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子育てを地域で支え合う、「かつて自分が助けられたように」 八戸の中心街に活気、次世代も力に【地域再生大賞・受賞団体の今】

47NEWS / 2024年11月24日 10時0分

多くの親子連れでにぎわう「こどもはっち」=2024年9月、青森県八戸市

 親子で楽しく過ごせて、いつでも仲間とつながることのできる場があり、生まれる前から学童期まで子どもたちを地域で見守る。青森県八戸市で約20年にわたって、子育ての応援を通じて元気なまちを目指す取り組みが続いている。一年を通じて多くの親子イベントが行われ、中心街はにぎわう。NPO法人「はちのへ未来ネット」を中心に、多くの市民ボランティアが活動を担う。成長したかつての子どもたちも大きな力となっており、支え合いの循環が生まれている。(共同通信=藤田康文)

 ▽高校生も運営手伝う


「はちのへ未来ネット」が開いた秋祭りイベントで、子どもたちが踊る姿を見守る親たち=2024年9月、青森県八戸市

 デパートや飲食店が立ち並ぶ八戸市中心街の多目的広場に歓声が響く。2024年9月、はちのへ未来ネットが開いた秋祭り。「わっしょい、わっしょい」のかけ声とともに幼児が小さなみこしを担ぎ、夢中になって和太鼓をたたく。盆踊りの曲に合わせて体を動かすわが子の姿に、目を細めるパパ、ママたち。


 「お手々を開いて、パンッ」。はちのへ未来ネット代表理事の平間恵美さん(64)はマイクを握り、一緒に踊る。ゲームや縁日のコーナーでは、高校生ボランティアの姿も。


八戸市美術館に設けられたツリーハウスと多くの親子連れ=2024年9月、青森県八戸市

 はちのへ未来ネットは同じ日、近くの八戸市美術館でもイベントを主催した。多くの親子連れがツリーハウスに登ったり、木のおもちゃや人形劇を楽しんだりした。
 美術館の宗石美佐副館長は「車社会で人の流れが郊外に向かう中で、中心街で楽しいこと、面白いものに出会ってほしい。親子が足を運ぶきっかけになれば」と話した。

 ▽木のぬくもり


木のプールなどさまざまな遊び場が設けられた「こどもはっち」=2024年9月、青森県八戸市

 八戸市は中心街の活性化に向けて、文化や交流のための施設を整備してきた。多目的広場や美術館とともに、中核となっているのが「八戸ポータルミュージアム はっち」。市民活動や観光の拠点として、2011年にオープンした。
 ここに乳幼児や親たちの交流施設「こどもはっち」がある。おもちゃやフローリングに木を多用したぬくもりのある空間。「ひみつきち」「おもちゃのいえ」といった小部屋に、大人もわくわくする。
 はちのへ未来ネットは市の委託を受け、こどもはっちを運営する。親子触れ合い遊び、紙芝居、お誕生月会、修理が必要なおもちゃの「病院」…。催しがめじろ押しだ。観劇会やハロウィーンパーティー、野菜収穫体験など季節のイベントも多い。

 ▽悩みを共有

 妊娠期や生後1年までの赤ちゃん、多胎児の親や転勤が多い家庭、障害のある子と家族などを対象とした交流会もある。参加者はお下がりの受け渡しをしたり、同じ悩みを共有したりしている。
 保育士などの資格を持つスタッフが子育ての悩みにアドバイスし、必要があれば医療や福祉、行政機関につなぐ。預かり保育も手がける。こどもはっちの入場料は100円(未就学児は無料)で、月間の利用者数は3千~4千人。周辺町村から訪れる人も多い。
 こどもはっちとは別に小学生の放課後の居場所も開設。不登校やひきこもりの相談に応じ、困窮家庭への食料配布も実施する。

 ▽応援隊が支え


秋祭りイベントで子どもたちと一緒に踊る「はちのへ未来ネット」の平間恵美代表理事=2024年9月、青森県八戸市

 はちのへ未来ネット代表理事の平間さんは、かつて市内で子育てサークルの代表を務めていた。「この八戸で、親子が舞台芸術などの文化に親しむ機会を増やそう」と2003年、子どものために活動する個人や団体に結集を呼びかけた。このメンバーが中心となり、大きな子どもイベントを毎年開くようになる。06年に前身組織が発足する。
 はちのへ未来ネットの役員は平間さんや元行政職員、民生委員ら5人。個人会員は30人弱に過ぎない。手弁当で活動を支えるのは「数え切れない応援隊の人たち」。平間さんは「私たちには力がないが、社会福祉協議会や教育委員会の関係者、公民館の館長らに助けられ、少しずつ、やりたいことが形になっていった」と振り返る。
 実社会に見立てた「こどものまち」で小学生が多様な体験をする企画は、若い世代が立案し、高校生と一緒に運営した。高校生のボランティアに約100人が登録する。

 ▽自分も助けられた


八戸市中心街の多目的広場で開かれた秋祭りイベント=2024年9月、青森県八戸市

 平間さんは仙台市出身。幼い頃に母を亡くし、近くに育児を相談できる人がいなかった。長男を授かった際に、同じアパートの先輩ママに助けられた。夫の転勤で住んだ秋田でも出会いに恵まれ、母親たちのサークル活動に参加した。
 再び転勤で八戸に移って子育てサークルを立ち上げたのは、こうした経験が大きい。平間さんは「私が子育てを手伝ってもらったように、若い親御さんに地域の中で生きてもらいたい」と変わらない思いを語る。

 ▽つながりをつくる


人形劇を楽しむ親子連れ=2024年9月、青森県八戸市の八戸市美術館

 障害のある子がいたり、厳しい環境に置かれていたりする母親もいる。「赤ちゃんが生まれたときから関わっていると、その子が小学生になって居場所に戻ってきたときにケアがしやすい」と、地域が長いスパンで子どもたちを見守る大切さを訴える。
 在宅就労支援として、母親たちによる手作りフェルト作品のおもちゃなどを売る取り組みを長く続けている。平間さんは「問題を抱え、支援が必要なお母さんほど社会との関わりが少なく、切り離されている。つながりをつくっていきたい」と強調する。

 ▽希望のツリー

 新型コロナウイルス禍で「プレゼントの木」を始めた。クリスマスプレゼントをもらえない子どもが、欲しいものを書いた飾り物をツリーに付けて、それを見て贈りたいと思った人をつないでいる。
 始めは贈り主が現れるか心配だったが、実際には多くの支援が集まる。「世の中捨てたものではない。不登校や虐待などいろんな問題があるが、子どもたちの周りには、助けてくれる人はいっぱいいるのではないか。まだまだつながれる」。平間さんは希望を感じている。
   ×   ×
 47の地方紙とNHK、共同通信が各地の地域づくりを応援する「地域再生大賞」は2024年度に第15回の節目を迎えた。はちのへ未来ネットは22年度の優秀賞に輝いた。

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