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COP26開催、議長国イギリスの野望 強気な脱炭素政策の狙いとは

47NEWS / 2021年11月6日 10時0分

COP26首脳級会合でスピーチするジョンソン英首相=1日、英グラスゴー(ユーチューブ映像より・共同)

 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が英北部グラスゴーで始まった。議長国を務める英国のジョンソン首相は「先進国は2030年までに石炭火力を廃止するべきだ」と訴え、10月の日英電話首脳会談でも岸田文雄首相に決断を迫った。35年には化石燃料に頼らず風力発電や原発などで全電力をまかなう計画を掲げる。強気な政策の狙いは何か。現地からリポートする。(共同通信=宮毛篤史)

 ▽世界の脱炭素化を先導

 「風力発電のサウジアラビア」。ジョンソン氏が自国を中東最大の産油国サウジになぞらえ、最近好んで使うおなじみのフレーズだ。1日に開かれたCOP26の首脳級会合開会式でも登場した。英国が世界の脱炭素化を先導しようとするヒントは、この言葉に隠されている。


住友商事がファンドを通じて英国で事業参画するギャロパー洋上風力発電所=2019年9月

 英国は周囲を海に囲まれた海洋国家で、欧州との間に大陸棚が広がる。水深の浅い地形や風況の良さといった好条件を生かし「世界一」の洋上風力発電大国となった。

 陸上からもその様子はうかがえる。英南東部のリゾート地ブライトンの浜辺から欧州大陸の方角を眺めると、20キロほどの沖合にかけて100基以上の風車がくるくる回る様子が遠目に見える。景色と一体化した夕暮れ時の風景は写真映えする。

 開発の促進は原油生産のピーク期を迎えていた00年前後に始まった。1960年代に開発が進んだ北海油田が将来枯渇することを見据え、英政府が代替のエネルギー源として開発に取り組んできた。

 国際的な業界団体の世界風力会議(ベルギー)によると、洋上風力の20年時点の累計導入量は英国が世界全体の29%を占め首位だった。英政府は20年に「グリーン産業革命」と題し、30年に30ギガワットとしていた導入目標を40ギガワットに拡大。国内の全家庭の電力をまかなえる計算だという。


英南東部・ブライトン沖に見える洋上風力発電=10月27日(共同)

 鍵を握る存在が、大陸棚を管轄するクラウン・エステートという王室の資産管理団体だ。事業者は海域の割当入札に参加し、落札後に生態系への影響などを調査した上でゴーサインを得られると海域使用権を定める契約を結んで事業に着手できる。

 日本企業では住友商事が政策投資銀行、三井住友銀行とのファンドを通じ、英東部沖ギャロパー洋上風力発電所の発電事業に参画する。ロンドンに駐在する住友商事の新納宏一欧州再生可能エネルギー事業部長は、英政府が再生可能エネルギーの普及を推進していることから「事業者目線で安心して開発に取り組める環境が整った市場の一つだ」と話す。

 長期にわたり一定価格で電力を買い取ってもらえる制度が存在していることも利点という。英国での経験を元に、今後は日本でも洋上風力の事業を強化していく。


オーステッドが英国沖で操業する洋上風力発電=2018年9月5日(ロイター=共同)

 ▽石炭ゼロのからくり

 英国は昨年12月、30年までに温室効果ガスの排出量削減目標を90年比で53%から68%以上に引き上げ、今年10月には電源の脱炭素化目標を15年早めた。さらに6月には、石炭火力の廃止時期を24年に1年前倒しした。

 「石炭」は「自動車」「資金」「森林保護」と並び、ジョンソン氏がCOPでの成果を目指す4大テーマの一つ。前のめりになる理由はなぜか。答えは英国の発電構成を見るとよく分かる。

 20年の内訳はガスが35・7%で最大だが、風力や太陽光などの再エネは合計で4割に達し、普及が進みつつある先進国の中でも比率が高い。その一方で90年に7割を超えた石炭は2%にも満たず、ジョンソン氏が求める30年の石炭ゼロは英国にとって達成確実な単なる通過点に過ぎない。

 英政府は50年の温室効果ガス排出量実質ゼロを実現するため、30年までに900億ポンド(約14兆円)の民間投資の呼び込みをもくろむ。再エネとともに中核の電源として期待するのは原発。万が一事故が起きた際の環境汚染が甚大になるため「クリーンエネルギー」に含めるかどうかは議論の分かれるところだが、推進の立場を明確化。工場で製造し、現地で組み立てることで工期が短く費用も安く済むとされる次世代の小型炉の実用化に取り組む考えを示す。

 順風満帆そうに見える英国だが、ここまでの道のりは平たんではなかった。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を機に原発政策は停滞し、労働党のブレア政権下の03年のエネルギー白書では、核廃棄物処理の問題に懸念を示し、新規計画を一時停止することを求めた。その後、電力不足の恐れやエネルギー安全保障の観点から推進計画が復活したものの、空白期間をすぐには埋めることはできない。90年の電力自由化後に新設されたのはわずか1基のみで、老朽化した大部分の原発は30年までに運転を終える。日立製作所も20年に建設計画からの撤退を表明した。


ブライトン沖の洋上風力発電=10月27日(共同)

 代替の小型炉は脱炭素化の流れで世界で注目されており、英ロールス・ロイスが開発に取り組む。欧州連合(EU)からの離脱で雇用確保に熱心なことから、建設や維持で人手が必要な大型原発の建設も諦めてはいない。

 COP26では英国の呼びかけに応じ、欧州、アジアなど幅広い地域から46カ国が石炭火力の廃止に向けての共同声明に合意した。主要経済国は30年代、それ以外の国は40年代の廃止を目指す。シャーマ議長は「石炭火力の終わりが視野に入ってきた。COP26は石炭を過去のものとする会議になる」と誇る。日本はエネルギー安全保障の観点などから入っていない。

 英国の脱石炭と再エネ強化は気候変動対策だけでなく電源開発の多様化に迫られた結果だが、英政府はしたたかに、そうした状況を国際社会へのアピールや産業振興に生かそうとしている。

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