50年ぶり「おとぎ電車」に再会 西武の車両工場跡地の商業施設で
47NEWS / 2025年2月7日 11時0分
【汐留鉄道倶楽部】西武鉄道所沢駅(埼玉県所沢市)近くに昨年秋オープンした大型商業施設「エミテラス」に、かつて近郊の遊園地の遊戯施設として子どもたちを魅了した「おとぎ電車」に使われた蓄電池機関車が展示され、昔を知る世代の買い物客らの目を楽しませている。
おとぎ電車は、戦後ほどなく埼玉、東京の都県境にある狭山丘陵につくられた、西武鉄道系の二つの遊園地「西武園」と「ユネスコ村」の間3・6キロを結んだ線路幅762ミリの狭軌鉄道だ。かわいらしい客車数両を牽引(けんいん)、尾根の緑を縫って家族連れや花見客らを運んだ。1950年に部分開業し、翌年完成している。おもちゃのようなかわいらしい名前だが、52年にはれっきとした地方鉄道に格上げ(?)され、路線名は西武鉄道山口線となった。その後蒸気機関車も導入され鉄道ファンの人気を集めたが、沿線にあるプロ野球西武球団の専用球場(後にドーム化)への足の確保などを目的に、鉄道から新交通システムへと全面的に改築されることになり、山口線は84年にいったん休止、この時おとぎ電車は引退した。
展示車両の脇に掲げられた説明文と写真
40年前に引退した機関車が所沢駅近に帰ってきたのには理由がある。この場所は、西武鉄道が長年にわたって鉄道車両を製造してきた工場の跡地を再開発した商業施設なのだ。工場の記憶を伝えるレガシーにしようと、鉄道模型メーカーの関水金属が保管していた機関車を譲り受け、展示することになったのだ。
昨年暮れ、さっそく展示車両を見に行ってきた。筆者は幼い頃、西武園に近い地元、東村山に住んでいたことがあり、何度か家族で遊びに行って乗せてもらった記憶がある。そしてそれ以来だからほぼ50年ぶりの再会ということになる。
少しばかりわくわくしながら所沢駅改札を出て、西側ペデストリアンデッキ伝いにデパートをくぐり抜けると、エミテラスの大きな建物が姿を見せた。すると、あった、1階駐車場の出入り口のすぐ脇、車道に面して機関車がすっとこちらを向いている。
近寄ってみると、写真撮影している先客、幼子を連れたママも足を止めている。動くことはないのに、なかなかの人気だ。1960年に所沢工場で製造されたB11形B15という蓄電池機関車で、全長約5メートル、重量約10トン。横から見ると丸みを帯びた凸型の外観で白と明るい青で塗り分けた鮮やかな色調が印象的だ。昔のパトカーに似ていたと記憶していたが、屋根上に載せた金色の鐘が、サイレン灯のようにも見えたのだろう。走行音は「ガー…」だったかな。重厚な鉄の感触を手のひらで確かめた。
車両工場への引き込み線の跡であることを表現したレール
エミテラスにはレガシーがほかにもあって、この機関車と少し離れたところには、かつての所沢駅からの引き込み線をイメージしたレールが数メートル敷かれていた。さらに建物内の吹き抜けスペースには、実際に乗務員の訓練で使われた2000系運転用シミュレーター(現在は稼働しない)が展示されている。間近で見る電車の「顔」は迫力がある。
商業施設内に置かれた西武鉄道2000系運転用シミュレーター
さて、山口線はいまどうなったか。懐かしついでに乗ってみた。おとぎ電車時代は最寄りの鉄道駅からは少し歩かねばならない独立した鉄道だったが、タイヤ走行の新交通システム、愛称「レオライナー」になってからは、東端は西武多摩湖線の多摩湖駅と接続、西端は狭山線の西武球場前駅と接続しているので乗り換えはスムーズだ。ただ、路線は2・8キロと短くなり、所要時間は7分。乗ってしまえばあっという間だ。
新交通システムの西武山口線レオライナー。左手下に狭山線の電車が見える=西武球場前駅
ルートの大部分が東京都民の水がめ、村山貯水池(多摩湖)の北岸に沿っているので、地図を見るとすばらしい湖の眺めが見られるものと期待されるが、実際は湖との間に車が行き交う道路があり、また水源涵養(かんよう)のための雑木林の緑が濃く、結果として眺めはあまり良くない。観光列車としての魅力という点では、これだけはちょっと惜しい。
☆共同通信・篠原啓一 西武鉄道はこの所沢、東村山界隈(かいわい)に複数の鉄路を張り巡らしており、山口線の西武球場前―多摩湖間を、狭山線~池袋線~新宿線~国分寺線~拝島線~多摩湖線と遠回りして乗り継いでも、途中下車しなければ料金は同じ160円というからおもしろい。
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