(2017年に病死)の母幸子さん(2004年に死去)が残した資産で創設された基金の主催でスタートした。1954年に静岡県島田市で幼女が殺害された事件で死刑を宣告されたものの、再審で無罪となった赤堀政夫さん(今年2月に死去)からも2014年に資金の提供があり、現在の主催は「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」となっている。

 今年の開催日時は11月2日(土)午後1~5時半、3日(日)午前11時~午後7時、4日(月)午前11時~午後5時。東京都中央区入船1-7-1、松本治一郎記念会館の5階会議室が会場となっている。問い合わせは、共催の「死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90」(電話03-3585-2331、港合同法律事務所)まで。

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