感染者増加の渦中、始まる「Go To」 観光支援に1兆3千億円超 巨額事業の要点は?

47NEWS / 2020年7月15日 16時30分

多くの人が行き交う大阪・心斎橋。32人の新型コロナウイルス感染が確認されたこの日、大阪府は感染状況を判断するための独自基準「大阪モデル」に基づき、警戒を呼び掛ける「黄信号」を緊急事態宣言の解除後、初めて点灯した=12日

 政府が22日からの開始を決めた「Go To トラベル」。新型コロナウイルス感染症の拡大によって落ち込む地域経済や観光業界の支援を目的とする総額約1兆3500億円の巨額事業だ。ただ〝満額〟の割引支援を受けられる本格実施は9月以降となるなど詳細については未定の部分が多い。加えて、首都圏を中心に感染者が増加している中でのスタートに、地方自治体の首長からは異論も出始めている。当初問題視された事務委託費を含め、要点をQ&Aでまとめた。(構成、共同通信=松森好巨)

 Q 支援の内容は。

 A 国内旅行代金の半額相当を支援する。ホテルや旅館の宿泊費や、宿泊と移動費用がセットになったパック旅行については1泊当たり1人2万円、交通費がセットの日帰り旅行は1万円が上限となる。何度でも利用可能だ。ただし、支援額のうち7割が旅行代金の割引で、残る3割は旅先の土産物店や飲食店など事前に登録された店舗のみで使える「地域共通クーポン」の配布に充てられる。

 Q 割引の具体的なイメージは。

 A 観光庁のまとめた資料に基づいてみてみると、1泊2食付き2万円の温泉旅館に宿泊した場合の支援額は1万円。そのうちの7割が旅行代金割引となるので、利用者の自己負担は1万3千円となる一方で、3千円分のクーポンを受け取れる。2泊3日1人10万円のツアー旅行の場合、支援額は上限いっぱいの4万円なので利用者が支払う代金は7万2千円となる。

 Q クーポンの発行・配布は7月より遅れるのか。

 A 利用できる店舗の登録など準備に時間がかかるため9月以降になりそうだ。これに伴い、クーポンの発行開始までは半額支援の7割に当たる35%が旅行代金から割り引かれる限定的な形となる。この期間を観光庁は「先行実施期間」と位置づけている。

 Q 既に予約した旅行も対象になるのか。

 A 22日以降の日程で予約した旅行については、運営事務局へ申請すれば割引分が還付される。観光庁は申請書や領収書などを事務局に郵送かオンラインで提出する方法を想定しているが、詳細は調整中で事務局立ち上げ後に知らせるとしている。

 Q その事務の委託費が当初はクローズアップされた。

 A 「トラベル」を含む「Go To キャンペーン」は当初、観光や飲食、イベントなどをまとめ、経済産業省が事務委託先を一括公募していた。しかし、最大3095億円とした委託費が野党から「高すぎる」「事業者の支援が不十分になる」と批判され、担当省庁ごとに公募をやり直した経緯がある。

 Q 結局、委託先はどこが選ばれ、委託費はどれぐらいになったのか。

 A 国土交通省(観光庁)の公募には5件の応募があり、最終的に日本旅行業協会、全国旅行業協会、日本観光振興協会、JTB、KNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズの計7者でつくる共同事業体が選ばれた。事業体は、国が示した上限より約400億円少ない1895億円を事務費として提案していた。

 Q 感染者が再び増加している中での開始に懸念はないのか。

 A 地方自治体のトップからは経済活性化への期待を示しつつも、全国一律のスタートを不安視する声が出ている。青森県むつ市の宮下宗一郎市長は「東京で医療体制が整っているからといって、全国一律で開始するのはよく考えた方がいい」と指摘し、「感染が拡大すれば人災以外の何物でもない。市民の我慢をぶち壊すのか」と苦言を呈した。

 全国知事会も「トラベル」の先行実施が発表された10日、「新型コロナウイルスの感染状況や被災状況を踏まえ、まずは近隣地域の誘客から始め、段階的に誘客範囲を広げていくなど、地域の実情に応じて実施することを強く求める」などとする緊急提言を出している。

 Q 事業の中止や延期を求める意見も出ている。

 A 会員制交流サイト(SNS)のツイッター上では14日、「♯Go To キャンペーンを中止してください」というハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿が増え、ツイッターのトレンドワードで一時、国内上位に入った。立憲民主党など野党4党も15日に、事業の開始延期を政府に求める考えで一致。立民の安住淳国対委員長は「政府の認識は、国民の皮膚感覚とずれている。この状況でキャンペーンが実効性を上げるのは難しい。収束が見えたところで行うべきだ」と述べている。

 Q 懸念や不安に国の対応は。

 A 国土交通省は14日、「トラベル」の割引対象となる宿泊施設などには新型コロナウイルス感染防止対策を義務付けると発表した。具体的な対策は①利用者の検温②チェックインカウンターの仕切り板設置③浴場など共用施設の人数制限や換気―など。食事はビュッフェ形式ではなく個別提供として座席間隔を離し、保健所との連絡体制も求める。

 ただ、施設やツアー業者の数は膨大。現場で対策が守られているかどうかをチェックしていけるのかは不確実だ。それでも、西村康稔経済再生担当相は15日の衆院予算委員会で、予定通り22日に開始すると表明した。

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