「プロ野球90年」DeNAファンの歌手・相川七瀬さんが語る日本一の喜び 「ピッチャーは一人でステージに立っているよう。自分と重ね合わせます」
47NEWS / 2024年12月1日 10時0分
発足から90年を迎えたプロ野球への思いを聞くインタビューシリーズ。今年でデビュー30周年の歌手相川七瀬さんはDeNAの大ファン。試合後のイベントでライブを行うこともあり、今年はテレビ神奈川のDeNA戦中継のテーマソング「Blue Star」を手がけた。セ・リーグ3位から「下克上」で日本シリーズを制した喜びを語った。(聞き手 共同通信=児矢野雄介)
▽野球の神髄を見せてくれた
日本一を決めマウンドに駆け寄るDeNAナイン=2024年11月、横浜スタジアム
やりました!ベイスターズ26年ぶりの日本一。選手の皆さんもファンの皆さんも本当におめでとうございます。私の応援歴は決して長くはありませんが、ファンの皆さんと一緒にあの景色を見届けられたことが本当に幸せです。
東京ドームでのクライマックスシリーズ(CS)は5試合、日本シリーズはハマスタで第2戦と日本一を決めた第6戦を運良く見ることができました。今年はベテランも若手もルーキーも一緒に戦い抜き、次世代のベイスターズを体現してくれたシーズンでした。最高です!
何があるか分からないのが野球の面白いところ。その神髄を見せてくれました。開幕前は6位の予想が多かった。今永昇太投手とトレバー・バウアー投手が抜けたからだめだろうと思われたのかもしれないですけど、エースが抜けたからこそ新しい世代のエースが生まれる。CSでは東克樹投手がけがをして一時離脱しましたが、その間もいろいろなピッチャーが好投し、隠れた宝石がざくざくあったということが分かりました。チャンスってこういう風に回ってくるんだなと、今年のDeNAを見て感じました。
▽外野席は「エモい」
日本シリーズでスタンドのファンが盛り上がる横浜スタジアム=2024年11月
息子が小学生の時に、同級生に仲のいいDeNAファンのお友達がいて、野球のことを教えてもらうようになったのをきっかけに、球場に通うようになりました。私は大阪出身で、父は阪神を応援していましたし、子どもの頃は家で野球を見ていましたけど、現地に行くということにはなかなか縁がありませんでした。
生で観戦するときの臨場感や興奮は、ライブと一緒。共通の趣味を持つことで、球場で子どもとの会話が弾むようになり、いつのまにか球場が家族のコミュニケーションの場になりました。息子と2人で話すこととか、娘と2人で話すこととか、球場だからこそ持てる時間があって、それはすごく良かったですね。子どもが大きくなっていくと会話が少なくなりがちですけど、うちは野球も他のアーティストのライブも一緒に見に行くので、共通の時間が持てています。
最初は野球をよく知らずに見に行きました。イニングの合間にもイベントがあり、とにかく飽きなかった。「楽しかった」と思って帰れるような運営側の工夫がすごく感じられて、野球そのものももちろんですけど、プラスアルファのところでも楽しめる。「ガチ」の野球ファンじゃなくても行ける気軽さがハマスタにはありますね。
色紙を手にする相川七瀬さん=2024年10月
ビジターの球場にも行きます。去年は最後にマツダスタジアムでの広島とのCSを外野席で観戦しました。ビジターファンのエリアはほんの少ししかないんですけど、終盤で送りバントを失敗して「もうだめだ」というムードになりそうだったところで、応援団の人が「バントがだめならホームラン打ってもらおう」と盛り上げて、そこから「ホームラン、ホームラン」のコールが始まった。自分も応援される側にいる人間なので、応援している人たちの気持ちにすごく感動しました。「みんなが一緒に戦っているんだな」という感覚は、あそこに行かないと分からなかった。
マツダスタジアムや甲子園のレフトスタンドを経験してから、野球は外野席が面白いんだなって気付きました。外野は「エモい」ですね!
