長崎ランタンフェスティバル、自然に異文化を融合する長崎の風土の起源
47NEWS / 2025年1月25日 9時0分
長崎市が年1回、本場・中国を超える「超中華世界」に変身するという「長崎ランタンフェスティバル」が1月29日~2月12日に開かれる。。自然に異文化を融合する長崎の風土の起源を探った。(共同通信長崎支局長・下江祐成)
▽変面ショーと変梅ショー
中国総領事館の観桜会で披露された変面ショー=2024年3月、長崎市
中国由来の伝統芸能「変面ショー」を初めて間近で見た。長崎市橋口町の中国総領事館の庭で3月、付近住民ら約400人が招かれた「観桜会」の最後。司会者が変面ショー開始を告げると、それまで後ろの方で見ていた住民が一気にステージ真下まで押しかけた。
老若男女の観客が、アップテンポな曲に合わせて手拍子を打つ。変面師が仮面を瞬時に一変させるたびに、大きな歓声がわき上がった。
変面のからくりは「国家機密」という。筆者は、仕掛けを探るように促され変面師のほおを触ったが、ごく薄いナイロンのような仮面1枚だけ。ほおを直接タッチしているのと同じ感覚だった。
長崎では近年、お笑い芸人の秋山竜次さんが自身の持ち芸と融合させ、俳優の故梅宮辰夫さんのお面を次々に替える「変梅(へんばい)ショー」も人気になっている。
長崎ランタンフェスティバルの「皇帝パレード」で中国衣装を身にまとった歌手の福山雅治さん=2024年2月、長崎市
長崎に溶け込んでいる中国文化の代表格は、春節期間に開かれる長崎ランタンフェスティバルや中国・清朝時代をイメージした皇帝パレードだ。
2024年2月のパレードには歌手の福山雅治さんらが登場して、ランフェスの集客数は約121万人で過去最多となった。
▽長崎・中華街の特殊性
伝統音楽「南音」を研究し、南音の楽器を勉強しているという王維教授=2024年6月、長崎大学
長崎のランフェスと新地中華街。世界中のチャイナタウンを比較研究してきた
長崎大学多文化社会学部の王維教授(文化人類学)には、どう見えるのだろうか?
王教授は、中国の春節は家族で祝う自然な行事であるのに対して「ランフェスは、中国でも見られないほど中国的なものにあふれた『超中華世界』だ」と指摘した。
新地中華街も、世界のチャイナタウンとは全く異なる街だという。
新地は、米国ニューヨークのチャイナタウンのような新移民を受け入れる中国人の集結地ではない。むしろ、構成員の一部が日本人で、多くの訪問客は日本人という点が最大の特徴だ。「日本人のためのチャイナタウン」と言える。
王教授は、長崎市は年1回の春節時に、中国的な世界へと大変身していると考える。「長崎には、中国文化の要素を取り出して、そこから新しいものを創り出す独特の土壌がある」と指摘した。
▽受容の起源
唐人屋敷の様子(唐館蘭館図絵巻、長崎歴史文化博物館所蔵)
唐人屋敷の様子(唐館蘭館図絵巻、長崎歴史文化博物館所蔵)
自然に中国文化を受容する風土の起源は、400年以上前までさかのぼれそうだ。貿易船で長崎に来ていた唐人は、崇福寺や眼鏡橋などを建設した。唐人屋敷ができるまでの約1世紀間、長崎の人は、お隣さんの唐人と自然に交流していた。
約200年前の唐人屋敷の様子(唐館蘭館図絵巻、長崎歴史文化博物館蔵)
400年後の今の日本には、政治体制の異なる中国の人を敵視したり異端視したりする傾向がある。長崎は、偏狭なナショナリズムとはほど遠い。国際都市としての歴史を持つ特別な街だ。
冒頭の観桜会。数百人の市民と長崎市長、中国総領事らが音楽やダンスを自然に楽しんでいる姿を見ながら、400年前にも長崎の至る所で、同じような光景があったんだろうなと思った。
▽目指せ!平和と繁栄の「亜洲的中心」
唐人屋敷跡での媽祖行列=2024年2月
ふと、今10歳の長崎の子どもたちが20歳になる10年後を考えた。インドや、中国から来た多くの観光客が原爆資料館や唐人屋敷跡、出島を見学し、浜町アーケードでショッピングする未来を想像した。
「対立と分断」が深まる困難な時代を乗り越えたアジアの近未来。長崎の若者たちが、「平和と繁栄」を享受するアジアの中心(亜洲的中心)にいたらいいなと思った。
プロの中国琵琶演奏者でもある王教授。長年の夢は、唐人屋敷跡を有効活用して、日本や中国の音楽や楽器、中国や東南アジアの文化を学ぶ「アジア文化交流センター」をつくることだ。
長崎には、中国のみならず東南アジアやインドの文化も流れ込んでいる。王教授は、歴史を踏まえ未来を語った。
「経済的な繁栄や利益は時間が経過すればなくなる。でも、文化は何百年たっても残る。長崎には、他の日本の街にはない唯一の歴史と文化がある。アジアに向けた日本の国際化を長崎から始めてほしい」
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