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【特集】”ちょうどいい"芸術ホールを目指して…秋田市に舞台芸術の新たな拠点を 試行錯誤のオープン作業に密着

ABS秋田放送 / 2024年9月20日 17時52分

秋田市ではおととし、長らく親しまれてきた旧秋田市文化会館が40年あまりの歴史に幕を下ろしました。

約1000人を収容できる大ホールのほか、規模が小さいイベントに適したホールもあって、合唱コンクールや吹奏楽のコンサートなどで利用した人も多いのではないでしょうか。

時を同じくして、「あきた芸術劇場ミルハス」が、旧県民会館があった場所にグランドオープンしました。

大規模なホールがあり、個人で借りられる練習室もあって、安定的に利用され続けているミルハス。

有名なアーティストなどを見られる機会が増えたという声がある一方で、利用者からは、『予約が重なって使えない』『目的に対して会場が大きすぎる』といった声も聞かれます。

こうした中、秋田市に“ちょうどよく使える芸術ホール”を作ろうとしている男性がいます。

秋田市中心部の住宅地の一角に、来月のオープンを目指して準備が進められている芸術施設があります。

「アートボックス卸町」です。

使われなくなった事業所兼倉庫を改装した建物は、一歩足を踏み入れると雰囲気が一変。

非日常的な空間が広がります。

ステージは、床に舞台用のマットを敷いただけのシンプルなもの。

客席との距離が近く、演劇はもちろん、ダンスや音楽ライブも想定した100人規模の芸術ホールです。

アートボックスの芸術監督で、演出家の山川三太さんです。

建物の改装や、ホールの設計などを担いました。

山川さん

「ここを作り始めてから、本当に様々な人がここに集まり始めて、だったら演劇もできる、エンターテインメントもできる、音楽もできるって考え始めたら、可能性が山のように膨らんできて、だからそれはうれしい誤算というか」

秋田市で生まれ育った山川さんは、10代の頃に上京して、演劇の道を歩んできました。

その経験を生かして、9年前、舞台芸術を秋田から発信しようと、国際的なダンスイベントを企画。

国の内外から参加者が増える中、実感したのは、練習や発表をする場所の少なさでした。

山川さん

「(にぎわい交流館)AUもそうだし、それから、アルヴェの多目的ホールも、あそこもとにかく使おうとしたことあるんだけれど、空間を囲うだけで大変なんだよね」

これまで県内のほとんどのホールは、講演会やコンサートの開催などを想定したものでした。

山川さんは、舞台公演のために、工事に使われるような足場を組んで照明を吊るしたり、黒い大きな布を使って音の反響を抑えたりしたといいます。

舞台芸術の道を志す人たちにできるだけコストをかけずに活動していってほしい。

コンセプトは、練習から本番まで一貫して使うことができる、“ちょうどいい”芸術ホールです。

山川さん自らも作業を担いながら、約半年、工事を進めてきました。

山川さん

「だから本当に高校生の高校演劇部なんかがここでやりたいって言ってきてくれたのは、それも本当に思いがけぬことですごくうれしいね」

「放課後に部活で使ってもらったりして、ここでどんどん芝居を作っていってくれたりすりゃ、本当にうれしいよね」

この日、ホールの音響を確認するために、ロックバンドのメンバーがアートボックスを訪れました。

東北を拠点に活動し、全国各地の音楽イベントにも参加しているバンドのハロスです。

このアートボックスでの音楽ライブを来月予定しています。

Dr 諸越俊玲さん

「わりとなんかライブハウスに近いなっていう感じはするね、なんかそんなにやっぱり吸音がされてる感じが」

工事が完了したばかりのホール。

本番を想定して大きな音を出すのはこれが初めてです。

しっかりと防音対策をしたつもりでしたが、山川さんの予想をはるかに超える音が外に漏れることがわかりました。

騒音が問題になれば、住宅地での運営そのものが危ぶまれます。

防音の工事もほとんど山川さんたちが手掛けたアートボックス。

念入りに確認を重ねたところ、機材を出し入れするシャッターや窓から、特に音が漏れていることがわかりました。

山川さん

「(住民が)やかましいって出てくる感じではないけど」

諸越さん

「まぁ確かに夜になるとうるさく感じますからね」

諸越さん

「まぁもっともっともちろん抑えることはできるんですけども、演奏的には、抑えることはできるんですが、今度そしたらお客さんにすら音が届かないっていうことにもなりかねないですよね」

音漏れを抑えながらも、迫力のある演奏を客に届けたい。

山川さんは繰り返し音量のバランスを調整しました。

山川さん

「まぁ、とりあえずこっち側で聞いているお客さんには全然問題ない。まぁこれでギリギリでやって、あとは当日までにちょっと幕を間に合わせる。また金が出るなぁ…」

諸越さん

「やっぱ広さもいいし音も良かったですし、音もやりやすいですし、あと、ちょうどいいよね、キャパ(収容数)が」

Vo 草階亮一さん

「サイズ感がめっちゃ(いい)、秋田にないし東北にもないんじゃない?」

諸越さん

「文化会館の小ホールがあった時は、あそこはキャパが250とかだったんでしたっけ。200から250ぐらいだと思うんですけど、ちょうどいい大きさでしたね、ああいうのがいいなぁ…」

記者

「まさにここが?」

「そうですね、まさにここがそういうふうに、なんかいろいろ育ってくれるといいなぁっていうのがあるんですけど」

オープンは予定通り来月にすることを決めました。

山川さん

「成功して公演ができた時にはまた喜びが倍増するんだろうけどね、ま!頑張りますよ」

アートボックス卸町は、来月5日にオープンする予定です。

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