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五輪パラスポンサー、4割が同性カップルを「家族」に LGBTQ理解、企業にも

47NEWS / 2021年9月3日 7時0分

スポンサー企業の一部も協賛する「東京レインボープライド」のパレード

 同性カップルの関係を公的に証明する同性パートナーシップ制度が自治体に広まりつつある。では、民間企業の取り組みはどうなっているのだろうか。共同通信は性的少数者(LGBTQなど)に関し、東京五輪・パラリンピックのスポンサー企業計82社を対象に調査した。「多様性と調和」の理念を掲げた五輪・パラリンピックの開催国として、今後も議論を加速する必要がある日本。調査結果から見えた課題とは―。(共同通信=石嶋大裕)

 ▽多様性受け止めたい

 6月中旬から7月中旬に、承諾を得られた企業にメールで調査票を送付。選択式と自由記述式で回答を求めた。

 従業員が同性パートナーとの婚姻相当の関係を申し出れば、同性カップルが福利厚生の「対象になる」と答えたのは36社あった。自治体のパートナー制度の証明書や住民票などで関係を確認し、結婚や家族に関する慶弔金や各種手当の支給、育児休暇などを認める。

 いずれの社も、出生時に割り当てられた性別と、自認する性別が異なるトランスジェンダーには、ホルモン治療を理由とした休暇や自認する性別のトイレ使用を認めるといった何らかの対応をしていると回答した。同性カップルへの福利厚生はないが、トランスジェンダーへの対応はしていると答えたのは20社だった。

 こうした企業の取り組みからは、さまざまな家族の在り方を認め、性的指向や性自認の違いを当たり前のものとして受け止めようとしていることがうかがえる。性的少数者に関する社内的な啓発活動にとどまらず、理解を促進するための対外的な活動に踏み出す企業もある。

 「パートナー、家族の形が多様化している現実を踏まえ、制度を改定した」。調査にこう回答したのは、家庭用品大手のP&Gジャパン。2018年4月、同性パートナーも配偶者とみなして慶弔休暇などの対象にすると明文化した。従業員の申し出に証明書などは原則必要ないという。

 同社は「社外でも理解促進の取り組みをしている」と回答した32社のうちの1社。性的少数者の味方を意味する「Ally(アライ)」を職場に増やす研修を一般企業向けに無料でしている。今年7月には同性パートナーがいることを公表した現役ラグビー選手らを招いて開催し、約20社が参加した。

 ▽安心につながる味方

 働きにくい職場は生きづらさにもつながる。制度があっても申し出られる環境でなければ意味が無い。トヨタ自動車には職場でのアライを登録する制度がある。20年4月末に募集を開始し、21年6月現在、約2万人が登録している。野村ホールディングスでは、職場に「アライ」と書かれたステッカーを貼って社員が理解を示す。ダイバーシティ&インクルージョン推進課で働き、ゲイだと公表した北村裕介さんは「一緒に取り組みが必要だと訴えてくれる存在は大きく、安心感が高くなる」と話す。


オンラインで取材に応じる野村ホールディングスの北村裕介さん=7月16日

 以前の職場では一部の同僚らにしかカミングアウトできなかったという。会社で性的少数者が「いないもの」にされていると感じ、ゲイと知らない人から「彼女いないんですか」と聞かれてうそをついたこともあった。

 今の職場は外国人や女性など多様な属性の人が働いており、性的指向の違いも受け入れられている。「性的少数者はどこにでもいるよねという環境が、この会社で働きたいというモチベーションになっている」と話す。

 ▽選手に託す期待

 こうした企業の取り組みが広がるきっかけの一つは、15年に東京都渋谷区や世田谷区が同性パートナーシップ制度を全国に先駆けて始めたことだ。日本生命保険はこれを機に同様の制度を導入した。さらに生命保険で死亡保険金の受取人に同性パートナーを指定することも可能に。17年には経団連も性的少数者に関する取り組みを進めるよう提言した。

 「性的少数者だと打ち明ける人が増えれば、企業の意識も変わっていくだろう」と北村さん。リオデジャネイロ五輪では大会中にカミングアウトした選手が現れた。ことしの東京大会では性的少数者と公表した選手は180人以上で、リオ五輪の約3倍。選手らの活躍が「取り組みをさらに進める良い流れにつながればうれしい」と話す。

 ▽乗り遅れる日本

 性的少数者の権利擁護は国際的な潮流だが、企業の取り組みが進む一方で日本政府の施策は足踏みしている。同性同士の結婚は認められず、同性カップルへの対応や差別解消は自治体や企業の裁量に委ねられている。

 日本では国の施策として、性的少数者を巡る戸籍上の性別変更を可能にした性同一性障害特例法や、性的指向や性自認を無断で暴露する「アウティング」をパワハラと例示した指針がある。だが、約30の国と地域で認められている同性婚の議論は停滞している。先進7カ国(G7)で、同性婚を認めず国単位の同性パートナーシップ制度もないのは日本だけだ。

 ▽国際競争で不利に

 共同通信の調査に、20社は国の取り組みが「十分ではない」と回答した。十分だと評価した社はなく、残りは無回答だった。複数回答で理由を尋ねると、10社が「自治体や企業を対象とした包括的なガイドラインを策定すべきだ」とした。「理解促進と差別禁止の法律が必要」「国としてパートナー制度などを導入すべきだ」と要望したのがそれぞれ5社。「同性婚を法律で認めるべきだ」とした企業も3社あった。

 国の一層の取り組みが必要とした富士通は「日本を除くG7各国で法整備が進んでおり、グローバルな人材獲得市場で不利が生じることを懸念している」と答えた。

 ▽動きなく五輪に

 今年1~6月の通常国会では、性的少数者への理解増進を図る法案が「差別は許されない」という文言に一部保守派が反対したことなどにより提出がかなわず、会期中には「生物学上、種の保存に背く」といった自民党議員らによる差別的な発言も飛び出した。


自民党議員らの差別発言の撤回を求め、署名を提出する支援団体

 6月には国際オリンピック委員会(IOC)が性的指向などを理由にした差別解消の重要性を強調する声明を発表したが、その後も国に動きがないまま五輪が開催された。調査では、こうした発言についても尋ねた。37社が「社の人権方針に反する」などとして「賛同しない」と答えた。残りは無回答だった。

 ▽早急に包括的な差別禁止法を

 性的少数者を支援する認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表は日本の現状についてこう話す。

 「全てのスポンサー企業は模範となる取り組みをすべきだ。従業員や顧客向けの施策だけでは働きやすい職場をつくるには不十分。役員に女性が少ない企業も問題で、女性が働きづらい環境は性的少数者にも同様だ。社内におけるジェンダー間の平等と意思決定層の多様性が重要になる。先進国では性的少数者の権利擁護に関する法整備は当然。他国の差別も正そうとしている段階だ。日本の遅れは大会開催国としても恥ずかしい。自治体ごとに内容が異なり地域差が生まれている同性パートナーシップ制度のように、取り組みを企業任せにすると働く職場によって対応に格差が出てしまう。早急に包括的な差別禁止法を整備し、企業に取り組みの最低基準を示してほしい」

 また、レズビアンやゲイの従業員への対応について、性的少数者施策のコンサルティング会社「アウト・ジャパン」の屋成和昭社長は「自認する性で生活するために企業に相談することが多いトランスジェンダーに比べ、存在が見えにくいレズビアンやゲイの従業員への対応はまだ遅れている。企業には社内に性的少数者がいるという前提で取り組みを進めてほしい」と指摘する。

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