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工藤会トップに極刑宣告、その時法廷は 「後悔するぞ」発言の“真意”

47NEWS / 2021年9月16日 7時0分

判決理由を聞く特定危険指定暴力団工藤会トップの野村悟被告(中央)とナンバー2の会長田上不美夫被告(右)

 市民を標的に数々の事件を引き起こしたとされる特定危険指定暴力団工藤会トップの総裁野村悟被告(74)に、裁判所が宣告したのは死刑だった。「生涯後悔するぞ」という不規則発言でも注目された8月24日の福岡地裁での判決。あの日、法廷で何があったのか。傍聴した共同通信記者がその後の動きと共に紹介する。(共同通信福岡編集部)

 ▽首をかしげる被告

 判決言い渡しの朝、地裁には23席の傍聴券を求め、475人が列をつくり、一時は長さが50メートルほどに膨らんだ。警察官ら数十人を配置する厳戒態勢。地裁周辺は物々しい雰囲気に包まれた。

 午前10時ごろ、野村被告は一礼して入廷。傍聴席を見つめながらゆっくりと歩を進め、弁護団前の長いすに座った。黒っぽいスーツに白シャツ姿。白髪交じりの短髪で、左耳に補聴器を着けていた。裁判長の「野村さん、聞こえますか」という問い掛けに「はい、大丈夫」と応じた。

 「主文を最後に、理由から説明します」。裁判長が主文の後回しを伝えると、記者が速報すべく一斉に飛び出した。


工藤会関係先を家宅捜索する福岡県警捜査員と野村悟被告(中央左)、田上不美夫被告(同右)=2010年4月、北九州市小倉北区

 裁判長は続いて、市民襲撃4事件への関与がいずれも認められることを述べた。当初は1件ごとに判断を説明するかと思われたが、全事件への関与が先に認定され、その時点で被告に厳しい刑が言い渡されることが決定的になった。

 野村被告は終始落ち着いた様子で理由の言い渡しを聞いていた。主張が次々と退けられ、納得できないのか、互いに視線を合わせて皮肉っぽい笑みを浮かべる弁護人の姿も見られた。裁判長は時折、水を口に含み、早口で淡々と理由を読み上げていった。

 2度の休廷を挟み、午後4時前、量刑理由の説明に入った。裁判長は組織的犯行の重大性や悪質性を非難した上で「極刑を回避する事情は見いだせない」と述べると、野村被告は首をかしげ、不満げな表情を浮かべた。裁判長は最後に野村被告を証言台の前に立たせ、宣告した。「死刑に処する」

 ▽「後悔するぞ」

 判決言い渡しが終わると、野村被告はそれまでの落ち着いた様子から一変した。「公正な判断をお願いしたんだけどね。公正やないね」「推認推認」「こんな裁判あるか」「あんた、生涯後悔するぞ」。裁判長に向け強い口調で言い放った。ただ、法廷に響き渡るほどの大声ではなかった。記者は、被告が無罪を確信していたがゆえに、判決言い渡しの間にためていた不満を最後にぶちまけたような印象を受けた。


特定危険指定暴力団工藤会トップの野村悟被告らの判決公判が開かれた福岡地裁の法廷=8月24日午前

 共に審理され、無期懲役の判決が下ったナンバー2の会長田上不美夫被告(65)も野村被告を援護するかのように「恥ずかしないんか」「ひどいなあんた」。退廷の際には裁判長が今春東京に異動になったことを踏まえたのか「東京の裁判官になったらしいな」という趣旨の発言もあった。

 判決に不満を持つ被告が言い渡し後に不規則発言をするのは必ずしも珍しいことではないが、両被告は現役の指定暴力団の最高幹部だ。報道各社は「威嚇発言」などと大きく取り上げた。野村被告の弁護団は当初、記者団の取材に応じなかったが、予想外に注目されたためか、判決から2日後の26日午後、急きょ説明の場を持った。

 弁護団は野村被告の「後悔するぞ」発言を「こんな判決を書くようでは裁判官の職務上後悔するぞという意味だった」とし、本人に脅しや報復の意図がないことを強調した。拘置所で新聞を読んだ野村被告は「言葉が切り取られている」と驚いていたという。田上被告の「東京」発言も「出世したことへの嫌みでしょう」とし、深い意味はないとした。

 弁護団は文脈を考慮すべきとするが、野村被告の一連の発言は必ずしも連続したものではなかった。真意を正確にくみ取ることは難しいが、両被告の発言を受け、組員らが関係者への報復行為に暴走する可能性もあり得る。実際に野村被告自身が公判で犯行について「私の愚痴が組員に伝わり、変なふうになったのかも」とし、組員が被告の心情を忖度して行動する可能性があることを示唆している。「組員らに誤った意図で伝わっていないか」との質問に、弁護団は「組織内に誤解はないと思う」ときっぱり否定した。


男性歯科医が襲撃された現場付近を調べる捜査員=2014年5月、北九州市小倉北区

 判決後、野村被告には組員らによる接見が相次いだという。福岡地裁は27日、異例となる2度目の接見禁止命令を出した。法廷での発言が少なからず影響したとみられる。

 判決の夜に接見した弁護人の話では、野村被告は気落ちはしておらず、「頑張ります」と控訴審に向け前向きだったという。控訴審がいつ始まるかは見通せないが、全面無罪を主張する野村被告は最高裁まで争うとみられ、確定までまだ長い歳月を要する見込みだ。

 ×  ×  ×

【市民襲撃4事件を巡る工藤会トップの判決公判】

 特定危険指定暴力団工藤会が関わったとされる一般市民襲撃4事件で、会トップの総裁野村悟被告が殺人と組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの罪に問われた裁判。福岡地裁は「首謀者として関与し、責任は誠に重大だ」とし、求刑通り死刑判決を言い渡した。指定暴力団トップへの極刑適用は初めてとみられる。直接証拠はなく、弁護側は全面的に無罪を主張したが、判決は、4事件全てで間接証拠から関与を認定できると判断。ナンバー2の会長田上不美夫被告は無期懲役とした。

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