▽ハマスタは思いが違う
横浜スタジアムでの試合後にライブをする相川七瀬さん=2019年5月(相川七瀬official提供)
好きな球団の聖地で歌えるのは、すごくうれしいです。ファンとしてハマスタでのドラマを経験しているので、やっぱり思いが違う。あそこに立っていることの重みを感じて歌っています。
自分のライブに来てくれるファンの方々とは、ここでタオルを投げるとか、ここでみんなで飛ぶとか、長い時間の中でつくられた合いの手などがありますが、球場では私の音楽を初めて聞く人も多い。それでも「夢見る少女じゃいられない」などで、同じタイミングでジャンプしてくれる。いかに野球ファンの人たちに「相川七瀬を聴けて良かったな」と思ってもらうかというのは、普段と違う仕事の楽しさだと思います。
選手がどういうふうに自分の心をコントロールしているのかにも関心があります。たとえばすごく難しい場面を任される中継ぎのピッチャーが、どういうメンタルの持ち方をしているのかなということにはすごく興味がある。ホームであれば後押ししてくれる声援がありますが、ビジターの場合は逆に押されてしまう環境の中で、失敗できない場面で一球に入魂しなければいけない。
横浜スタジアムでの試合後にライブをする相川七瀬さん=2019年5月(相川七瀬official提供)
私がライブで歌詞を間違えてもエンターテインメントになり得るのですが、アスリートは失敗が許されず、それが勝負の分かれ道になる。「こういう場面で自分は平常心でいられるかな」とよく考えます。
ピッチャーはステージに一人で立っているみたいなところがあって、私もソロの歌手なので「どういう気持ちでマウンドに立っているんだろう」とか「ステージに立つ時にああいう強さを持てるかな」と重ね合わせてしまう。山崎康晃投手や今年大リーグへ移籍した今永昇太投手とは、仲が良くていろんな話をします。
▽ヒーローは康晃
今季初勝利を挙げたDeNA・山崎康晃=2024年5月、横浜スタジアム
私にとってのヒーローは康晃です。彼が出てくることで、試合が締まる。そういうカリスマ性は誰もが持っているわけじゃない。決めるときに決めてくれるのが、山崎康晃という人の魅力。DeNAを応援していて感じるのは、康晃に対するファンの思いが半端じゃないんですよ。順調な時も苦難の時も、やっぱり横浜で時代を築いてきた守護神なんです。
ファンの人たちにも、本当にフレンドリーに接してくれる。彼が東京五輪でハマスタで投げたのを見て、本当にこの人は選ばれた人なんだな、そういう星の下の人なんだなと思いました。今年東京ドームでCSの巨人戦を観戦したときは、2イニングを好投。ハマスタだと登場曲が流れて「ヤスアキジャンプ」をするのですが、ビジターで曲が流れないので応援団が歌うんです。それを聞きながら涙が止まらなかった。野球を見て泣いたのは初めてでした。
DeNA時代の今永昇太=2023年6月、横浜スタジアム
今永君はクールな印象が前面に出ていますけど、実はすごく面白い人で、言語化の能力がすごく高い。自分の野球の考え方や精神的な部分を言語化していって、それを自分で納得できるものに修正していくタイプの人だと思います。私も自分の感情や置かれている状況を言語化して確認したい人間なので、そういうところにシンパシーを感じる。大リーグであんなに活躍してくれて、「横浜の星」だと思っています。「大谷翔平選手はすごいけど、うちも負けてないよ」って。
日本一に輝き胴上げされるDeNA・三浦大輔監督=2024年11月、横浜スタジアム
三浦大輔監督は選手の性格を理解して、それぞれを尊重している。押しつけがない自由さがあって、それがベイスターズカラーだと思います。ベンチを見ていても、みんな仲がいい。三浦さんとは年が近く、おうちに遊びに行ったり、一緒にカラオケをしたりしています。歌がうまくて、織田哲郎さんの「BOMBER GIRL」という曲が好き。それを2人でデュエットしたりします。
野球は本当に幅広い層に愛されるスポーツ。野球に興味がない人も、球場に来たらきっと楽しい。そういうきっかけを、もっと広げてほしいなと思いますね。
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