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補償進むも「説明不十分」の声。紅こうじサプリ健康被害 「半導体景気」夢いずこ。宮城で計画の台湾企業工場白紙に

47NEWS / 2025年1月7日 9時0分

記者会見の冒頭に紅こうじサプリを巡る問題で謝罪する小林製薬の幹部=2024年8月、大阪市内

 新しい年が始まった。2024年に大きくメディアに取り上げられたものや地域での関心が特に高かったもののいくつかは、今年も話題が続きそうだ。昨年起きたさまざまなニュースの「その後」を追った。今回振り返るのは(1)小林製薬の紅こうじサプリ問題(2)宮城で計画されたものの白紙になった台湾企業工場建設。(共同通信=(1)安部日向子、稲垣ひより(2)住友亮介)

 ▽サプリメントで健康被害。死亡事例に関連か


小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」

 紅こうじを使ったサプリメントで健康被害が出ていると、小林製薬(大阪市)が2024年3月、公表した。摂取との関連が疑われる死亡事例も次々と明らかになり、厚生労働省によると、死亡疑いの調査対象は120人以上。異例の被害に同社の補償受け付けが進むが、サプリを常飲していた消費者からは「当事者への説明が不十分だ」と疑問の声が上がる。

 「原因物質の特定に取り組んでいた。一番大事なのは因果関係だ」。小林章浩(こばやし・あきひろ)社長=当時=は2024年3月の会見でこう強弁した。同社は1月に医師からの連絡で健康被害を把握していたが、対応の遅さが批判された。

 ▽半年使用、頻尿や倦怠感


記者会見する小林製薬の小林章浩社長(当時)=2024年3月、大阪市

 約半年間、サプリを飲んでいた兵庫県姫路市の会社員内藤隆一(ないとう・りゅういち)さん(61)は2月、体調が悪くなり、頻尿や起き上がるのも苦しい倦怠感に襲われた。耐えかねて病院に行ったが原因不明で、不安が募った。インターネットで小林製薬の記者会見を知り、医師の指示で1カ月ほどサプリを断つと症状は改善し、数値も正常に戻った。小林製薬から診察費が支払われ、商品代は返金された。

 小林製薬は8月、紅こうじ事業からの撤退を発表。翌月には厚労省が健康被害の原因物質を、腎臓に悪影響を及ぼす青カビ由来の「プベルル酸」と特定した。
 プベルル酸は小林製薬の紅こうじサプリには本来含まれないが、健康被害のあったロットの分析で検出された。厚生労働省は腎毒性を確認。サプリ原料の製造工場で紅こうじを培養する際に青カビが混入し、産生されたとしている。

 ▽当初から対応に違和感

 しかし、小林製薬から内藤さんには、いまだに文書でも口頭でも直接説明はない。「当初から対応に違和感があった。手紙が届くが補償についてだけだ」と振り返る。
 11月には、小林製薬から追加の診察費補償についての電話が数カ月ぶりにかかってきた。「対応はゆっくりだが、進んでいる。すでに日常に戻りつつあるが、あの時の苦しさからサプリはもうやめた」
 大阪市は健康被害が食中毒に当たると判断し、被害規模の特定や汚染経路などの調査結果を2025年3月ごろ、取りまとめる方針だ。

  ×  ×  ×
 ▽半導体工場誘致、突然白紙に


半導体工場を建設する予定だった空き地=2024年9月、宮城県大衡村

 仙台市中心部から北に約25キロ、宮城県大衡村の国道近くに約19ヘクタールの広い空き地がある。本来ならこの場所で、台湾の力晶積成電子製造(PSMC)の半導体工場が年度内にも着工するはずだった。だが同社は2024年9月、計画を突然白紙に。九州や北海道で活気づく「半導体景気」に期待した自治体や東北経済界に落胆が広がった。新たな工場建設を模索する動きはあるが、先行きは見通せない。
 PSMCは台湾北西部の新竹に本社を置く半導体受託生産企業。他社の設計に基づき受注生産を担い、コンピューターの頭脳であるロジック半導体、データの記憶に使うメモリー半導体の両方を手がける。2024年7~9月期決算は売上高116億台湾ドル(14日時点で550億円)。純損益は28億台湾ドル(同136億円)の赤字だった。

 ▽トップセールスも計画が頓挫


宮城県大衡村に建設される予定だった半導体工場のモデルとなる台湾PSMCの工場=2024年5月、台湾北西部苗栗県(共同)

 「これほど大きな建物が本当に村に来るのか」。2024年5月2日、台湾北西部の苗栗県。大衡村の小川(おがわ)ひろみ村長はPSMCの招待で現地の巨大工場を視察し、声を弾ませた。

 宮城工場は村井嘉浩(むらい・よしひろ)知事が自ら誘致に奔走した。意識したのは台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県。トップセールスが奏功し、2023年10月、PSMCと、提携するSBIホールディングスが大衡村への工場建設を発表した。
 総投資額は9千億円超、稼働後は1200人規模の雇用が見込まれた。2024年3月にはボーリング調査も始まって工事は順調に進むかに見えたが、誘致決定から1年もたたずにPSMCがSBIに提携解消を要請して、計画は頓挫した。

 ▽怒り、安堵、受け止め様々


 PSMCは主な撤退理由として、日本政府からの補助金支給条件が台湾の法律に抵触する恐れがあると説明。SBI側が実行可能な資金調達計画などを示さなかったとも主張した。

 一方、SBIの北尾吉孝(きたお・よしたか)会長はフェイスブックで「本当に信じられない会社だ」と怒りをあらわにし、2024年11月の記者会見では「できれば宮城の土地でやりたい」と新たな提携先を探す考えを示した。ただ県関係者の一人は「リップサービスではないか。誘致のハードルは高い」と冷ややかに見ている。
 また、以前から東北で稼働する半導体関連企業の一部には、撤退によって「人材の奪い合いが起きる心配がなくなった」と安堵する声もある。

 海外企業との連携の難しさが表面化し、地域経済に混乱をもたらした今回のケース。村井知事は2024年10月の県議会で一連の動きを振り返ってこう述べた。「これを一つの教訓として次にチャレンジしないといけない」

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