接客はアバターにお任せ―遠隔で操作、人手不足の現場の助っ人に 高齢者、すっぴんでもOK「年齢や性別、障害の有無に関係なく働ける」
47NEWS / 2024年12月26日 9時0分
「どこから来たのですか」。関西空港の到着ロビーに設置されたモニターの中から、英語の問いかけが聞こえてきた。声の主は、兵庫県淡路市のマスコットキャラクター「あわ神」のアバターだ。来日した家族連れが物珍しそうに近寄って「シンガポール」と答えると、モニター越しの会話が始まった。アバターは「淡路島はシンガポール島とほぼ同じ面積です」と紹介し、続いて観光スポットを売り込んだ。
このように、企業や施設の接客や案内をモニターに映るアバター(分身)が代行するサービスが広がってきた。アバターを操るのは、別の場所にいるスタッフだ。離れた場所ででき、通勤の負担が減って高齢者や障害者も働きやすくなる。人手不足の中でアバター人材が強力な「助っ人」となりそうだ。(共同通信=沢野林太郎)
▽ここなら年齢に関係なく働ける
関西空港の到着ロビーに設置したアバターを操作するスタッフ=9月、兵庫県淡路市
関西空港にある「あわ神」のアバターを操作するのは、人材サービス大手のパソナグループの女性スタッフ(32)。実際に働いている場所は、空港から車で約1時間半の距離にある淡路市のオフィスだ。空港のモニターにはカメラやマイクが付いていて、スタッフは観光客の姿を見ながら会話をすることができる。スタッフが手を振るとアバターも同じように手を振る。
パソナと契約を結んだ淡路市の狙いは、2025年大阪・関西万博を見据えた観光PRだ。このため関西空港に今年8月、アバターの観光案内モニターを設置した。
兵庫県淡路市のマスコットキャラクターのアバター「あわ神」=9月、関西空港
パソナグループによると、アバターの接客サービスは従業員を雇用するのに比べて費用を約3分の1に抑えられるといい、このサービスを導入する企業や団体は約100に上る。スタッフに年齢制限はなく、淡路市のオフィスで働く約20人の中には高齢者や身体に障害のある人もいる。
横山慶子さん(65)は淡路市にいながら、愛知県に本社のある企業の受付を担当する。業務の内容は来客や荷物の受け渡しなど、多岐にわたる。年齢的に立ったり座ったりする業務は体が疲れるというが、アバターなら座ったままできるため負担も少ない。横山さんは満足そうにこう話す。「接客が好きなのでまだまだ働きたい。ここなら年齢に関係なく働ける」
アバターのキャラクターは選ぶことができ、声色や表情も自由に変えることが可能だ。横山さんは「制服を着なくてもいいし、化粧をしなくても大丈夫。すっぴんでもOK」と笑顔で話す。
▽強みは「ぬくもりのある対応」、AIには負けない
兵庫県淡路市のマスコットキャラクターのアバターと会話をする子どもたち=9月、関西空港
かつて銀行窓口で働いていたという女性(60)は、アバターの接客サービスで同時に4社の受付をこなしている。女性は以前の職場との違いをこう語る。「前の職場では、受付を担当するのは若い人が多かった。アバターなら私でも任せてくれるのがうれしい」。そして「声が続く限り仕事を続けたい」と生き生きした表情で話した。
近年は対話型人工知能(AI)の発達もあり、受付をAIが代替するケースも増えている。しかし、女性はアバター接客の強みをこう表現した。「アバターの裏側で操作しているのは人間だから臨機応変にぬくもりをもった対応ができる。AIにはまだまだ負けないわ」
パソナグループは、アバターシステムをコンビニの「ローソン」やエイチ・アイ・エスが運営する「変なホテル」に供与。近年インバウンド(訪日客)が増え、外国語で観光案内するためアバターを利用したいと自治体などから問い合わせもあるという。
パソナグループの松村卓司常務執行役員は「年齢や男女の別、障害が有無に関係なく、生き生きと働ける新しい職場をつくりたい」と意気込んでいる。
アバターによるサービスを展開している企業は他にもある。TOPPAN(東京)は、スーパーの試食販売の店員を遠隔からアバターで実演するシステムを販売する。IT企業のタイムリープ(東京)は、インターネットカフェの受付などの遠隔接客サービスで、アバターによる案内を提供している。
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