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「私はもう許すことができなかった」 30代母親が外回転術めぐる医療過誤を「業務上過失傷害」容疑で刑事告訴 受理され捜査へ

ABCニュース / 2024年7月16日 17時20分

 京都市の京都第一赤十字病院で4年前起きた、逆子の胎児を回転させる「外回転術」をめぐって胎児に重い脳機能障害が残った医療過誤。30代の母親が提出した刑事告訴状が警察で受理され、当時の主治医らについて捜査が進められることになりました。

 母親は刑事告訴に踏み切った理由として「息子の人生を奪ってしまったような医療過誤をしたのに、謝罪の言葉もなく、誠意も感じられず、私はもう許すことができなかった」と話しています。

■「僕は百発百中でいままでうまくいってきたから心配はないですよ」

(千鶴さん)

「(妊娠)7カ月ぐらいのときに逆子がわかって、そのときは家の近くの産婦人科を受診してたんですけど、ここでは逆子が治せないということで、京都第一赤十字で逆子を治

す『外回転術』があるっていうのを初めて知って」

 京都府内に住む千鶴さん。長男・宝君(現在3歳)の母親です。初めての子は経膣分娩で産みたいという思いが強く、2020年12月、逆子の胎児を母体のお腹の上から手で回す「外回転術」の施術を受けることになりました。

 担当主治医は男性のA医師。千鶴さんが施術についての説明を受けたとき、A医師は、こう言ったそうです。

 「僕は百発百中で、いままでうまくいってきたから心配はないですよ」

 外回転術は、まれに胎盤の一部がはがれるなどの合併症が起きる場合があり、万一の時には緊急帝王切開ができる体制もとりながら行われるのが一般的です。千鶴さんも「何かあったときは胎児を取り出す」との説明も受け、一抹の不安を抱えながらも、施術に臨むことにしました。

■「外回転術後、心音低下あり」「胎児、ハイリスク状態」

 

 しかし、1回目の外回転術を受けた時のことです。

(千鶴さん)

「結構長い間もうずっと手で無理矢理回す感じなので、それでもう、私が息ができなくなって、酸素マスクつけて欲しいって言って、酸素マスクつけてもらって、息子の心拍が多分落ちてたのか、ずっとアラーム鳴ってて」

 アラーム音が鳴り響く中で、千鶴さんの不安は一層高まります。しかし、A医師は2回目の施術を続けて行いました。

 ABCテレビは、この2回目の施術後の看護記録を入手しました。そこには―。

(病院側の記録)「外回転術後、心音低下あり」「胎児、ハイリスク状態」

(千鶴さんの発言)「赤ちゃんは元気なんですか?」「赤ちゃんが元気に産まれてきてくれたらどこで産んでもいいです」

 混乱した状況の中、千鶴さんは何度も緊急帝王切開をA医師に求めたと言います。しかし、A医師は拒みました。

(千鶴さん)

「ちょうどコロナ禍だったので面会もなしで、担当医に今すぐ帝王切開してほしいっていうときに、主人からも電話でお願いをしてもらってたんですけど、それでも『その選択肢はない』の一点張りで」

 別の医師による帝王切開で宝君が産まれたのは、外回転術を終えて1日半も経ってからのことでした。お腹から取り出された宝君には、後頭部にあざのようなものがありまし

た。後に脳の9割近くが損傷していたことがわかりました。

(千鶴さん)

「なぜあのとき帝王切開をしなかったのかが、いまでも本当にわからなくって、看護師さんも、35週だったかな、36週とかで生まれても、いまの医療だったら赤ちゃんがちっちゃくても大丈夫だから、お腹にいるよりも絶対に出した方がいいって、いろんな人から言われてたので。もう本人に聞きたいくらい」

■検証の結果「医療事故」と認める

 宝君が産まれておよそ10カ月後、病院から第三者を交えて行われた検証作業の結果が届きました。そこには―。

(京都第一赤十字病院の報告書)

「本件の医療事故は、1回目の外回転術施行以後、胎児の状態の評価を誤った結果、2回目の施行をしてしまい、更には緊急帝王切開も遅れることとなって、宝様に少なくともより重い障害を発生させたというものと評価されました」

「医療事故」と明確に認める内容。

  病院側は特に、A医師が2回目の外回転術に踏み切ったことを問題視し、病院内の体制にも問題があったとしました。

(京都第一赤十字病院の報告書)

「(A医師は)レベル4(注:胎児心拍数の波形レベルの分類。「レベル4」は緊急帝王切開などの準備や実施が必要)ではないと判断したとのことですが、この状態(注:1回目の外回転術後の状態)は、低酸素、児(胎児)が動いていないことが疑われ、胎児機能不全であり、その改善を待つことなく外回転術を行うべきではなかったし、あるいはここで2回目の外回転術そのものの中止を選択すべきではなかったかと考えられます」

(京都第一赤十字病院の報告書)

「A医師が1人の判断で外回転術を行っていたこと、これまで失敗例がないとされていたことから、A医師に任せきりになっていました」

■重い障害・・・それでも時折見せる笑顔が「宝物」

 いま、3歳になった宝君は重い障害のために、自分の力では手足を動かせず、発話もできません。それでも、家族にだけ時折見せる笑顔が千鶴さんにとっては宝物だといいます。

(千鶴さん)

「夫は、宝が幸せだなと思う日々を作っていけたらいいんじゃないっていうのはずっと言ってくれてて。私もそうとは思うんですけど、やっぱり私の中では、夢でも息子がママって言って、走って、抱きついてくれるような夢を見たり。そういう人生を奪った担当医は、本当許せないっていう気持ちでいっぱいです」

■警察が刑事告訴状を受理

 そして16日、千鶴さんが代理人弁護士と提出した刑事告訴状が警察に受理されました。

 被告訴人はA医師です。

 (告訴状の一部)

「外回転術を施行した後、胎児が外回転術を行うべきではない容態となっており、外回転術の更なる施行を取り止める業務上の注意義務があったのにも関わらずこれを怠った」

 「漫然と二度目の外回転術を施行して、胎児を低酸素虚血状態に陥れ、そのため速やかな遂娩(緊急帝王切開)の実行および新生児蘇生の準備をすべき業務上の注意義務があったのにも関わらずこれを怠り、その結果として、胎児に完治不能の新生児低酸素性虚血性脳症後脳性麻痺(四肢麻痺)、発達遅滞、てんかんなどの重篤な傷病を負わせ、もって母体である告訴人の身体の一部を傷害した」

 千鶴さんは「今もなお担当医を許すことができなくて、なおかつ、また違う病院で平気で働いていることがもう本当に許せなくて・・・。息子の人生を奪ってしまったような医療過誤をしたのに、謝罪の言葉もなく、誠意も感じられなかった」と告訴に踏み切った思いを取材で明かしました。

 京都第一赤十字病院は医療事故について「本件につきましては重く受け止め、再発防止に努めております」とコメントしています。

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