米大統領選の行方、数字の魔力に予断禁物、2016年は大外れ 専門家は「推移が重要」【ワシントン報告㉒世論調査】
47NEWS / 2024年11月3日 10時30分
11月5日の米大統領選が迫り、連日のように各種世論調査が発表されている。情勢が定量的に示されるため説得力を持つが、数字の魔力という面がある。しょせんは調査時点を切り取った断面に過ぎず、予断は禁物だ。富豪トランプ氏が大統領選を制した2016年選挙は世論調査の見通しが大きく外れた。専門家は各種調査結果の推移や変化の在り方が重要だと見る。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕)
▽どちらが優勢とは報じられず
共和党のトランプ前大統領と民主党のハリス副大統領のテレビ討論会を見守る報道陣=2024年9月10日、米ペンシルベニア州(AP=共同)
ニューヨーク・タイムズ紙が2024年10月25日に発表した全米世論調査結果では、民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領が同じ48%で並んだ。調査は10月20日~23日、2516人を対象に電話で実施した。世論調査大国の米国において、信頼性が高い調査の一つに挙げられる。
世論調査の数値は面接などを通じて得られた生のデータを独自の計算方法で処理して発表される。当然、誤差が含まれ、今回はプラスマイナス2・2ポイントとはじいた。同じ48%であっても、実際には数ポイントの差があり得ることを意味する。
選挙報道に強いAP通信は「誤差の2倍以上の差がつかないと、優勢とは報じない」を基準にしている。選挙ではメディア各社が当選確実の報道を急ぐが、全米に記者を配置しているAPの判断が最も重視される。
▽誤差が大きい州単位の調査
両候補を映したCBSテレビの選挙番組の画面を見る市民=2024年10月15日=米アラスカ州(AP=共同)
今回の大統領選は激戦7州次第で勝敗が決まる。全米より州ごとの数字が重要だが、誤差は州単位の方が大きい。理由の一つは精度の高い電話よりもインターネット調査の割合が多い点にある。
米世論調査協会(AAPOR)によれば、2020年大統領選では世論調査と実際の得票の差が全米レベルで4・5ポイントだったのに対し、州レベルは5・1ポイントだった。
政治分析サイト、クック・ポリティカル・リポートのエイミー・ウォルター氏は「最新の数字にいちいち踊らされるのではなく、傾向を見た方が選挙戦の現在地を捉えられる」と言う。
米ペンシルベニア州の会合で話すハリス副大統領=10月21日(AP=共同)
バイデン大統領の撤退に伴って出馬したハリス氏は、バイデン氏に対し優勢だったトランプ氏との差を一気に縮めたが、大きく引き離すには至らなかった。終盤に入って頭打ちになったように見える。ニューヨーク・タイムズ紙の10月上旬の調査はハリス氏がトランプ氏に3ポイント、リードしていた。
共和党は1998年にブッシュ大統領(父)が勝利して以降、2004年のブッシュ氏(子)以外、総得票数で民主党に負けている。カリフォルニア州やニューヨーク州などの人口の多い州では民主党が圧倒的に強いことによる。総得票数で負けても勝者になれるのは州ごとに割り当てられた選挙人の数で争う米大統領選の特殊性のおかげである。
トランプ氏が出馬した2016年、2020年の選挙では、民主党側のクリントン元国務長官、バイデン大統領とも選挙直前の段階の世論調査で、トランプ氏に対し数ポイントの差をつけて優勢だった。ハリス氏が僅差ということは、民主党側にとっては不安な材料である。
▽トランプ氏支持は低めに出がち
米ノースカロライナ州の集会会場に到着したトランプ前大統領=10月21日(ゲッティ=共同)
トランプ氏は実際の得票より世論調査の数字が低めに出てきた。今回もそれが当てはまれば、地滑り的な勝利につながるとの試算もある。低めの数字が出る理由として、回答した人がトランプ支持を明らかにすることを嫌うためという説明がある。
ところがAAPORの報告書は「(匿名が守られるインターネットのような)調査でも同じ結果が出ていることや、トランプ氏が候補者でない上院議員や州知事選でも民主党が高めに出ることを考えると大きな理由とは言えない」と排除している。トランプ氏の支持者が世論調査を受けたがらないと考えた方が合理的と付け加えている。
当確判定では出口調査が有効とされてきたが、期日前投票が増えた今、これも頼りにならない。トランプ氏は敗れても簡単には認めないだろう。ワシントンの日本大使館関係者は「いつの段階でお祝いを言えば良いのか迷っている」と話している。
外部リンク
- ひきこもり経験者が寄り添う、つながりの輪広げる メタバース活用、原点は絵はがき、札幌の団体設立25年【地域再生大賞・受賞団体の今】
- 保護者対応は最初の相談から支援まで学校外の専門スタッフが担当します 全国でも珍しい奈良・天理の取り組みは成功するか
- 全英チャート8位、日本人兄弟バンドが追求する「本物のロック」 長い下積み経て、憧れの地ロンドンで花咲かす
- 「プロ野球90年」教育評論家・尾木直樹さんが語る大谷翔平の魅力 「人間性もスケールがでっかい。全てが魅力的で規格外」
- 「紹介してくれたら150万円」老人ホームが入居してほしい高齢者とは 過剰な訪問看護で得た診療報酬が原資に…医療費が流出している?
- 父と息子、丸い土俵と固い絆 母が急逝、19歳の新十両若碇は気合と根性、そして感謝
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏、総得票も優勢 共和候補20年ぶりか
共同通信 / 2024年11月9日 10時46分
-
米大統領選、バージニア州では予想どおりハリス氏勝利も、以前より接戦に(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月8日 14時55分
-
米大統領選の開票進む、結果は残る激戦5州の結果次第(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月6日 16時15分
-
<大接戦の米大統領選>投票日後に混乱の予想、決着は年明けに持ち越しか
Record China / 2024年11月4日 16時0分
-
米大統領選の勝者は誰か?米国株と為替の反応は?直前の分析(窪田真之)
トウシル / 2024年10月31日 8時0分
ランキング
-
1イスラエル軍、徴兵に応じないユダヤ教「超正統派」1126人に逮捕状…出国も禁止
読売新聞 / 2024年11月20日 16時56分
-
2訂正-米とのホットライン、現在使用されてないとロシア大統領府
ロイター / 2024年11月20日 15時17分
-
3死者の6割が5歳未満 世界中で感染拡大「エムポックス」 WHOが日本製ワクチンの緊急使用を承認
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月20日 12時7分
-
4うわさに揺れる韓国ロッテ…業績不振・財務健全性悪化、「事実無根」釈明も効果が薄れ
KOREA WAVE / 2024年11月20日 9時0分
-
5ビザ免除の中国で入国拒否される韓国人が続出?その理由は=韓国ネット「当然」「行かない方が…」
Record China / 2024年11月20日 14時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください