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「動画配信だけが唯一の居場所だった」41歳、のめり込んだ「迷惑系」 焼き肉店の卓上に土足、罪に問われた被告が譲れなかったもの

47NEWS / 2024年11月21日 10時0分

動画配信アプリのイメージ

 憧れていた芸能界には、手が届かなかった。たどり着いた先はインターネット上で過激な動画を公開して稼ぐ「迷惑系配信者」だった。「配信だけが唯一の居場所だった」。東京都内の焼き肉店の卓上に土足で上がり騒いだとして、威力業務妨害罪に問われた男性(41)は法廷でもなお、動画配信にこだわる姿勢を崩さなかった。(共同通信=助川尭史)

 ▽過激動画で何度も炎上、自称「インフルエンサー」


東京地方裁判所

 今年8月、東京地裁で開かれた初公判。ダークスーツに身を包み被告席に座った男性は、落ち着かない様子で辺りを見回していた。配信動画では明るい金色だった髪は黒く染まっている。裁判官から職業を尋ねられると「インフルエンサーです」としゃがれた声で答え、起訴内容を認めた上で事件に至る経緯を語った。


 高校中退後、芸能界を目指したが挫折。職を転々とする中、動画配信を始めた。当初はダンスやファンとの交流がメインだった内容は次第に過激さを増していく。軽自動車を無免許運転、交番に無断で侵入―。警察に逮捕される事態も何度も引き起こした。だが、ネット上で批判を集める「炎上」を繰り返すたびに注目は集まった。交流サイト(SNS)のフォロワー数は15万人を超えるまでになった。

 ▽焼き肉店で酩酊生配信、店には苦情殺到


男性が迷惑行為をした東京都渋谷区内の焼き肉店

 今回の事件が起きたのは昨年8月の夜のこと。男性は、別の配信者がいた東京都渋谷区内の焼き肉店を訪れる様子を動画配信していた。当時、アルコール度数の高いストロング系酎ハイや、ウオッカを何本も飲んでいて酩酊状態の中、この配信者が動画配信プラットフォームの規約に違反する音楽を携帯電話で流し始めた。「アカBAN(アカウント停止)されてしまうと思い、携帯を奪って止めようと思いました。酔っぱらって周りが見えてませんでした」。大声を出しながら土足で卓上を暴れまわる行為はそのまま生配信された。店には苦情の電話が殺到。2日にわたる消毒作業を余儀なくされた。
 後日、店には菓子折りを持って謝罪したが、この時も生配信を行い、受け取りは拒否されたという。「反省している様子を記録したかった。今思えば拒否されてもしょうがない」とうなだれた。

 公判では弁護側の証人として、男性のファンだという配信者仲間の女性が出廷した。保釈中は男性の自宅に通い、身辺の世話をしているといい、今後は迷惑行為をしないよう監督すると約束した。親族とは絶縁状態という男性は「唯一の家族だと思っている。これからは何でも相談していく」と涙ぐんだ。

 ▽「配信やめるつもりは」裁判官の問いに男性は…


焼き肉屋の周辺の風景

 一部始終を聞き終えた裁判官は、そもそもなぜ人に迷惑をかけるまで酒を飲んだのか尋ねた。男性は「もともと人と話すのが苦手。お酒を飲むとコミュニケーション力が向上する気がした。本当は酒の味は嫌いだけど動画を配信する時は飲んでいた」と打ち明ける。
 さらに裁判官は「ここまで動画配信にこだわるのは異常で世間の感覚とずれている」と述べ、配信以外に別の仕事をする選択肢はないのかと問いかけた。この質問に男性は、生活費や活動資金を動画から得た収益でまかなっていると説明。「いろんな仕事をしたけど続かなかった。動画配信をとられたら自分が成り立たない。これからも続けさせてほしい」と証言台から身を乗り出さんばかりに懇願した。

 男性は最後まで自分が「配信者」であることに固執し続けた。

 ▽判決後、最初にとった行動

 


判決後に配信者仲間に囲まれる男性(中央奥)

法廷で「被害者の方に迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪や反省の言葉を何度も口にする一方、配信をやめることはかたくなに拒否し続けた男性。9月、言い渡されたのは懲役10月、執行猶予4年の判決だった。
 裁判官は「執行猶予は無罪放免の制度ではない」とくぎを刺し、「次に法廷に来るときは刑務所に行く時です。覚悟を持って生活してください」と諭した。

 判決後、地裁前には裁判を傍聴したファンや配信者仲間が待ち構えていた。姿を見せた男性が最初にしたのは、自身の有罪を報告する生配信だった。

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