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松山英樹も称賛!ホールインワンに愛された小学生の少女 ギネス認定、慌てて保険に加入した父親に予想外の出来事が…

47NEWS / 2025年1月6日 9時0分

ギネス認定証を持つ津止柑那さん

 2歳でおもちゃのゴルフクラブを握り、7歳で初めて試合に出場、そして9歳になったばかりの2023年10月には1試合で2度のホールインワンを達成してギネス記録に認定された10歳の少女がいる。父親が慌てて「ホールインワン保険」に加入させたことを知ってか知らずか、同じ年のクリスマスイブには再びホールインワンを実現し、さらに周囲を驚かせた。自宅には総工費数百万円をかけた最新のシミュレーション設備があり、米ツアーで活躍するトッププロの松山英樹選手も帰国した際に訪れるほどだ。その松山選手が少女のスイングを見てこう言ったという。「すごい。すごい」(共同通信=宮本寛)

 筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。

 ▽スタートはアンパンマン


千葉県内のゴルフ場で練習する柑那さん=2021年10月

 ゴルフ一家に生まれた津止柑那(つどめ・かんな)さん。父親の克明さんは銅の鋳物や産業機械の部品を作る合金会社の3代目。スエズ運河を掘るドリルの軸も手がけているという。克明さんによると、柑那さんの祖母、克明さん夫妻、克明さんの姉夫婦とその息子2人、さらにはその妻までゴルフをする。

 そんな家庭で育った柑那さんが2歳で初めて握ったクラブはアンパンマンのプラスチック製のおもちゃだった。当時の記憶を尋ねると、『「チャーシューメーン」「さいしょーはメーン」って言っていたのは覚えている』とはにかみながら答えてくれた。
 6歳で練習を開始。その動機は「ちゃんと練習すれば家族と一緒にコースに行けると思ったから」だった。

 ▽そしてドラえもん


練習設備を整えた自宅

 克明さんが「先行投資ですね」と笑う数百万円の設備とはどのようなものか。東京都内のマンションの一室にシミュレーションや弾道計測機が導入され、パター練習用のマットも敷かれている。フェースのどこに当たったのかも分かるし、自分の映像も確認できる。
 「私の夢は柑那がプロになり、キャディとしてバッグを担ぐことだったんです。ゴルフにはまってくれればいいなと思っていた」と克明さん。一方の柑那さんはこんな感想を抱いていた。「何をさせられるの?ゴルフって何?」

 そんな柑那さんは最初の一振りで父親を驚愕させた。子供用のユーティリティを振らせると、これがナイスショットに。克明さんは直感した。「普通はかすりもしない。この子はボールを捉える天性を持っている」
 当初は好き勝手に打たせるだけだった。1カ月後にショートコースに連れて行くと、5ホールで疲れて帰ってきたという。1年後には円柱状のストレッチポールの上で素振りを始め、ゴルフコースの月例大会やジュニアツアーに参加するようになった。

 毎日練習を欠かさない柑那さんは、近所のスポーツクラブのスクールに通うようになると、すぐに優勝の常連に。競技の楽しさを覚えたとも言えるが、他の楽しみもあった。「優勝するとドラえもんのメダルがもらえるから…」
 初ラウンドのスコアは123。夏の北海道に家族で旅行に行ったときのものだ。「ただただ気持ちよかった。芝生の中で打った時の音。野原で風が吹く自然の音。都会に住んでいるからこそ、自然を感じられたのが楽しかった」。小学生らしいさわやかな感想を教えてくれた。

 ▽2度のホールインワン


初めて試合に出場した津止柑那さん=2022年5月、千葉県

 そんな柑那さんがギネス認定の偉業を達成したのは2023年10月22日、福島県の矢吹ゴルフ倶楽部で開催された「JLPGA全日本小学生ゴルフトーナメント」での決勝の舞台だった。
 意外にも、大会直前にインフルエンザにかかり、出場を断念するところだったという。熱が下がったのは6日前。克明さんは「世界レベルの子どもたちのプレーを体感できるので、行くだけ行こうと。楽しみながら回るのが目標でした」と明かす。

 ところがスタートから2ホール目に最初のホールインワン。さらにラスト2ホール目で再び〝奇跡〟が待っていた。
 結果は優勝。ホールインワンを達成した2ホールとも使ったクラブはユーティリティだが、実は克明さんのお手製だった。娘の身長に合わせ、ジュニア用のクラブに、さらに軽くて柔らかいシャフトを短く切って取り入れたものだった。
 当時の心境を柑那さんに聞くと「びっくり」の一言。克明さんはこう振り返る。「ホールインワンの確率も分からず、イーグルを取ったくらいの感覚だったんだと思います。本人は小さくガッツポーズをしたくらいでしたが、周囲のギャラリーが大騒ぎになっていました」

 ちなみに9歳と8日で達成したギネスの認定は「同一ラウンドで2度のホールインワンを達成した最年少記録(女子、ジュニアコース)」となっている。


保険加入の1週間後に自身3度目のホールインワンした柑那さん=2023年12月、千葉県

 ホールインワン保険に入っていなかったため、すぐに加入。娘の上達への期待を込めて「一番(掛け金が)高いやつを頼みました」と克明さん。ちなみにホールインワンを達成すると、一緒にプレーをした人やキャディさん、友人らにお祝いをする習慣がある。記念品を贈ったり祝賀会やゴルフ場での植樹といったイベントが待っていたりする。その費用は100万円以上かかる場合もあり、それをまかなうのがホールインワン保険だ。
 柑那さんの場合、その効果は優勝した試合から2カ月後、そして保険加入からわずか1週間後のクリスマスイブに発揮されたという。

 ▽松山英樹との勝負の行方は


松山英樹選手と記念撮影する柑那さん=2022年9月

 克明さんの親戚の縁で松山英樹選手は柑那さんの自宅を訪れるようになったという。
 緊張しっぱなしだったという柑那さんだったが、そのスイングを見た松山選手は「すごい」と称賛。その上で「クラブがちょっと長くてシャフトが硬いから、短くて柔らかいものにした方が良い」というアドバイスもくれた。どちらが先に入れるか、というパター勝負では、さすがに柑那さんが負けたという。

 ▽初めて見せた悔し涙


克明さんと練習ラウンドを回る柑那さん=2024年7月、静岡県

 ゴルフの他に、水泳や体操、トランポリンを習っていたが、実は「柑那の運動神経は良くない」と克明さん。柑那さんが小声でつぶやく。「徒競走はクラスでビリだし…」。歌うのが好きでボイストレーニングにも通っていたという。
 なんとか娘をゴルフの道に引っ張ろうと、克明さんは懸命だった。「ゴルフでは何をしようが褒めちぎりました。はまってほしい一心で」

 試合で負けても泣くことはなかったという柑那さんだが、つい最近、号泣することがあった。世界ジュニアの代表選考がかかった試合。1ホールでトリプルをたたいた時のことだった。
 柑那さんはこう打ち明ける。「3位以内に入るってパパに宣言していたのに、このままじゃ入れないと思ったら悔しくて…」。そんな娘を父はこう見つめていた。「悔しいと思ってくれたことがうれしかった。勝ちたい気持ちが出てきていると思った」

 ▽プロは当たり前、見据える夢とは
 柑那さんに将来の夢を聞くと「プロゴルファー」と当然のように答えが返ってきた。ところが、その夢には続きがあった。
 「その後はゴルフ部やコースや練習場がある学校を自分で造りたい。7歳で初めて試合に出た時、一緒に回った中学生と『ゴルフ部がある学校って少ないよね?』って話していて。じゃあ造りたいよねって考えています」

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