政治について若い世代と対面で話したい、表面的な言葉への共感に危惧 女性支援の橘ジュンさん【不信の向こう側~既存メディアはなぜ嫌われるのか④】
47NEWS / 2025年1月31日 9時30分
新聞やテレビなど、既存のメディアに対する不信感が高まっている。不信感はなぜ生まれたのか。その背景に何があるのか。若い女性を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさんは、立候補者の過去の言動を調べず、SNSでの言葉に共感して投票したという女性の話を聞いて驚いたことがある。政治について議論するには、ネットではなく対面でつながって関係を築くことが重要だと話した。(共同通信=松竹維)
▽精神的に弱っている子は、誘導されやすい状態にある
橘ジュンさん
生きづらさを抱えている10代から20代の女性たちを支援してきました。LINE(ライン)やメール、電話で相談を受け、面談も行っています。また、インターネットをパトロールし、交流サイト(SNS)で危険な内容を投稿したり、泊まる場所を探している子を見つけたりして、相談につなげています。
ある支援対象の子から、選挙で投票した人物の名前を聞いたとき、あまりにも意外で驚きました。その子はSNSを見て、良いことを言っていると感じたようですが、その人物がこれまでどのようなことをしてきたのか、どんな発言をしてきたのかを調べていませんでした。
投票後、周囲から過去の言動を教えてもらい、自分が思っていたような人ではないと知ったそうです。
支援の場では、政治について気軽に話すことが難しいと感じていました。精神的に弱っている子に私の考えを話すと、簡単に影響を受けるかもしれないからです。でも最近、政治についても遠慮せずに話し合う機会を持ちたいと考えるようになりました。
死にたい、消えたいという相談は多いです。相談者には虐待などの背景があり、リストカットや、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)といった問題も抱えています。
SNSに自殺願望を書き込むなどした若者らが犠牲になった神奈川県座間市の9人殺害事件を受け、私たちに相談してくれている子たちにアンケートをしたことがあります。怖い、気をつけたいと答えた子がいる一方で、自分が10人目になりたかった、誘い出された気持ちが分かるという子も多数いました。
自分の置かれた状況に絶望している子は、世の中を政治で変えてほしいという思いを抱くかもしれません。ただ、心が弱っていて現実的なことを考えられない状態だと誘導されやすいと言えます。
候補者がどんな人物なのか詳しく知らず、SNSで目にした表面的な言葉に共感してしまうケースがあれば怖いです。その一票は結局、自分たちに返ってきます。
▽昔とは違う「一票」の形、デマや中傷に対応する制度整備を
橘ジュンさん
テレビや新聞はバランスを取りながら報じますが、若い世代の多くはテレビでニュースを見ず、新聞を読まない傾向があります。彼らはネットから情報を得て、自分の関心事については詳しい知識を持っています。
フォロワー数が多い人物の意見が投票に影響を与えることもあるでしょう。地元への貢献度や、話をよく聞いてくれる姿勢など、昔ながらの「一票」とは異なる形の「一票」があると感じます。
一方でネットには負の側面があります。デマや誹謗中傷の問題です。私たちもさまざまなことを書かれましたが、それらはネット上に残り、訂正されても広まりにくいのが現実です。
拡散した側の責任は問われず、裁判になれば時間や費用は大きな負担になります。裁判が「劇場型」になり、拡散した側に利益がもたらされることも懸念されます。中傷された側を守る制度を整備してほしいと強く思います。
私たちはSNSを相談に活用していますが、ネット上ではなく、対面でのリアルなつながりを大切にしています。少しずつ信頼関係を築いていけば、家族にも話せないようなことを打ち明けてくれるようになります。
政治に関する話題は、SNS上ではなく、対面で時間を共にしなければ円滑にやりとりできないと考えています。関係性を築くことができれば、相手も一方的に言われるだけではなく、意見を述べるようになります。時にはこちらが謝ることもあります。そうした経験を重ねていくことで、政治的な議論もできるようになると思います。
私の場合、候補者の発言内容よりも、実際にどのような行動をしてきたのかを調べて、誰に投票するかを判断しています。政治をテーマにしたグループワークでは、こうした自分の考えを話したいですし、若い世代が何を基準に投票しているのかも聞いてみたいと思っています。
× ×
たちばな・じゅん 千葉県生まれ。2009年に若い女性を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」を設立。代表を務める。
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